未来のレジ会計はどこまで早く、カンタンになるものなのか?:モバイル決済最前線

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先日、FeliCa Connect 2015というソニー主催のFeliCa技術展示会を見ていたところ、「"ICタグ(RFIDタグ)"を使った自動チェックアウトシステム」という参考展示を見かけた。仕組み自体はごくごくシンプルで、無線通信に対応したICチップ付きのタグ(RFIDタグ)を商品に貼り付けて、このタグを読み取り可能なリーダー装置が取り付けられた特定のゲートを通過すると、自動的に決済が行われるというものだ。今回は、こうした小売店での「自動チェックアウト」の仕組みの最前線を追いかけてみたい。RFIDタグは便利だけれど、やっぱりコストが高い
この仕組みの最大のメリットは「スピード」だ。見定めた商品を両手にレジへと向かい、チェックアウト(精算)するまでがリアル商店での一連の買い物の流れだが、特にスーパーマーケットなど夕方時間のピークタイムはレジ前に大行列があり、これでまずうんざりすることも少なくない。中にはあまりの行列の長さに、買い物かごを投げ出して帰ってしまう人もいるかもしれない。こうした事態は店舗にとっても大きな損失だ。だが、もし「自動チェックアウト」機能を使ってレジに並ばずにそのまま店の外へ出るだけで会計が行えるのならば、時間はほとんどかからない。

FeliCa Connectで紹介されていたシステムは、RFIDタグがついた商品を持ってゲートを通過すると、すぐにその情報がレジ(この場合は写真のMacBook Air)に伝えられて、商品の内容が照合される。さらに商品を持って通過した人がスマートフォンを持っているのならば、このスマートフォン(もしくはクラウド上)に登録されたカード情報を参照して、自動的に決済が行われ、引き落とし結果とその旨の通知が端末に自動的に届けられる。つまり、スマートフォン上のモバイルアプリやウォレットアプリにあらかじめカード情報を登録した状態で商品を持ってゲートを通過すれば、その情報が参照されて自動的に支払いが終了しているというわけだ。

RFIDタグが付与された書籍

書籍を持って専用ゲートを通過すると......

RFIDタグの情報をリーダーが読み取ってすぐにPOSレジ(MacBook Airで代用)に伝えられる

読み取られた情報はすぐに手持ちのスマートフォンに伝わり、場合によっては自動的に決済が行われる

RFIDタグを使ったチェックアウトの仕組みとしては、今年2015年5月に「ユニクロ」のファーストリテイリングが会計業務の効率化のために、全国店舗のセルフチェックレジで「ファストリ」という名称のシステムの一斉導入を進めていると報じられたことが記憶に新しい。このように、最近ではスピードアップによる効率化だけでなく、人件費削減を兼ねてセルフチェックレジを導入する店舗が増えている。

現在のところ、国内外を問わずこうしたセルフチェックレジの商品読み取りにはバーコードが活用されており、特にスーパーマーケットやコンビニなどでは、赤外線スキャナーを真ん中に左右に"はかり"のついたスペースが用意され、この間で商品を移動させつつ、1つ1つ商品のバーコードを読ませて会計を行っている。商品点数が少なく、慣れている人であれば問題ないが、セルフチェックレジの操作で詰まってしまい、結局レジ業務の効率化やスピードアップにはあまり結びついていないという事例も多々見かける。通過するだけでいいというRFIDタグは(「ファストリ」の場合はハンガー等にタグがあるので、セルフレジでそれをカゴにまとめて投入する)、こうした問題解決に一歩近付いたように思える。

ただ1つ、現在のRFIDには非常に致命的な問題がある。それはコストだ。以前まで数百円程度といわれていた単価は現在では大幅に下がり、いわゆる「5セントタグ(日本円で約5〜6円程度)」といわれるものが登場してきている。とはいえ、例えば数百円程度の単価の商品に5〜10円の使い捨てのタグを個々につけていては、コスト的負担は甚大だ。そこで、盗難防止を兼ねてやや高額商品にタグを取り付けて会計時の読み取りに併用したり、あるいはアパレル業界でハンガーや服にタグを取り付けて在庫管理を行ったり、あるいは返却が前提となる図書館での書籍管理に使ったりと、高額商品やリサイクル前提での利用が中心となっている。これは前述のファストリも同様だろう。

