Doctors Me(ドクターズミー)- 【目からウロコのお悩み相談室 vol.7】孫育て編

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こんにちは、家族カウンセラーの宮本まき子です。前回は、「婚活編」のお話でした。

今回は「孫育て」についてです。

孫育てがブームです。祖父母世代と、若親世代の思惑のずれが明白に…

アタクシが「団塊世代の孫育てのススメ」(中央法規出版)を書いて3年。急に「孫育て」ブームがせきを切ったのは、
1)団塊世代が完全リタイアして、ヒマと金ができた 
2)経済状況が好転せず、夫婦共働きが増えて子育てを依存せざるをえない 
3)同じ屋根の下の三世代大家族が70年代以降核家族化

それが近年、「地域で近居」という疑似大家族に揺り戻ったなどの諸事情から。「孫」をはさんでの双方の言い分、しっかり聞いて話し合って、誤解のないようにしましょう。


Q:来春定年退職したら、タイかマレーシアにロングステイして、ゴルフや旅行を満喫する楽園生活を夢みていたのに、なんと娘が10年ぶりに初妊娠。近くに越してきて母親を頼るというし、女房も面倒を見るという。反対したら「あなたの世話より娘母子を支援するほうが楽しそう。ひとりで行って」の爆弾宣言。どうにかなりませんか?

A:あなたは便利な家政婦(もとい、奥様)つきで、元同僚や地縁血縁のしがらみ抜きの(もとい、気を使わないですむ)異国でのセレブ生活をもくろんだ。ただしアジア諸国ではライフラインも安全性も日本とは大違い。ハウスキーパー&料理人&運転手つき自家用車の三点セットがなければ、老境に入った奥様の肉体的負担と心のストレスを増すばかり。とても楽園生活とはいかないでしょう。つまり、あなたは「夢」をみた、奥様は「現実」を見すえた。ゴルフも旅行もそのうち飽きるだろうし、地縁、血縁のない海外での人づきあいはたやすくない。病気になったら、介護が必要になったら…そんな奥様の不安や葛藤を無視すれば、「アタシは飯炊き婆さんかっ!」の地雷を踏むかもしれません。

最近では「孫育て」を期待して子どもが親宅のそばに転居する「近居率」が65%を超えました。子育てでの協力はそれまでの家族関係を見直し、再構築するチャンスでもあります。自分本位の老後計画にこだわりすぎて売り言葉に買い言葉、ヤブヘビで熟年離婚につっこみませんように。離婚後は男性の方が経済的、心理的に疲弊して「下流老人」に陥りやすいそうです。まずは旅行ぐらいからスタートしてみてはいかがでしょう。


Q:舅姑が孫可愛さでひんぱんに来訪。おもちゃや服を買い、食事に連れ出し、おこづかいをくれます。助かる反面、教育上はよくないのでは? おっぱらう方法はありますか?

A:近隣国との外交駆け引きをみれば、ケンカ腰で「来ないで」と言うのは得策ではありません。経済的、人的援助の損失です。子どもの人格ができあがる10歳ぐらいまでは「思う存分甘えさせる(愛情を供給する)」と自己肯定感の強い子になるし、逆に甘えてくるのを拒否したり虐待すれば自己否定感が増して、ひがんだり意欲が無い子になります。

昭和の中ごろまでは親類や隣人が大勢いて、(ちょうどいまどきのペット可愛がりのように)毎日適度に甘えさせたり、ほめたりしていました。現代はそういう他人が激減しています。無意識に「ダメダメ、悪い子、嫌な子」などの否定的な言葉を出しがちな親にくらべ、祖父母は「岩合光昭ねこ歩き」のごとき猫なで声で「いい子だねぇ」とほめちぎりますでしょ。親がつけた傷のいい補修材になってくれます。ついでに「甘やかし(愛情を必要以上に押しつける)」もしますが、おとなに反発する思春期ごろまでには修正されます。親や祖父母がネコ可愛がりできる期間は短いのです。


