シンガポール戦の予想布陣:酒井宏が復帰し、ほぼベストメンバーと言える顔ぶれでアウェー2連戦に挑む。CFはこれまでの実績を踏まえ、岡崎をスタメンに予想したが、好調の武藤がその座を奪う可能性は決して低くない。

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“あの時”のスコアレスドローは、今も脳裏に焼き付いて離れないのだろう。

【写真】11月2連戦に向けた日本代表メンバー23人
 
「まだ理解できていない状況にある」
 
 6月16日のワールドカップ・アジア2次予選の初戦、ホームでシンガポールを相手に勝点1しか取れなかった“大失態”を、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は決して忘れていない。
 
「これは我々自身のリベンジだ」
 
 アウェー2連戦となる今回の11月シリーズで、日本はシンガポール(11月12日)、カンボジア(11月17日)と対戦する。2次予選を首位通過するためにも「勝点6」は最低限のノルマとして、約5か月前の屈辱を晴らすためにも、相手をねじ伏せるような戦いで今年最後の代表活動を締め括りたい。
 
 選ばれた23人のメンバーを見ても、指揮官の強い意志が表われている。10月シリーズでは3人のGK以外、4バックの最終ラインに8人、2ボランチ+トップ下の中盤に6人、CFとウイングの前線3枚にも6人と、各ポジションにふたりずつがセレクトされ、過去を振り返っても概ねこの割合がベースとなってきたが、今回はそのバランスを微妙に崩した。
 
 GK(3人)と中盤(6人)は変わらないが、最終ラインと前線は同数の7人を招集。DFをひとり減らし、その分、FWを増やしたのは、攻撃面(得点力)を重視したからだ。
 
 もっとも、2次予選は「ラージグループを作っている」(ハリルホジッチ監督)段階であり、選考の幅を広げる意味でも、興味のある選手を見極める必要がある。それが今回は攻撃面だったということだ。そのため、これまであまり見られなかったDFとFWの“同数”という現象が起きたとも言える。
 
 10月シリーズでは、2次予選のシリア戦で3-0の完勝を収めたとはいえ、5日後のイランとのテストマッチでは1-1と勝ち切れなかった。いまだ閉塞感が否めないハリルジャパンだが、発展途上にあるチームを完成形に近づけるために、11月シリーズでは結果を求めるとともに、攻撃面のグレードアップを実現させたい。
【GK】
◎西川周作(浦和)/○東口順昭(G大阪)/△林 彰洋(鳥栖)
 
 まずGKから見ていくと、さっそく変化が見て取れる。西川、東口は順当にメンバー入りを果たす一方、最後のひとりは六反勇治(仙台)ではなく、鳥栖の林を選出した。
 
 ハリルホジッチ政権では初招集となる林に関して、指揮官は以前より注目しており、これまでは怪我を考慮して選んでいなかった。しかし、ここ最近は安定したパフォーマンスを見せており、「直接、彼を見る機会を設けたかった」(ハリルホジッチ監督)という。
 
 六反に関しては、そのプレーレベルに問題があるわけではなく、単純に他の選手(今回は林)をテストするために外れたようだ。
 
 どのポジションにも共通して言えることだが、ハリルホジッチ監督は常に競争を求めている。林の招集もあり、またダンディー・ユナイテッドへの移籍が目前の川島永嗣(無所属)も含め、GKのポジションでも熾烈な争いが展開されつつある。
 
 それでも、なによりも結果が大事な2次予選では、実力どおりに考えれば西川がスタメンを張るはず。シンガポールに勝てば、カンボジア戦では林をテストする“勇気”があってもいいだろう。

※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=バックアッパー
【DF】
◎吉田麻也(サウサンプトン)/◎槙野智章(浦和)/○森重真人(FC東京)/△丸山祐市(FC東京)/◎酒井宏樹(ハノーファー)/◎長友佑都(インテル)/△藤春廣輝(G大阪)
 
 吉田、槙野、森重、酒井宏、長友は“常連”とも言える5人。CBの吉田を軸に、その相棒は槙野が最有力候補で、森重が三番手をキープ。10月シリーズは怪我のため未招集だった酒井宏が復帰し、ここに来てインテルで出場機会を増やしている長友のコンディションも良さそうだ。
 
 注目ポイントは、コンスタントに呼ばれていた丹羽大輝と米倉恒貴の“ガンバコンビ”が外れ、CBの丸山と左SBの藤春が選出されている点だ。
 
 丸山は、正確なフィードが持ち味。後方からの組み立てで力を発揮し、ビルドアップの向上を目指すチームにとり、貴重な戦力になるはず。左利きという特性も、戦術に広がりをもたらしてくれそうだ。
 
