維新の泥仕合が続いている。10月24日、維新の党執行部から除名された大阪組の議員と彼らを支援する党員によって、執行部が出席しないまま臨時党大会が開催され、維新の党の「解党」が決議されたのだ。執行部側は、この臨時党大会自体が無効であると主張し、両者の争いは、裁判闘争にもつれ込む情勢だ。
 そもそも、維新の生みの親である橋下徹氏は、8月27日に「党を割るつもりはない」と、国政政党である維新の党を自らの意思で離党し、大阪のダブル選挙に専念すると語っていた。橋下氏は、大阪市長の任期が切れる今年末をもって政治家を引退すると表明しているが、最後の最後にきて維新の党批判を強め、そして一気に解党にまで持っていこうとしているのだ。

 一体何が起きているのか。それを考えるために、橋下氏が仕掛けた内紛がどのような効果をもたらすのかを考えてみよう。今回の騒動で一番利益を得たのは、間違いなく安倍総理だ。安全保障関連法案の強行突破や、TPP交渉での惨敗、辺野古沖埋め立てでの沖縄県との対立、原発の再稼働などで、安倍政権は発足以後、最大の危機を迎えている。このまま行けば、来年7月の参議院選挙で惨敗することも十分ありうる。
 そうしたなか、日本共産党が参議院選挙での野党共闘を呼び掛けている。安倍政権の暴走をくい止めるために基本政策の違いを乗り越えて野党統一候補を出そうというのだ。参議院には現在32の1人区がある。野党がバラバラに候補を立てたら勝てないが、統一候補を立てれば自民に勝てるというのだ。共産党が入るかどうかは別にして、維新の党の松野代表は、参議院選挙の選挙協力について民主党との調整を始めたところだった。安倍総理にとって一番困る「野党共闘」が動き始めていたのだ。

 それを打ち壊すための一番良い方法は、共闘の核となる維新の党を壊すことだ。橋下氏は、自ら作った維新の党を破壊する「自爆テロ」に打って出たのだろう。
 この作戦には重要な先例がある。民主党だ。野田佳彦前総理は、消費税率の引き上げ、TPP交渉への参加、そして普天間基地の辺野古への移設推進と、それまで民主党が掲げてきた基本政策と正反対の政策を採った。それで国民は、民主党離れを起こし、民主党は総選挙で惨敗、政権の座から滑り落ちることになった。今回の維新の党の内紛も、国民は冷たい目で見ている。

 いまから4年前の6月、橋下徹氏はパーティーの席で、「今の日本の政治に一番必要なものは独裁」と言い放った。私はうかつにも、橋下氏が日本の独裁者になろうとしているのだと思ってしまった。しかし、橋下氏がやろうとしているのは、安倍独裁体制を擁護することだったのだ。
 最近の安倍総理は独裁まっしぐらだ。内閣改造を行い、TPPで大筋合意を迎えながら、その報告を求めて臨時国会の開催を要求する野党を無視している。日本国憲法は53条で、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」としているが、それも無視するほど安倍政権は独裁化している。橋下氏は、それを支えているのだ。