写真は「Instant Articles」

2015年11月10日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

FacebookのMAU(月間アクティブユーザー数)は15億人を超え、さらにモバイル経由のMAUが13.9億人に達したという。そのFacebookが、iPhone・Androidスマートフォン上で、ユーザーが見たいと思うニュースの新着をリアルタイムで通知するアプリ「Notify」をローンチした(日本市場向けにはまだいつリリースされるか不明だ)。

若年層からの支持を失っている、ピークは過ぎたと言われることが多いFacebookであるが、実際には利用者数やトラフィックに陰りがないように思われる。しかし、マーク・ザッカーバーグを始めとするFacebook経営陣は真のパラノイア集団だ(褒めている)。衰えの兆候はギリギリまで見えてこないものだから、彼らは常にさまざまな打つ手を考えている。

それが5月にローンチした自社製キュレーションニュースアプリ「Instant Articles」であり、今回リリースした「Notify」などである。

冒頭で述べたように、Facebookでは膨大な数のユーザーが、膨大な量のコンテツをアップロードしているが、ユーザーそれぞれのニュースフィードに流れてくるコンテンツが多すぎて読者が嫌気さすようなことがないように、相当数間引いている。

人間がネットを利用できる時間は限られており、いくらFacebookでもそのすべての時間を奪うわけにはいかない。だから当然ニュースフィードで流れる情報量を絞り、気楽に読みきれる量に抑えるのである。

この絞り方、間引き方はエッジランクなどと呼ばれているが、一種のアルゴリズムで自動的に操作させる。そして、現在、単に画像だけをアップしたり、テキストだけのようなコンテンツは自動的に相当数間引かれるようになっているようだ。優先的に表示させるのは動画、そしてニュース(Article)である。

しかし、ニュースフィードで企業やメディアからのArticleを優先させ過ぎれば、友人・知人とのステイタスを知るためのFacebookの意義が失われ本末転倒になる。

だからFacebookはニュースの更新通知を切り分け、メジャーなメディアからのコンテンツそのものを消化させる場所としての「Instant Articles」と、より多くのコンテンツホルダーからの更新通知を効率的に知らせるための「Notify」を用意している。

Facebookは、コミュニケーションツールとしてのアプリをFacebookメッセンジャーとして切り出しているし、そもそも買収したWhatsAppをそのままスタンドアローンなアプリとして置いている。写真をシェアするアプリとしては、やはりInstagramをスタンドアローンのまま置いている。Facebook自体は、ユーザーが望めば、それらのアップデートを集約する場所として設定できる、という自由度を担保した状態だ。

「Instant Articles」も「Notify」も、もともとはニュースフィードに混在する、トラフィックを生みやすい重要なコンテンツを、他のアプリ群とは逆にあえて切り出そうとしているように見えるのである。

Facebookの戦略の最終的な着地点がどこにあるのかはまだ分からないが、とりあえず 現在は個人のアイデンティティをつなぐ場所としてFacebookの存在は明確にして、それ以外のコンテンツの種類ごとに分散した場を作ろうとしているように見える。その大きな戦略の流れに、メッセージがあり、写真があり、そしていまニュースというコンテンツの分離を成立させようとしているように思えるのである。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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