■盛りあげよう!東京パラリンピック2020(39)

 世界4位だった日本代表が、ついに世界3強を捉えた。

 ウィルチェアーラグビーのリオパラリンピック予選を兼ねて、千葉ポートアリーナで行なわれた「三菱商事2015IWRFアジア・オセアニアチャンピオンシップ」。10月31日、オーストラリアに次ぐ予選リーグ2位の成績でリオの出場権を獲得した日本は、11月1日の決勝でオーストラリアに56-51で勝利を収め初優勝。

 2012年ロンドンパラリンピック金メダルチームで14年世界選手権王者のオーストラリアから今大会2勝するなど、リオのメダルという目標に向けて大きな自信を手にした。

 約1000人の観客が見守る中、決勝は始まった。日本のスターティングメンバーは、ハイポインター(※)の池崎大輔(3.0)、池透暢(いけ ゆきのぶ/3.0)と、ローポインター(※)の若山英史、今井友明(ともに1.0)の組み合わせ。世界ナンバーワンプレーヤーと呼ばれるオーストラリアのライリー・バット(3.5)に対し、"最強ライン"で挑む日本は、スピーディーなトランジション(攻守の切り替え)とタックルでディフェンスし、相手の体力を奪っていく。オーストラリアの攻撃を押し込むことに成功した日本は、相手のパスを切り裂きボール保有権を奪取するなど、第1ピリオドで3点をリードした。
※ 持ち点制のウィルチェアーラグビーは、コート上の4人の合計が最大8.0点というルールがある。障がいの状態が軽い選手ほど高い点数が与えられ、比較的障がいが軽い選手を「ハイポインター」、障がいが重い選手を「ローポインター」と呼ぶ

 日本は、エース池崎が相手を引きつけて高さのある池にボールをつないだり、ローポインターふたりがハイポインターをピック(相手の車いすをひっかけて止めること)し、コート全体で有利な状況をつくる活躍を見せ、リードをキープ。どちらも譲らない激しいタックルの応酬に観客も熱狂した。

 第3ピリオド、ベテラン島川慎一(3.0)を投入するも、すぐに池をコートに戻し、勝利への執着を見せた日本。しかし、第4ピリオドでオーストラリアのクリス・ボンド(3.5)に激しいプレッシャーをかけられ、1点差まで詰められてしまう。それでも、相手のミスを誘う粘り強さで乗り切り、最後まで走り続けた日本が勝利を掴んだ。

 ロンドンパラリンピック準決勝では45-59、世界選手権(デンマーク)準決勝では49-60で敗北を喫した相手。今大会の予選リーグで9年ぶりとなる勝利を掴んだ後の価値ある「2勝目」に、選手たちも充実の表情を浮かべて喜んだ。

 今大会の1週間前に参戦したワールドウィルチェアーラグビーチャレンジ(英国)ではオーストラリアに3点差まで迫り、自信を持って本大会に臨んでいた。日本はなぜ強豪に勝利できたのか。

 キャプテンの池は、「基礎を積み上げた集大成」と話す。

「個人のスキルやパフォーマンスが上がったうえで、この大会を迎えることができ、その精度が試合を重ねるごとに増していった」

 特に最強ラインのファーストセットのメンバーは、合宿や遠征でミーティングを重ねていることもあり、プランごとに10cm単位で修正している連携の精度を進化させてきた。

 スピードのある若山、頭脳派の今井という2人のローポインターも、日本チームが掲げるスローガン『タフなラグビー』を体現するかのように最後まで走り切った。

 オーストラリアのブラッド・ダボリーヘッドコーチも、「日本には素晴らしいハイポインターがいるが、(ローポインターの)彼らの活躍がなくては優勝できなかったと思うよ」と2人を称えた。

 今大会で1.0クラスの個人賞を獲得した今井は「この2勝でメダルに近づくことができた。息の合ってきたライン間の精度をさらに高めたい」と確かな手応えを口にしている。

 とはいえ、今大会のオーストラリアは、主力のローポインター2人が来日していない。「経験の浅い選手を連れてきたオーストラリアは、パラに向けてもっと強くなると感じた」と池は気を引き締める。

 また、日本の今年一番のテーマは第2、第3のラインの強化だが、勝利したオーストラリア戦2戦は、島川のほかはスターティングメンバー以外の選手に出場機会がなかった。

 リオでメダルを獲るには、オーストラリア、カナダ、アメリカの3強を崩さなければならない。

「(同じハイポインターとローポインターが主力の)オーストラリアは相性がいいけれど、カナダとアメリカは、他のラインを使わなければ勝てない」と池が語るように、ラインナップの底上げはメダルを狙う上で必要になる。

 一方、今大会7試合を戦い、合計177点を得点したエースの池崎は、ロンドンパラリンピックで4位だった悔しさを胸にトレーニングに励んできた。フィジカルを鍛えるのみならず、この1年はカナダ、アメリカ、オーストラリアの国内リーグに参戦して経験を積み、さらに全国に散る日本代表選手たちを地元北海道に呼んで合宿をするなど、日本のエースにふさわしい姿でチームを牽引している。

「これまでで一番心の底から喜んだ。でも、これがゴールではない。まだまだ過酷なことが待っていると思うので、満足せずに前進していきたい」と、池崎は先を見据えていた。

 最後に、池キャプテンが力強くこう語る。

「日本には、アジア・オセアニアチャンピオンとしてリオに出場する責任がある。今まで悔しさを糧に強くなってきたチームだから、正直怖さもあるけれど、チーム一丸となってレベルアップしていきたい。リオでは金メダルが欲しいです」

瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka