業界紙、専門誌の知られざる世界をあなたに。今回は「ねじ・ばね業界」のオピニオン・リーダー紙を紹介します。

『金属産業新聞』
創刊:1946年
発行:毎週月曜日発行
部数:1万部
読者層:ねじ・ばねメーカー、商社、周辺産業
定価:年間1万6200円
購入方法:発行元・金属産業新聞社に直接注文

 イヤリング、時計、歯のインプラント、医療器具ほかあらゆる機械、家具、車、トンネル、信号、建造物、橋、電車、船、飛行機、ロケット…。

「私たちが目にする物で“ねじ”が使われていないものって、ないんじゃないですか。たとえば車1台の中には約2万本のねじが使われています。製品の内部にあって目立たないけど、その重要性から、ねじを称して“産業の塩”という人もいます」と同紙の編集長・大槻隼一さん(34才)は語る。

 私たちの暮らしは、ねじに支えられていたのか…と思うものの、そもそも、ねじとボルトの違いがわからない。ねじってどう作られるの?

「ねじは単体ですが、ボルトはナットとペアになっています。ねじのほとんどは小さいものですが、ボルトは小さいものから、橋を支えるような巨大なものまであります。ねじもボルトも、溝を削って作るようなイメージを持つ人が多いんですが、実際は、針金をカットした後にその頭を金型に打ち込み、『-』や『+』のついたあの形を作り出します。そのあと、軸部を金型で挟んで波板の上をコロコロと転がして押しつぶすんです。金属のくずをいっさい出さない工法です」と、大槻さんは胸を張る。そんな業界の課題は何か。

「地味なこと、ですね。日本は世界トップの技術力があって9000億円市場だと言っても、人々がねじに興味を持つことはほとんどありません。しかし大事故が起きると、必ずといっていいほど“ねじが緩んでいたからだ”と、責任を問われます」

 たとえば、2012年12月に起きた笹子トンネル天井板落下事故だ。事故原因は、施工不良によりボルトの強度が不足していたこと。ボルトを固定していた接着剤の付け方などに問題があったこと。こうした問題を把握しながら対策を立てなかったこと。つまりNEXCO中日本の管理体制に問題があった、と国土交通省の事故調査・検討委員会は最終報告書をまとめている。

「ボルトは月日がたてば緩むようにできています。点検を怠れば大事故を引き起こすのは当たり前ですよ」(大槻さん)

 ところで、ボルトの点検とはどんなことをするのだろう。締まり具合を確かめるような機械があるのだろうか。大槻さんは続ける。

「たとえばハンマーによる打音検査ですね。トンネルや橋などを留めている大きなねじをハンマーを持った職人さんがコンコンと叩いて、音の違いによって緩みを見つけだすんです。みなさん、恐ろしいほどの聴覚を持っていますよ」

 鉄橋も鉄筋も、飛行機もロケットも職人さんの耳が頼りだったとは、だんだん心細くなってきた。実際のところ、奥深くの小さなねじの緩みまでは、打音検査はできず、結局、分解しないとわからないという。

 そこで大槻さんは、《未来製品 こんな“ねじ”実現する? 緩みを感知するシステム》と題した、同紙が業界にねじの未来形を示した記事を見せてくれた。記事は飛行機の整備を例に、次のように記している。

《飛行機の重用保安部品に取り付けられているボルトは、全てボルト内部に埋め込まれているチップによって部品IDで管理されており(中略)緩みを感知できるトルク感知センサーも内蔵されている。

 運行を終えて一機の飛行機が整備場に入ってきた。整備士が受信機のようなものを持ちながら各所を歩いている。右翼エンジンに近づくと受信機からアラームが鳴った。エンジン内部にある1本のボルトが緩んでいるようだ。(中略)メンテナンス部門は直ちに異常個所を把握して、増締め・交換など適正に処理。事故を未然に防ぐことができた》

「すごいっ。これができたら産業革命ですね!」

 記者が興奮して身を乗り出すと、「たぶん、そう遠くない未来には…」と、なんとも意味深な答えが返ってきた。

(取材・文/野原広子)

※女性セブン2015年11月12日号