Q:3人の子に5人の孫たち。ピアノだ、フィギュア・スケートだ、進学塾の夏合宿だといろいろな経費を無心され、月に10万円近くの「孫経費」を出してきました。今年、年金生活に入ったので「打ち切り」を宣言したところ、「困る」「ひどい」と3人の子らから総反発を受けています。「遺産をもらうより、退職金や貯金で孫の教育費用を生前贈与してほしい」とも。質素倹約して援助したのに、感謝どころか逆恨みされて困惑してます。

A:「金の切れ目が縁の切れ目」のおそれあり。親が生活を切り詰めて捻出したお金でも、子どもから見れば「いつかもらうはずの遺産」になってしまう。思惑のすれ違いは放置せず、いま、ここでハッキリさせておきましょう。現在手持ちの金は「年金生活30年分の老後の生活資金」であり、「残りの人生のささやかな娯楽費」です。「ありあまる資産」でもない限り、ホイホイと分配してはいけません。親子の間柄で「感謝」などされなくてよろしい。「遺産」というのはあくまでも「残り物」ですから、待つのが当然です。親と子が過度に経済的依存をしあうと、どちらかが破たんしたとき「共倒れ」の可能性もあります。

「自分の世代の始末は自分でつける」という気概をもって、自分の金で凛として生きる。「うちの年寄りたちは自立していたよなぁ」と後で生き様を思い出してもらえたら、それが最高の「孫への置き土産」になるのではありませんか?


Q:「孫育て」は自分のときの「子育て」とは違うんでしょ? 具体的に何をしたらいいのでしょう。

A:識者や一般論では「子育ての主体は親で、祖父母は手助け」となっています。ただ、地域での人間関係が希薄になった現代の環境では、子どもに親身になって向き合う大人が親と担任の先生では少なすぎます。祖父母を「親と違った角度からモノを言え、経験を伝えられ、おおいに子育てにかかわれる大人」にカウントしないと、子どもの価値観や思考の幅が広がりません。親はわが子にいいところだけを見せたがりますが、祖父母なら見栄を張らずに「昔、こんな失敗をしたけど、こうやって挫折を乗り越えた。だから、お前も失敗しても大丈夫だよ」といった経験談をして励ましてほしい。

十代の子どもは脳の働きが未熟で、追い詰められるととんでもない行動をとる傾向にあります。例えば親や担任が受験一辺倒で煽られているようなら、「年の功で言うが、こういう進路もああいう選択もある」と、違う方向の「抜け道」を用意しておきましょう。ある祖母は孫娘に「死にたい気分になったら言うんだよ。一緒に行ってやるからね」とポツリ。孫娘はイジメにつぶされそうになっていたのが、おばあちゃんを死なせるわけにはいかないと復活したとか。単なる子守りではなく、「豊富な人生経験と社会経験」を活かすのが孫育ての真骨頂でしょう。

子どもはある年齢になると「アイデンティティ」にこだわります。古い言い回しですが、「ご先祖様に申し訳がない」という叱り言葉もいいですよ。「ご先祖はサムライで卑怯な真似を許さなかった。だからイジメはいかん!」とか、「ひい爺様は立派な方で、人助けをして仏様のように慕われた。他人様を大事にしなさい」などの話はストレートに自分の価値観に入ったと、大学の教え子たちの弁。「お天道様はみてる」「世間に恥ずかしい」などの説教も有効です。わかってもわからなくても、シンプルに伝えることが大切。50年後に孫たちの記憶に残っていれば、次の世代へと申し送りされることでしょう。

まき子おばちゃまからの伝言

いまどきの子どもたちはメール文化に慣れ過ぎて、アナログなことができません。絵文字は得意でも人の表情を読めない。何かおかしい、「だまされているのかも」みたいな勘が働かない。ときに「命が危ない」という察知能力にも欠けます。つまるところ、「サバイバル力」の低下。「人は生きてこそ花開く」のですから、「何としても生き抜く知恵」を教え込まねばなりません。火をおこす、衛生的な水を手に入れる、食べられる植物や貝を見分けるなどは、アウトドアライフなどに連れ出して辛抱強く教えましょう。「世界は広い、知らないことが多い」とわかるだけでも、子どもは生きる意味を見いだせるものですよ。

〜家族カウンセラー・エッセイスト・評論家:宮本 まき子〜