加熱する電子マネー市場

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 近ごろ、コンビニエンスストアやスーパーの会計時、小銭をチャラチャラ出す“現金派”がめっきり減った。事前にまとまった金額を専用カードやスマホにチャージ(入金)し、レジ横の端末にかざして利用する“電子マネー派”が増えたからだ。

 すでにコンビニでの支払い手段の約4割が電子マネーで行われているとの調査結果もある。野村総合研究所によれば、電子マネー全体の市場規模は約4兆円(2014年度)に及び、2020年にはなんと11兆3000億円まで拡大すると予測されている。

 主要なコンビニで使えるのは、『Suica(スイカ)』や『PASMO(パスモ)』といった交通系の電子マネーが全国で相互利用もできて便利だが、買い物時のポイント還元など特典が少ないのが難点。そこで、勢力を拡大しているのが流通系だ。

 セブンイレブンでは、イトーヨーカ堂やデニーズなどセブン&アイグループ共通の電子マネー『nanaco(ナナコ)』ほか、ネットショップ(楽天市場)、家電量販店(ヨドバシカメラ)でも使える『楽天Edy』での支払いも可能。

 また、およそ43万店舗の多業種で使えるポイントカード最大手『Tカード』(カルチュア・コンビニエンス・ストア)と早くから提携してきたファミリーマートは、2009年よりイオングループの電子マネー『WAON(ワオン)』も導入。また、今年6月からはTカードが電子マネー化(Tマネー)したのに伴い、決裁機能を多様化させている。

 そんなライバルたちに乗り遅れていたのがローソンだが、ここにきて一気に巻き返し策を打ち出した。JCBと提携し、11月よりポイントカード『Ponta(ポンタ)』の電子マネー版(おさいふポンタ)を発行。そして、12月からはワオンも導入すると発表した。

 ローソンが矢継ぎ早に電子マネー戦略を強化しているのはなぜか。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏が語る。

「ポンタはこれまで電子マネー機能を持たせることよりも、常連客の属性や嗜好データを集めて新商品開発に活かすことに重点が置かれていました。しかし、首位セブンイレブンとの差が縮まるどころか、ファミマとサークルKサンクスの統合も決まり、コンビニ業界のシェア争いは一層激しさを増してきました。

 そこで、ファミマが一足先に採用しているとはいえ、ワオンの導入も決めて客数や店舗あたりの売上高を減らさないようにする狙いがあるのでしょう。コンビニのような小口決裁は、現金よりも電子マネーが使えたほうが利用者にとっても店側にとっても手間が省けて効率的ですしね」

 こうしてみると、コンビニの“電子マネー戦争”は、二大流通グループ「セブンVSイオン」の覇権争いの様相を呈してきた。ナナコとワオン、どちらが最強の電子マネーなのか。

 現在の発行枚数と利用店舗数で比べてみると、ナナコの4198万枚・18万5900店に対し、ワオンは5260万枚・22万5000か所。この数字だけ見ればワオンに軍配が上がるが、前出の河野氏は「利用頻度やオトク感はナナコのほうが上」と話す。

「全国に1万8000店を構えるセブンイレブンの規模もさることながら、セブン&アイグループの圧倒的な財務力でナナコのサービス満足度は高い。ナナコで購入すれば割引になる商品もたくさん揃えていますし、カウンターコーヒーを5杯買えば1杯無料になるなどのキャンペーンも充実しています。

 一方、ワオン陣営はこれまでイオンが郊外に多かったため、首都圏での利用価値は低かったのですが、ファミマやローソンといったコンビニのほか、手広く提携企業とスクラムを組んで利便性を追求していく戦略です。

 今後、決済金額の伸びによっては、これまでセブングループが中心だったナナコも提携企業を増やしていく可能性はあります。いずれにせよ、電子マネーの利用率をいかに高めていくかが、コンビニはじめ流通業界の雌雄を決する重要なポイントといえます」(河野氏)

 いまや、同じ商品を買うにも「どうせならポイントが貯まる店舗で」と“カード縛り”の生活を送る人は多い。そう考えると、顧客の囲い込みを図る電子マネー市場が急拡大しているのもうなずける。