受動喫煙から子どもを守れ! (shutterstock.com)

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 妻子が煙たがるのを気にせず自宅で吸ったり、路上でタバコをポイ捨てしたり......。男性なら誰でも、タバコを吸うのが当たり前という時代が、ほんの少し前まであった。なんと、高度成長期は、日本の成人男性の喫煙率は8割超もあったのだ。現在、成人男性の喫煙率は約3割にまで落ちている。

 タバコが健康に及ぼすリスクが周知されてきたことに加え、社会から喫煙という行為が締め出されていることがなにより大きい。

 さらに、喫煙者のみならず、周囲の人々が「受動喫煙」によって被る健康被害も明白になってきた。厚生労働省と国立がんセンターのウェブサイトから受動喫煙に関するデータを拾ってみると――

●タバコの煙には、約4000種類の化学物質や約200種類の有害物質、60種類以上の発がん性物質が含まれている。
●ヘビースモーカーの夫を持つ妻は、本人が吸わなくても肺がん死亡リスクが約2倍。
●受動喫煙により、肺がんと虚血性心疾患によって年間6800人が死亡している。
●受動喫煙による肺がんと虚血性心疾患のリスクは、それぞれ1.2〜1.3倍と1.25〜1.3倍。

 同サイトによれば、子どもへの影響は、さらに重篤であることがわかる。急性呼吸器感染症、重症度の高いぜんそく発作、肺の発達の遅れといった呼吸に関連するもののほかに、乳児突然死症候群(SIDS)や中耳炎、早産や低体重児といった出産時のリスクも高くなるというデータもある。

 さらに受動喫煙は、子どもの歯にも影響を与えることがわかってきた。

受動喫煙で小児の虫歯リスクが高まる!

 10月21日に発表されたイギリス医師会雑誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」に、京都大学の川上浩司教授(薬剤疫学分野臨床研究管理学)による、以下のような研究結果の報告が掲載されている。

 川上教授は、2004〜2010年に生まれた子ども約7万7000人のデータを集計。子どもは、出生時、4、9、18カ月および3歳時に健康診断を受けており、その結果に加え、母親へのアンケートで、家庭における喫煙状況、小児の受動喫煙の状況、食習慣および歯のケアについて回答してもらい分析したところ、以下のことが判明した。

●全体では約1万3000例に虫歯が認められていた。
●約55%の子どもの家族に喫煙者がおり、7%の小児はタバコの煙に直接さらされていた。
●家族に喫煙者がいる小児の3歳時の虫歯リスクは、喫煙者がいない小児と比較して、タバコの煙に直接さらされている場合は2.14倍、タバコの煙に直接さらされていない場合でも1.46倍となる。

 「世界の子どものうち半数にタバコを吸う家族がおり、そのうち4割が受動喫煙にさらされています。受動喫煙は未だ解決されていない重大な公衆衛生問題のひとつです」と川上教授は警鐘を鳴らす。

タバコの煙が唾液に生化学的な変化を生じさせる

 川上氏の研究結果に関連して、米ニクラウス小児病院・小児歯科センターのRosie Roldan氏は、タバコの煙が唾液などに生化学的な変化を生じさせる可能性があると指摘し、「受動喫煙は子どもの心疾患や呼吸障害のリスクを高めるだけでなく、虫歯リスクをもたらす可能性もある」と語っている。

 我が子の健やかな成長は、親であれば誰しも望むものであろう。であれば、子育て中の親は、受動喫煙の害について真剣に考えるべきだろう。親だけではなく、そのことは歯科医も認識すべきである。川上氏は「受動喫煙や親の喫煙による虫歯リスクを歯科医が認識するようになれば、受動喫煙の害に関する教育の強化につながります」と訴えている。

 先述したように、受動喫煙の子どもの健康被害についてのリスクは、重篤な心疾患や呼吸障害ばかりが注目されてきた。それが虫歯にまで関連するとなると......。喫煙は周囲の人々にとっても「百害あって一利なし」ということを肝に銘じるべきだろう。
(文=編集部)