ブラジルW杯で一躍その名を世界に轟かせたハメス・ロドリゲスは、当時22歳だった。年齢的にはロシア大会での南野が同じ歳に当たるが、果たして……。(C) Getty Images

写真拡大 (全3枚)

 日本代表に勢いが感じられない。ブラジル・ワールドカップでの敗退からリスタートを切り、1年を経過した今も日本代表はピッチ上で溌剌とした躍動感を生み出せずにいる。主力選手の高齢化が指摘される一方、新顔の台頭がそれほど旺盛ではない現状を見れば、やはり世代交代の遅れが原因と言えるのか……。
 スポーツライターの加部究氏が、各国代表チームの例を紐解きながら難局に直面する日本代表の打開策を探る。
 
【写真】ワールドカップで輝きを放ったラッキーボーイたち16選
 
 もし11月5日に発表された今回の日本代表メンバー23人が、そのままロシア・ワールドカップに出場した場合、平均28.3歳で開幕を迎えることになる。前回ブラジル大会で最も平均年齢が高かったアルゼンチンが28.5歳だから、ほぼ変わらない水準である。現在レギュラー格の長谷部誠はブラジル大会時の遠藤保仁と同じ34歳になり、ロシア大会の開幕前日に誕生日を迎える本田圭佑は32歳で3度目のワールドカップに臨むことになる。
 
 ここ数年、日本代表と対戦した多くの監督たちは「経験豊かなチーム」と評してきた。実際ブラジル大会に臨んだチームは、代表でも欧州でも十分なキャリアを積んだ選手が軸を成し、アルベルト・ザッケローニ体制ではメンバーの固定化が顕著だったので、そういう印象を与えたに違いない。
 
 さらにハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ両監督が引き継いでも、あまり主力の顔ぶれに変化がなく高齢化が危惧されたが、それでもブラジル大会の代表は約半数の12人が外れ緩やかに変化の兆しを見せている。ただし同大会では年齢的に若かった権田修一、大迫勇也、柿谷曜一朗、斎藤学らが外れているので、顔ぶれが変わっても必ずしも世代交代が進んだとは言い切れないのも事実だ。
 
 大舞台でラッキーボーイの存在が明暗を分けるというのは使い古された言葉だが、実際にワールドカップでも勢いのある若い選手がチームを成功に導いた例は枚挙にいとまがない。古くは1958年スウェーデン大会で17歳のペレがブラジルを初優勝に導き、それが黄金時代の幕開けとなった。
 
 1982年スペイン大会では、18歳のジュゼッペ・ベルゴミが重要なブラジル戦でデビューを飾り、以後優勝に大きく貢献したし、1998年フランス大会では、同じく18歳のマイケル・オーウェン(イングランド)がアルゼンチン戦で鮮烈なゴールを叩き込んだ。最近では昨年のブラジル大会で、22歳のハメス・ロドリゲスがコロンビアを牽引し、日本も手痛い目に遭っている。
 ただしラッキーボーイは欲しいが、チーム全体を考えれば、勢い以上に成熟度も必要だ。ブラジル大会のドイツは、平均25.8歳と異例に若いチーム(大会5番目)で優勝を飾ったが、これは2000年以降の育成改革の成果で、やはり歴史を振り返れば27〜28歳をベースにしたチームがチャンピオンに近い。また当然ながら、問われるのは年齢より質で、経験値の高いチームの中に世界を驚かせるような切り札を取り込めれば、それに越したことはない。
 
 世界のサッカーシーンを俯瞰しても、代表チームが黄金時代を継続するのは至難の業だ。ワールドカップの連覇は2度(1934,38年のイタリアと、1958.62年のブラジル)だけだし、世界と欧州を連続して制したフランスやスペインも、次のワールドカップではグループリーグで散った。
 
 20世紀後半のフランスは、78年アルゼンチン大会からミッシェル・プラティニを軸とするチームで3つのワールドカップを戦った。残念ながらピークは84年のEUROになり、この大会を挟んだ2度のワールドカップは準決勝で敗れたわけだが、こうして大きな波を作った後は、90年から2大会連続して本大会出場を逃している。
 
 どんな国でも栄光を築けば、その分だけ中心選手たちは伝説となり、代謝に踏み切り難くなる。もし日本が外国人監督を雇う利点があるとすれば、比較的実績を度外視してでも独自の視点で能力を見極められる可能性が高いことなのかもしれない。
 今日本代表に高揚感が乏しいのは、惨敗したブラジル大会から、明確な進化や大きな伸びしろが感じ取れないからだ。もちろん年齢だけを尺度にするのはナンセンスだが、ともに平均25.3歳で臨んだ98年フランス大会、2002年日韓大会の頃は、明らかに日本サッカーの進化を実感できた。逆にだからこそ集大成となるはずの2006年ドイツ大会での失敗が痛恨だったのだ。
 
 ハリルホジッチ監督が、ブラジル大会で果たせなかったグループリーグ突破を目指すなら、当然新しい可能性を引き出す必要がある。
 
 ただし3年後でも依然としてベストメンバーに入るベテランがいるなら外すわけにはいかない。結局ザッケローニ監督は土壇場で大久保嘉人を選んで起用もしたわけだが、これは見極めの失敗例と言える。
 
 肝心なのは世代交代というより、3年後の個々の到達点を見極めることだ。そしてその眼力は、熟成期間が限られた代表監督にとって生命線となるはずである。
 
文:加部 究(スポーツライター)