数千〜万円単位の比較的高額なスポーツグッズの管理にRFIDタグを活用する例。写真は米ニューヨーク市内で今年2015年1月に開催された展示会にて

商品貼付のRFIDタグ(バーコード付き)にはSmartracの5セントタグが用いられる

RFIDタグが高いなら、いっそ昔ながらの技術をそのまま改良発展させてみる
だいぶ安くなったとはいえ、RFIDタグのコスト負担は、商品点数が多くて単価も安いスーパーマーケットやコンビニでは非常に重い......というわけで、話はいま現在店頭にあるセルフチェックレジに戻る。ならば、いまある技術をそのまま改良発展してスピードアップできるように使いやすくしてしまえばいい、と考える人々は当然出てくる。ここでは、米ニューヨーク市内で今年2015年1月に開催された展示会「NRF Big Show 2015」で紹介されていた最新チェックアウト技術の数々を紹介する。

1つめは東芝(東芝テック)で、カゴに入った商品を所定の場所に置くと、その上に据え付けられたカメラが商品情報(バーコード等)を一度に読み取り、まとめて会計が行えるというものだ。カメラが見える方向にバーコード等の商品情報がわかるように置く必要があったりと、まだ参考展示での技術紹介だが、コスト的にはそれほど負担なく導入が可能だろう。これにスマートフォンなどのモバイル端末を組み合わせれば、商品カゴを置くだけで手元の端末を参照して自動的に参照が行われ、同意の後にすぐに会計を済ませることも可能だろう。

東芝の自動チェックアウトシステムの参考展示。カメラでバーコード情報等を一斉に読み取って会計を行う

ただ、カメラが1箇所にしかないのでは、ユーザーが商品を赤外線スキャナーに読み込ませるためにいちいち商品を移動させるのと、手間的にはさして変わらない。そこで登場するのがECRSのレジシステムだ。これはセルフチェックアウト端末ではなく、欧米等でよく見られる店員が操作するベルトコンベア内蔵方式のレジだが、コンベアの途中に赤外線センサーを含む17個のカメラが内蔵されたチェックポイントがあり、商品コンベア上に適当に並べて高速で通過させるだけで、一瞬で商品情報を読み取ることが可能というものだ。前方向にカメラとセンサーがあるため、商品をどの向きで置いても、多少密着したり重なった状態で置いても、問題なく数秒でスキャンが完了する。正直、早すぎて会計や商品の袋詰めの時間のほうが圧倒的にかかるぐらいだ。

ECRSのベルトコンベア型レジ。17個のカメラとセンサーで、商品のバーコードがどの角度を向いていても瞬時に商品情報を読み取れる

これをさらに強力にしたといえるのが、ITABのセルフチェックレジシステムだ。装置的にはECRSのものに近いが、こちらはバーコード情報だけではなく、なんと商品の形状や重量もスキャナー通過時に読み取り、商品のチェックアウトリストに追加することが可能だという。スーパーマーケットなどでは、野菜等で量り売りの製品があったり、形状の問題からバーコードを読み取りにくいケースがある。これらも問題を吸収可能だというのがITABの説明だ。既存システムの究極進化といえる仕組みだが、多品種低単価の商品を大量に扱うスーパーマーケットでは、RFIDタグがさらにコストダウンしたとしても、当面の間はこうした既存技術の延長線上にあるシステムにお世話になることになるかもしれない。

ITABのセルフチェックレジのソリューション。奥に見える装置が形状や重量計測も可能なシステム

ECRSのシステムでは商品を適当に置いてもスキャンされるが、こちらはある程度商品を並べて配置する必要がある