Doctors Me(ドクターズミー)- 【医療現場のウソとホント】第4回:医学参考書を読んでみましょう!

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医師は膨大な知識をいつでも暗記しており、患者さんにスラスラと説明しているようなイメージがあります。心身の調子が優れないときには、まず「お医者さんに診てもらえば安心」。日本は国民皆保険制度のおかげで医療機関の受診がとても便利な国ですし、Doctors Meのキャッチフレーズのごとく医師は”身近な安心”を与えてくれる存在でもあります。

とはいえ、増え続ける医療知識を働きながら暗記するのは、経験豊富な医師にとっても大変な作業です。診療や検査、手術中には最新の教科書をゆっくりと読む余裕はないのですから。医療サービスの提供中に、こそこそと教科書を確認しているような医師では、患者さんも安心できないでしょう。

暗記型の勉強をこなしてきた医師でも、過去の経験に頼ったまま向上心を忘れると、世界的な医学の進歩に乗り遅れる危険があるのです。そこで、多くの医師は機会あるごとに医学書や専門雑誌、さらには副読本となる医学参考書を購入して、最新の知識を吸収しようとしています。

今回は皆さんにも、このうちの医学参考書をぜひ手にとっていただきたいというお話です。

書店の医学書コーナーに行ってみよう!


私たち医師の場合、所属している専門学会で全国集会が開催されると、会場内には複数の専門書店が出店しています。開催中は学会発表のブースだけでなく、書店コーナーにも多くの医師が訪れて、今年の新刊などを熱心に立ち読みしている光景が見られるのです。

専門科の医師でなければ理解できない難解な書籍もありますが、読みやすさや理解しやすさをうたった入門版=医学参考書も増えています。とくに新卒の医師が各科をローテーションしながら臨床研修する制度が義務化された2004年以降、専門外の医師でも容易に理解できる医学参考書が増えてきました。

たとえば、将来は眼科に進む予定の臨床研修医でも、内科や外科、産婦人科や小児科を数ヶ月ずつローテーションします。若手医師として実際に病棟などで勤務するので、学生時代の知識をさらに補うために医学参考書が必要なのです。

毎年8,000人前後の新米医師が誕生するため、各科へ配属される前には分かりやすい医学参考書を求めるニーズが高まっています。そのため、都市部の大規模書店にある医学専門コーナーには、読みやすいレイアウトの医学参考書が平積みされているのです。カラフルで図表も豊富、CGイラストによって人体の構造や機序をきれいに説明してある。
 
医学の知識がない方でも、歴史や動物の図鑑を読むかのように面白く読める医学参考書を、ずっと知らないままではもったいない。まずは大型書店のホームページを閲覧して、医学専門コーナーの場所を探してみましょう。

医学はセルフメディケーション

研究者や臨床医が世界規模で切磋琢磨している医学では、最高の権威と信頼を保つ書籍が欧米の出版物であることが多く、日本の医師でも日常的に英文書籍を読みこなしている割合は高くありません。新刊の医学書でも、英語版の日本語訳が販売されている場合が多いのです。こちらはまさにプロ向けです。

でも医学参考書はその名の通り、医学書を補足解説するための副読本です。皆が理解しにくい点を詳しく補足するために書かれているので、医学に詳しくない方にも読みやすい。簡潔にポイントを押さえているだけでなく、専門的な医師が監修しているので掲載内容も信頼性が高いのです。

たとえば、医師が創業したメディックメディアの『病気がみえる』シリーズは、医療専門職以外にも広く読まれている書籍です。略語を含む専門用語の解説が詳しく、CGイラストも多用されているので、視覚的な理解が容易なシリーズです。見た目で苦手意識が芽生えると、医学は勉強しにくい。このシリーズは病気の仕組みについて理解しやすく、全体的な症状の繋がりを覚えやすくなっています。

私は製薬企業でMR(医薬情報担当者)という営業部門の社員を教える機会が多いので、文系出身者がどのような苦手意識を持っているかを良く知っています。苦手の理由は、耳で聞いても理解できないけれど、図説してもらうと興味がわく場合がほとんどです。まずは先入観を持たずに見ること。それには医学参考書が最適です。
 
安心を得ながら健康的に生きるセルフメディケーションのためには、医学の知識を増やすきっかけが欲しいもの。人生経験を重ねても、身体の仕組みや病気の成り立ちを知らないままでは、ずっと”お医者さん任せ”になってしまいます。医師もひそかに勉強を続けている身ですから、いつでも答えは完璧ではありません。

健康的に生きていくための道しるべ


インターネットにはDoctors Meを含めて、数多くの医学・健康情報が溢れています。玉石混淆の情報から、不自然な健康法や誤った医学情報を取り除くためには、いつでも受診先の医師任せというわけにもいきません。

皆さんが健康的に生きたいと願うときには、吟味した結果として情報を否定する決断も必要です。そのときは医学参考書のように整理された医学情報を積極的に読みつつ、最良の情報にも不確実性が少なくないと理解できれば、色々な意味で受けとめやすくなるのです。

とくに他人の経験談や芸能系の情報によって、あいまいな医学知識を更新してしまうことは危険です。賛否両論を常に伴うのが医学ですから、良かれと思って信じ込んでしまうと、後々で悲しい結果をもたらすことになりかねません。

そのような事態を避けるためにも、時間を見つけて書店の医学専門コーナーを訪れてみると良いと思います。若くて元気なときには無関係に思える病気の話も、生涯にわたって無縁ということはまずありません。

冬に流行する風邪や胃腸炎のような軽症の病気でさえ、プロである医師は稀な重症疾患との区別を忘れてはいけないのです。その場の判断が100%完璧はありえないと注意しておくことで、不要な間違いを減らすことができ、安心を得ることが出来ます。受け身で待つだけでなく、理解を高めることが健康的に生きるための道しるべとなるでしょう。

ワンポイントアドバイス

当コラムは若い女性の読者が多いと聞いています。私はアラフォー男性ですが、医師として数多くの生活習慣病を診てきた中で、女性が男性の健康に対してもっと厳しくダメ出しをしても良いと思っています。多くの男性は女性からの指摘をもっとも気にして、生活習慣を改善していくからです。

日本では平均寿命も健康寿命も、男性は女性にかないません。個人差や避けられない要因があるとはいえ、日本の男性は喫煙率もまだ高く、飲酒習慣も長時間労働も相変わらずです。健康を悪化させる要因が多い社会状況でも、日々奮闘している男性陣は頑張っていると言えなくもありませんが、健康的に長生きする確率をあえて減らす意味はないと思うのです。

見た目は格好良いけれど、医学知識に乏しく自己判断で不健康な生活をしている男性。反対に、見た目で勝負はできないけれど、医学知識が豊富でセルフメディケーションに努力している男性。
年齢を重ねても健康で、充実した人生を謳歌できるのはどちらでしょう? そして、生涯のパートナーとして見た場合、『身近で安心できる』のはどちらでしょうか?

医学参考書を読んで正しい知識を増やすことは、健康意識を高めて将来のパートナー探しにも役立つ。そんな視点を男女ともに持つことは素晴らしい結果につながるでしょう。

ぜひ、医学専門コーナーを訪れてみてはいかがでしょうか? そして医学書の本棚とにらめっこしている人たちは、もしかしたら優秀なお医者さんかもしれませんよ。

〜医師・医薬コンサルタント:宮本 研〜