 藤春は、「米倉から席を奪ったと言えます」(ハリルホジッチ監督)と評価されての代表復帰。左サイドでのスピード感溢れる突破力と、そこからのセンタリングを期待されており、その優れた攻撃性能を指揮官も高く買っているようだ。
 
「今回の試合では両サイドからの質の高いセンタリングが必要になってきます」
 
 シンガポール、カンボジアとの2連戦に向け、ハリルホジッチ監督はひとつのアプローチを提示した。SBは、両サイドをハイレベルにこなす長友を筆頭に、右に酒井宏、左に藤春が配置されるはずだが、3人とも指揮官の要望に応えられるだけのクオリティは持っていると言っていい。
 
 ただ、センタリングが要となるサイドアタックを重視するなら、クラブで好調を維持し、FKも蹴れるFC東京の太田宏介という選択肢もあっても良かったと思うが……。
 
 最終ラインの先発予想は、左から長友、槙野、吉田、酒井宏。丸山をテストするなら、クラブでもチームメイトの森重と組ませるのが得策だろう。

※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=バックアッパー
【MF】
◎長谷部誠(フランクフルト)/◎山口 蛍(C大阪)/○遠藤 航(湘南)/○柏木陽介(浦和)/◎香川真司(ドルトムント)/○清武弘嗣(ハノーファー)
 
 2ボランチに関しては、長谷部と山口が“鉄板”で、ここに遠藤と柏木がどこまで食い込めるか(遠藤は右SBのバックアッパーとしても計算されている)。
 
 10月シリーズからの変化で言えば、柴崎岳(鹿島)が外れている。柴崎も六反と同じように、“他の選手も見てみたいから”という理由で選ばれなかったようだが、10月13日のイラン戦では、及第点の出来ではあったものの、強烈なインパクトを残すほどでもなかった。それが今回の選出に多少なりとも影響しているのかもしれない。
 
 前回は怪我の遠藤の代わりに、柏木が選出された感がある。そして今回は遠藤が戻ったが、「組み立てに参加してほしい選手」(ハリルホジッチ監督)としてプレーメーカーの柏木が再び選ばれて、同タイプの柴崎が外れている。
 
 指揮官から「もっとトレーニングを続けてほしい」との要望も出された柴崎は危機感を覚えるべきであると同時に、柏木はその評価を高めたと見ていい。セットプレーからの得点率を高めるために、CKのキッカーとしてもその存在は重宝されるだろう。
 
 トップ下は香川が不動。二番手はハノーファーの大黒柱として君臨する清武が控えるが、両者の実力に大きな差はない。現チームのストロングポイントのひとつであり、息の合った連係を見せる両者の同時起用も見てみたいところだ。

※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=バックアッパー
【FW】
◎本田圭佑(ミラン)/△南野拓実(ザルツブルク)/○原口元気(ヘルタ・ベルリン)/○宇佐美貴史(G大阪)/◎岡崎慎司(レスター)/○武藤嘉紀(マインツ)/△金崎夢生(鹿島)
 
 先述したとおり、前線3枚には、お約束の“ひとつのポジションにふたり”の計算が成り立つ6人ではなく、「7人」を選んだセクション。右ウイングは本田が盤石のレギュラーで、サブには若い南野がスタンバイ。左ウイングは原口と宇佐美が激しい定位置争いを繰り広げている。CFは岡崎、武藤と続き、11月シリーズ最大のサプライズが、2010年以来の代表復帰となった金崎だ。
 
 先日のナビスコカップ決勝でもハイパフォーマンスを披露した金崎の、ここ最近の活躍ぶりは別レポートで詳しくまとめているが()、CFでの起用が予想されるなか、中央だけでなくサイドに流れて攻撃の起点になれるなど、機動力に優れるだけにウイングで試してみても面白そうだ。
 
 この期待の“新戦力”を除けば、他の6人はほぼ予想どおりのメンバーと言える。10月シリーズに続いて招集された南野に関しては、代表デビューとなったイラン戦ではわずか数分のプレータイムしか与えられなかっただけに、今回は練習からも猛アピールを見せ、一定の出場時間を得て、結果を残し、ハリルジャパンにおける地位を確立させたい。
 
 また、10月31日のアウグスブルク戦でプロ初のハットトリックを達成した武藤の状態も良好のはず。逆に、岡崎はクラブレベルでは一時の勢いが薄れつつある。現在のコンディションを考慮すれば、武藤がCFで先発を飾ってもおかしくはない。
 
 いずれにせよ、シンガポールとカンボジアは、ともに引いて守りを固めてくるはず。その分厚い守備網をいかに切り崩していくか。特にシンガポール戦に関しては、“同じ失敗”は許されない。圧倒的な破壊力を見せつけて、ゴールラッシュを決めたい。

※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=バックアッパー
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)