減り続ける毛蟹の漁獲量

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 日本のカニが危ない。漁獲量が年々減り続けているのだ。違法な操業による「カニ・ロンダリング」もその原因のひとつと考えられる。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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 寒くなると、冬が旬の海産物にグッと味が乗ってくる。その花型といえば、やはりカニだ。だがここ最近、「カニよ! お前もか!」と言いたくなるような話を耳にする。近年、ウナギやマグロなどで起きた、”水産資源”問題がカニにも起きている。

 今年9月、北海道新聞に「毛ガニ漁獲量18%減 北海道・胆振の太平洋海域、2007年度以降で最少」という見出しが踊った。タラバガニやズワイガニと異なり、毛ガニは北海道では場所を変えながら、通年での漁獲ができる。秋は釧路と根室沿岸、冬は十勝沿岸、春はオホーツク、そして夏は胆振地区(噴火湾)だ。今年の毛ガニ漁は7〜8月にかけての42日間行われたが、漁獲枠達成率が76%だったという。

 もっとも、同紙によれば「2007年度からの本格操業では11年度が最高の漁獲量で、漁獲枠いっぱいの370トンを水揚げした。ところが2012年度から漁獲枠を下回る300トン以下の漁獲が続き、2014年度は達成率90%、2015年度はさらに下回った」とあるから、そもそも設定された漁獲枠が生態系のサイクルに見合っていない。

 戦後、日本のカニ漁は漁獲高が活況を呈し、1968年には史上最高の11万7737トンを記録している。ところがその後漁獲量は落ち込み続け、農林水産省の漁業・養殖業生産統計では、2013、2014年と3万トンを連続して割り込んだ。

 現場でも対策をしてこなかったわけではない。北海道の毛ガニは1950〜1960年代にすべてのメスと甲長8cm未満のオスの水揚げが禁止された。1991年にも毛ガニかごの網目を大きくするという”対策”は取られている。それでも現在まで、漁獲高は減り続けている。つまり、漁獲高に対して見合った規制対策がとれていないということになる。

 実はこの”カニ資源問題”は、国内だけの問題ではない。

 WWF(世界保護基金)が今年6月に発表した「違法なロシア産カニ貿易フロー調査」ではロシアなどは漁獲高規制をしているはずなのに、公式漁獲量の1.69倍という量のカニを輸出している。漁獲高より輸出量が多い――つまりどこかで「カニ・ロンダリング」が行われ、輸出されているというのだ。WWFの調査では、水揚げ量の不正申告や未申告産品の輸送船への洋上積み替えなどがその手法として挙げられている。

 近年ではロシア国境警察による監視が強化されているものの、その目を逃れて、ロシアの密漁船が日本の排他的経済水域(EEZ)で密漁を行うという、日本からすると本末転倒のような事例もあるという。海上という目に見えない”国境”では何が起きても不思議ではない。

 近年では、”オリンピック方式”と揶揄されるほど「獲った者勝ち」になりがちな日本の漁業。カニだけではなく、改善点は山ほどある。「ずわい蟹」、「たらば蟹」は冬の季語だ。四方を海に囲まれた日本人が、周囲の海域の資源を守ることは、食卓や食文化はもちろん、さまざまな日本の文化を守ることにもつながっている。