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今回いただいた読者からいただいたお題は、「福山雅治やイケメン俳優の結婚について語り、そして我らを成仏させていただきたい」というものである。

○まさかの福山結婚

今年は、福山雅治を筆頭に、多くの妙齢男性芸能人が結婚し、全国で推定5億人の死者が出たと予想される。

私などは子供のころからあこがれの男は二次元、周りが光GENJI最盛期にどうすればドラゴンボールの悟空と結婚できるかを考えていた女である。あまり芸能人の結婚でショックを受けたことはないが、それでも福山雅治の結婚は驚いた。

上手く言えないが、福山は、福山だけは、口の周りはカサついてるのに、Tゾーンは油田みたいになっている女の夢と殉死してくれる存在だ、という安心感があったのだ。

しかし、福山雅治には福山雅治の人生があった。つまり今回の事件で我々が肝に銘じておかなければいけないことは、「こいつは結婚しないだろうと思っていた男性芸能人も、意外とする」ということである。

肝に銘じた所で、死に方が「いきなり隕石に当たって死ぬ」から、「まあいつか隕石降ってくるだろうな、と予想しながらやっぱり当たって死ぬ」にシフトするだけだが、覚悟しておくにこしたことはないだろう。

しかし、好きな芸能人の結婚や熱愛に嘆き悲しんでいると、必ず「福山雅治が結婚していようがいまいが、お前のモノになる可能性は限りなくゼロなんだから大差ないだろう」などと冷や水をぶっかけたがる奴が出てくる。そういう問題ではないのだ。こういうことを言ってくる奴の前世はカナブンだし、来世はバッタである、

○「公式設定」の破壊力

相手が二次元だろうが三次元だろうが、「公式設定」の存在はとにかくでかい。例えば、漫画でAと言うキャラがいたとする。Aに原作の中で特定のキャラとつきあっている設定がなかった場合、オタクたちは自分の好みでAをBやCというキャラとくっつけたり、はたまた「Aは自分とつきあっている」などの設定で妄想を楽しんだりするのである。 そんな状況の原作が進展する中で、「AはDというキャラとつきあっている」という設定が描かれたら、オタクにとっては一大事、状況は一変する。

いくら原作でDとくっついたとしても、妄想は自由なのだから、お構いなしにBやC、さらには自分と恋愛関係にさせておけばよいのだが、「Dとつきあっている」設定がなかったころのように、のびのびと妄想するのは至難の業だ。やはり、「公式設定」の影響力は非常に強い。

つまり、「福山雅治×吹石一恵」という公式カップリングが成立してしまったことにより、ファンのテンションはドン下がりなのである。自分は結婚前から「福山×吹石」派だったという者にとっては大勝利であろうが、おそらくかなり少数派であろう。

そんなのはお構いなしに、今まで通り福山雅治に対し幻想や妄想を抱こうとしても、どうしても脳裏に「公式カップリング」の相手・吹石一恵の存在が浮かんでくるのだ。これは寝る前のエロ妄想の最中、必ずお母さんの顔が浮かぶようになってしまったぐらい由々しき事態である。

○成仏する前に状況を打開する

ではこの未曾有の事態を「福山雅治のファンはやめない」という前提でどう打開していくかと言うと、まず彼に対する萌えの見方を変えるという方法がある。人のものになったという現実を受け入れ、温かい家庭を築く福山雅治にあらたな魅力を感じていくという手法である。これにはまず、自分がファンとして使った金が、別の女を養うために使われたかもしれない、という現実を受け入れるだけの仏の精神が必要で、「福山雅治のことなら全て受容する」という人向けである。

それとは逆に、「全て受け入れない」という方法もある。いわば「原作スルー力」を極限まで高めるのである。二次元の世界でも、A×Dが公式設定であっても、「誰がなんと言ってもA×B」で活動している人は多くいる。その胆力を見習うのだ。オタクの中にも「〇〇(キャラ名)は10巻まで派」を公言する人がいるのだから「自分は吹石一恵と結婚するまでの福山雅治派」だと言ってしまってもいいし、二次創作の注意書きなどに「※このマンガにはBL表現が含まれます」と書いてあるのと同じように、自分の脳内で「※この福山雅治は吹石一恵と結婚していません」と一言添えて、あとは従来どおり妄想を抱けば良いのである。

もちろん、3次元の場合実在する人物ゆえ、2次元よりこういった割り切りが難しいと思う。だが、2次元の場合も、「原作で死ぬ」などの大事件が起こることがあるので、リスクの上ではイーブンと言える。それに、原作でいくら推しキャラが死のうと、「※この作品では〇〇は生きてます」と一言添えて、元気に二次創作をしているオタクたちもいるのだ。

「結婚しようがしまいが、お前のモノになることはない」という無粋なコメントが仮に真実なのだとしたら、「現実がどうだろうと関係ない」という開き直りもまた真実なのである。

<作者プロフィール>
カレー沢暴力
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1〜2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は11月17日(火)昼掲載予定です。

(カレー沢暴力)