スマートフォンで撮影し、撮影した写真はSNSにアップする、あるいは写真共有サービスで公開する、今はもう当たり前。

スマートフォンのアプリからシームレスでネットへ
写真をSNSなどのネットサービスで利用する方法はいくつもある。
たとえば「Instagram」。
これは写真をメインにしたSNSだ。撮影した写真をアップしたり、フォローしているユーザーの写真を見たり、コメントやお気に入りなど、写真を通した交流が可能だ。また、Facebookと連携することでFacebookの友達が表示されるので、いきなり始めても知人とフォローし合うこともできる。写真の投稿時にタグ付けすれば、検索の対象になり、より広い層の人にも自分の写真を見てもらうことができる。

一方、Facebookが今年リリースしたのが「Moments」。
これは、基本は非公開で友達どうして写真を共有しようというもの。撮影された日時や場所などの情報から関連のある写真をグルーピングしたり、Facebookの友達情報から友達が写っている写真をグルーピングしたりするなど、「これを共有しませんか」と提示してくれる仕組みになっている。ちょっとわかりにくいのだが、Facebookで写真を投稿する際に人物が写っているとタグ付けできるのと同じようなものと思えばいい。これは、「おお!」ってくらい人物の特定がされて、ちょっと気持ちがいい。

このほかにも、手軽に複数デバイスで同期する。あるいはスマートフォンの容量を節約するために写真データをクラウドに置く方法もある。

こうしたサービスはスマートフォン用アプリで展開されていることがほとんど。
モバイル回線やWi-Fiなどに接続可能なスマートフォンから、タップするだけで写真をアップすることできる。ネットにアウトプットすることが前提なら、カメラよりもスマートフォンのほうがシームレスにできて便利、というのが現状だ。

◎ネットにアップされている写真は誰のものなのか
ただ、こうしたシームレスな仕組みが整ったことは、ユーザーにとって便利な反面、従来よりもネットにアップしているという感覚を薄れさせているようにも感じる。

自分が投稿した写真はどこで誰が見ているんだろうか?
いまスマートフォンで見ている写真は誰が撮ったものなのか?

そんなこと、いちいち意識していないという人も多いのではないだろうか。
そして、SNSで見かけた投稿をいいなと思えばシェアする。

ネットにアップした写真は、(公開範囲を限定していたとしても)もうローカル環境=あなたのスマートフォン内にあるわけではない。クラウドもSNSも同様だ。
セキュリティが破られるのは、日常茶飯事だし「絶対に安全」はネットにはない。
うっかりクラウドに保存してしまったことで見られたらまずい写真が出てしまったなんて最悪だ。
削除したとしても、キャッシュやアーカイブに保存されることもある。ネット上の写真やデータを完全に削除することは、意外に難しい。

また、ネットにアップされていても、写真や文章、イラストなどには、それを撮った(書いた、描いた人に著作権があるということは基本中の基本。
たとえば、いいなと思った写真をダウンロードして、自分のブログに単体で掲載するのはNGだ。SNSのシェアの感覚になれると、ついやってしまいたくなるかもしれないが、注意しておきたい。

先日、写真素材の無断使用に関して、画期的な判決があった。これは、写真素材の無断での商用利用に関して、著作権侵害、著作権人格権、独占的利用権が認められたというものだが、ポイントは

・無料素材ダウンロードサイトから入手する場合であっても、識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべき義務がある(すなわち、著作物を利用する際は、当該著作物に係る著作権等の権利関係について調査・確認する義務があると考えられる)
(株式会社アマナイメージズ、株式会社アマナのプレスリリースより)

というところ。

つまり、フリーの素材集サイトからダウンロードしたものだから大丈夫と言えなくなったのだ。自分ではフリーの素材を提供しているサイトを利用したとしても、その素材がもともと有料サイトで販売されているものだった場合、知らずに使った自分も責任をとわれる可能性があるということ。

いよいよ知らなかったでは済まないことになってきた?

もちろん、いきなり責任をとらされる状況は怖すぎなわけで、救いはある。
今回の判決では、
・商用利用をした側、その担当者がネットの利用に慣れている
・利用者にリテラシーがあることから故意や過失として認められた
という点だ。
そのため、いまのところネットを普通に利用しているユーザーが個人的に利用する上で、いきなり著作権等の侵害に問われることはないだろう。

しかし、安心せずに、やはりそこは正しい認識を、おさえておきたいところ。
最近は、従来よりもネットとローカルの領域が曖昧になっているからこそ、その写真の権利は誰のものなのか、利用する前に、ちょっと考えてみるべき。

クリエイティブ業務に関わる皆さまへ 有料写真、インターネット上の無断使用で著作権侵害が認められ勝訴


大内孝子