【日本サッカー見聞録】ライバル意識を煽るハリル流操縦術の不安材料

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▽11月12日と17日に敵地で行われるロシア・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選に臨む日本代表23名が、11月5日に発表された。日本が所属するグループEは勝点12のシリアが首位で、日本は勝点10の2位につけている(シンガポールも勝点10の3位)。これは日本の消化試合が1試合少ないからで、12日のシンガポール戦と17日のカンボジア戦に連勝すれば立場は逆転する。

▽シリアは12日がレストデーで、17日にアウェイのシンガポール戦に臨むだけに、日本としてはカンボジアに大量得点で勝利するのはもちろんのこと、ホームで引き分けたシンガポールはアウェイとはいえ何としても叩いておきたいところだ。

▽さて今回のメンバー発表でハリルホジッチ監督が強調したのは、これまで通り「代表の席は確定していない」ことだが、もう1つ新たな発見があった。それはチーム内の競争を具体的に煽ることだった。ディフェンスDF陣なら丹羽、昌子、水本、塩谷らを「かなり高いレベルを見せている」と評価しながらも、レフティーの丸山を見るために「チャンスを与えたい」と招集理由を語った。

▽同じように藤春のクロスが自陣に引いて守る相手には効果的だと判断して、「米倉から席を奪った。(藤春には)スピードとクロスに期待している」と競争意識を煽っていた。そして最も特徴的だったのは、これまで代表チームでは“アンタッチャブル”な存在だった本田や香川のポジションについても具体的なライバルを指名したことだ。

▽本田のポジションについては「若い南野は有望な選手で、右サイドからの攻めに期待しているゴールゲッターだ。爆発的なスピードがあり、ペナルティエリアに入って行ける」と高評価。前回の会見でもハリルホジッチ監督は南野について期待の高さをうかがわせる発言をしていたものの、彼のポジションは左アウトサイドかトップ下というイメージが強かった。それを今回は、はっきりと本田の後継者に指名したのは驚きだった。

▽同じように「清武は香川と同じポジションで攻撃を前に進めてくれる。香川と清武で競争して欲しい」とライバル関係を煽った。これまでの代表で清武は右アウトサイドで起用されることが多かったため、本田の後継者は清武、香川の後継者は南野と思ってしまうところだが、指揮官の思惑は違うようだ。

▽さらに宇佐美についても「最近は疲れているかもしれない。こんなに能力の高い選手はいない。しかし能力だけでは十分ではない」と注文をつけながら、「原口は常にクラブでプレーし、サイドと中央といろいろなポストでプレーできるコンプリートな選手」と評価して、宇佐美の奮起を促していた。

▽岡崎に対しても武藤嘉のハットトリックを引き合いに出し、さらに今回は金崎というライバルも加えて競争意識を煽っている。その時々でコンディションの良い“最強メンバー”を選びつつ、将来を見据えて“経験値”を積ませるのがハリルホジッチ流の代表チーム作りと言えるだろう。

▽唯一残念だったのは、吉田の後継者が今回もいなかったことだ。有望な若手センターバックとゴールキーパーの不在が、いま現在の日本にとって不安材料に変わりはないのが気掛かりだ。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。