「漂流飛行船」のJLENSシステム、米国防総省がプロジェクト凍結へ。計画発足から17年、利点示せず

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米国防総省が、統合対地攻撃巡航ミサイル防衛上空センサー網「JLENS」プログラムの凍結を決定したと複数のロサンゼルス・タイムズ紙などが伝えています。

JLENS の心臓部ともいえるのが全長74mもある飛行船型レーダー。用途の異なる2機が作られ、最高高度3300mに係留して水平線以遠から首都ワシントン DC めがけて飛来する巡航ミサイルや弾道ミサイル、無人飛行機(UAV/ドローン)などを監視する役割を担うはずでした。

 

ところが10月29日、昨年12月から3年間の予定で試験中の飛行船型レーダー1機が、45m の強風にも耐えるという係留ロープを引きちぎって漂流を始めるという珍事が発生。風に吹かれるままワシントンから北東のペンシルベニア州まで流れ、係留ロープで送電線を切って1万8000世帯を停電させた後、ヘリウムガスが抜けたのか山の向こうへと落下しました。



大きな災害や怪我人がなかったのが幸いだったものの、飛行船型レーダーが落下したペンシルベニア州ブルームズバーグでは一時的に屋外への外出禁止が通知されるなど、住民の生活に混乱を招きました。

 

JLENS プロジェクトはレイセオン社が開発を担当し、航空機よりも運用コストが安価だとして飛行船型レーダーの導入を決定しました。しかし開発には17年もの歳月を要してしまい、開発費は25億ドルに膨張、当初は多数製造される予定だった飛行船型レーダーも2機にまで減らされました。

ようやく完成した2機の飛行船型レーダーは、昨年暮れにようやくワシントン周辺の上空に投入され、まずは3年間のテスト期間ながら首都防衛の一翼を担うべく運用を開始しました。

ところが搭載するレーダーの効率はいまいちで、早期警戒管制機(AWACS)にもおよばないこと、メリットだったはずの運用コストも期待したほどではないことなどデメリットばかりが伝えられる有様。もともと JLENS 懐疑派の議員や軍関係者からも批判が高まっていました。

 

 

そんなところへ発生した今回の飛行船型レーダーの漂流事故。国防総省の Dov Schwartz は事故について「完全な調査が必要であり、それには時間がかかるだろう」とロサンゼルス・タイムズにコメントし、事実上 JLENS プロジェクトの凍結を認めました。

ちなみに JLENS プロジェクトの巨大な飛行船は、当初より戦争が始まったときに真っ先に標的にされ、レーダーシステムとして機能しなくなることが予想されました。このため2010年にはプロジェクト中止の声が高まったものの、推進派による大規模なロビー活動のため一転してプロジェクト継続が決定され、現在に至っています。

なお2010年当時、海兵隊上層部でロビー活動を指揮したとされるジェームズ・カートライトは、現在レイセオンの取締役職に就いています。