今季の女子ツアーも残り3試合、限られた選手しか出場できない(※)最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップ・リコーカップ(11月26日〜29日/宮崎県)を除けば、実質2試合となり、来季のシード権争いはまさに佳境を迎えている。
※出場できるのは、今季ツアー優勝者、大会前週までの賞金ランキング25位までの選手など。

 賞金シード獲得には、賞金ランキング50位以内に入ることが条件(※)となるが、有望な若手選手が次々に台頭している昨今、その条件をクリアすることは決して簡単ではなくなってきている。実際に近年になって、数年前まで賞金シード常連だった選手がシード落ちという憂き目にあう姿を頻繁に目にするようになった。
※その他、永久シード選手を除いて、賞金ランキング1位の選手(翌3年間)、ツアー優勝者(翌1年間。メジャー優勝の場合は翌3年間)などにシード権が与えられる。

 そうした浮き沈みの激しい世界にあっては、将来を嘱望され、一度は脚光を浴びた若き才能であっても、安住は許されない。比嘉真美子(22歳)と堀奈津佳(23歳)がいい例である。一昨年、それぞれツアー2勝を挙げて、今後の日本女子ツアーを引っ張っていく存在と思われていたふたりが、まさかのシード落ちの危機に面しているのだ。

 2011年、2012年と日本女子アマ連覇を遂げた比嘉真美子は、ナショナルチームのエースとしても活躍し、アマチュア時代から「大物」と騒がれていた。そして、2012年のプロテストに一発合格すると、同年のファイナルQT(※)でも10位という好結果を残して、翌年のツアー出場権を難なく手にした。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 迎えた2013年シーズン、プロツアー本格参戦1年目ながら、比嘉はいきなりツアー2勝をマーク。「大物」と称されるにふさわしい活躍を存分に披露した。海外メジャーの全英女子オープンでもベスト10フィニッシュ(7位タイ)を飾るなどして、同年の新人賞のタイトルを総なめ。その存在を世の中に知らしめるとともに、誰もがその後の比嘉の飛躍を信じて疑わなかった。

 だが、プロ3年目の今季、比嘉は非常に厳しいシーズンを送っている。出場30試合中、予選通過は7試合のみ。5月のリゾートトラストレディス(5月29日〜31日/山梨県)からは出場17試合連続予選落ちという屈辱も味わって、11月9日現在(以下同)、賞金ランキングは96位(獲得賞金338万3500円)と低迷。シード権獲得はほぼ絶望的な状況にある。

 いったい、彼女に何があったのか。

「練習ではうまくいくショットが安定しないんです。(試合になると)狙ったところにボールが飛んでいかなくて......」

 現状に甘んじるすべての原因は、そのひとつしか考えられない、と比嘉は言う。

 春先からすでに調子はおかしくなっていて、ティーショットが安定しないことで、セカンドショットがグリーンに乗らない。それがそのまま、以前から強化してきたアプローチやパッティングにもつながらず、すべてのプレーがかみ合わなくなってしまったという。

 また、流れが悪いときは、苦難が重なるものなのか、9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン(9月25日〜27日/宮城県)を終えてからは、左ヒジを痛めて休養を余儀なくされた。じん帯と骨がはく離した状態にあって、メジャー大会の日本女子オープン(10月1日〜4日/石川県)を含め、終盤戦の大事な3試合を欠場した。

 懸命なリハビリとトレーニングによって、今では痛みもとれて問題なくクラブは振ることができるというが、とても万全な状態とは言えない。比嘉の置かれた状況はますます厳しくなっている。

 それでも比嘉は、そんな素振りを一切見せない。困難な現状における周囲の心配や不安をよそに、常に平静を装っている。

「決して悪いことばかりでもないんですよ。調子だって、悪いときもあれば、いいときもありますから。いい意味で開き直って、うまく気持ちを切り替えて試合に臨まなければいけないなって、いつも思っています。休んでいる間も、ドライブしたり、プロレスを観戦したりして、リフレッシュできました」

 ひと呼吸置いて、比嘉が続ける。

「人は、ずっといいことばかりあるわけじゃない。悪い時期というのを、今こうして経験できていることがよかった、と思っています。家族やキャディー、トレーナーさんなど、多くの人が支えてくれていますし、悪い状況にあっても、多くのことが学べますから。そうした現状を打開していく過程において、いろいろな話をすることで、さらに学ぶ意欲が沸いてきています。

 だいたい、今年がダメだからって、私のゴルフ人生が終わるわけじゃありませんよね。これから先、東京五輪出場や賞金女王獲得、そして米ツアー挑戦など、自分が目標とするプランがたくさんあることを考えれば、まだまだ『やれる!』って思うんです。そのために今は、じっくりと自分の足もとを見つめて、結果に左右されることなく、できることからやっていきたい。そうすれば、自分のゴルフは自ずとよくなっていくと思うんです」

 衝撃的なプロデビューを飾って、周囲の期待は一気に膨らんだ。比嘉はその期待に応えようとし過ぎたあまり、自らの成長リズムを乱してしまったのかもしれない。

 しかし今、彼女は"原点"に立ち返った。一歩ずつ階段を上がっていくことで、少しずつ光が見えてくるはずである。そしてその先に、持てる才能が再び開花する日が待っているに違いない。

 一方、比嘉と同様、2013年にツアー2勝を挙げて、一気にブレイクした堀奈津佳も、今季は思わぬ苦境に立たされている。出場28試合で予選通過は6試合だけ。賞金ランキング98位(獲得賞金305万円)と、2年間保持してきたシード権獲得には程遠い状況にある。

 堀もまた、ショットの乱れが不調の原因だと語った。

「開幕戦から、得意のショットがまったく安定しなくて......。それで、ショットの悪いところを直そうと、ひとつのことばかり練習していたんですが、そのうちに全体のバランスが悪くなってしまったんです。そうすると、他にも直したいところが見つかって、結局どこから手をつけていいのかわからなくなってしまって......。(修正するための)整理の仕方を間違えてしまったんだと思います。

 あと、ショットをよくするために、技術面の修正はさまざまな方法を考えて、いろいろなことをやってきたんですが、ゴルフは技術だけじゃないですよね。気持ちの面がすごく大事じゃないですか。要するに、そうしたトータルのバランスが重要だと思うんですが、それが今季はうまく保てなかったんだと思います」

 苦悩のシーズンを淡々と振り返った堀。当初は結果が出ないことへの焦りや不安も大きかったようだが、ここに来て、すべてをイチから見つめ直す作業に入ったという。コーチとともに、ショットの技術面とメンタル面のバランスを整えることに力を注いでいる。そして堀自身、少しずつではあるが、よくなる手応えを感じ始めているそうだ。

「絶好調だった2013年シーズンの頃、その当時の状態をすぐに取り戻せるとは思っていません。それが、すごく難しいこともよくわかっています。ただ、賞金シード獲得はまだ諦めていません。そんなに甘い世界ではないですから、もちろんQTも視野に入っていますが、最後まで精一杯プレーしたい。そのために、いつもどおりのことをやっていくだけです」

 自分がすべきことがはっきりと見えた今、堀の表情からはいろいろなことが吹っ切れた様子がうかがえた。そのうえで、時折笑顔を浮かべ、しっかりと先を見据えて語るその姿から、彼女が復活する日もそう遠くはないと感じられた。

 女子ツアーの"顔"として、その活躍が大いに期待された比嘉と堀。ふたりが再びグリーン上で輝くシーンを、多くのファンが待っている。

text by Kim Myung-Wook