「新○○駅」。新幹線駅を中心に、JR在来線や私鉄にも存在する。もともとの中心駅と差別化するとともに、町の新しい拠点を整備する意図も込められていることが多いが、なかには名前負けしている駅も見受けられる。地元住民は疑問に思わなくても、第三者目線だと「なんか変......」というケースは少なくない。

Jタウンネットは、政令指定都市名に「新」のついた11駅をピックアップし、その格付けを行った。


なぜ上記の判定となったのか、1駅ずつ理由を説明しよう。

一応、道内3位の利用者数ですが...

トップバッターはJR千歳線の「新札幌」だ。厚別区の中心駅で1973年の開業。乗降人員は道内3位で、地下鉄東西線新さっぽろ駅に接続する。
札幌副都心の玄関口という位置づけだが、企業の進出はあまり進んでいない。札幌駅からは13キロも離れているからだ。市の中心部に近いはずと思いこみ、新札幌周辺のホテルを利用した人のあいだから「こんなに離れているなんて......」という声も。札幌唯一の水族館「サンピアザ水族館」があるのだが、正直規模は小さい。今後発展する可能性もゼロではないが、Jタウンの格付けは「C」としたい。


新札幌駅(Rsaさん撮影、Wikimedia Commonsより)

都道府県所在地以外では最多の人口を誇る川崎市。幸区にある「新川崎」は、1980年に開業した横須賀線・湘南新宿ラインの駅だ。
JR南武線鹿島田駅とのあいだに新川崎三井ビルディングとパークシティ新川崎のツインタワーが建っている。一応川崎の副都心的ポジションだが、武蔵小杉や溝の口、新百合ヶ丘ほど繁栄していない。新川崎と鹿島田は、直線で結べば300メートルくらいだが、制度上の乗換駅ではない。駅舎も残念な感じで、ポテンシャルを発揮しきれていない。若干厳しめだが評価は「C」。
新川崎駅(Nanimo5さん撮影、Wikimedia Commonsより)

次に取り上げるのは、東海道・山陽新幹線の全列車が停車する「新横浜」。
新幹線口は大いに発展しているのに対し、反対の篠原口はキャベツ畑が残っている(参照:新横浜駅の裏側はどうしてあんなに田舎なのか)。

現在は相模鉄道と東急電鉄が相互直通運転をするための連絡線「神奈川東部方面線」の建設中で、完成の暁には都内へのアクセスがさらに向上する。将来性は二重丸を付けられる。格付けは「A」。


新横浜駅(IZUMI SAKAIさん撮影、Wikimedia Commonsより)

東海地方の私鉄はターミナルに「新」をつけたがる

「鷹匠」という名称で1908年に開業したのに、1954年に変更したのが「新静岡」だ。静岡鉄道の起点駅で、目の前は駿府城跡という好立地。駅ビルの「新静岡セノバ」はユナイテッドアローズや東急ハンズ、シネコンなどが入る。
地方の中小私鉄にしては健闘しているが......1日平均の乗車人員は約1万1000人という点を重視し、格付け「C」が適当だ。


新静岡駅(Mizuki Ayaseさん撮影、Wikimedia Commonsより)

遠州鉄道は、「新浜松」と西鹿島を結ぶ全長17.8キロのローカル私鉄。JR浜松駅の隣に駅舎があって同一駅でもよさそうなのに、別の駅名を名乗る。
1日平均の乗車人員は約7500人しかない。遠鉄百貨店に連結している割に利用客が少ないのは、モータリゼーションが進んでいるからだろう。元は旭町という駅名で1927年に開業した。1953年に現在の名称に変更している。
新静岡よりワンランク落ちる。「D」が妥当だろう。


新浜松駅(Tnk3aさん撮影、Wikimedia Commonsより)

名鉄最大のターミナル駅「名鉄名古屋」は1941年に開業した地下駅だ。「あれ、『新』がついていない!?」というご指摘もあろうが、2005年1月28日まで「新名古屋」という名称だった。
1日平均の乗降人員は28万人以上もいる。しかしホームは3面2線で、列車の行き先は6方面に分かれる。日本一のカオス駅という評判で、はじめて駅を利用する人は大抵迷う。「名鉄ならぬ迷鉄」と揶揄する人もいる。

【名鉄名古屋駅】カオスな平日7時台【発車標再現】(前半)(YouTubeより)

名鉄名古屋駅はJR名古屋駅や近鉄名古屋駅と乗り換え可能。どうして「新」を付けたのか謎だが、東海地方を走る私鉄は、JRと区別するため「新○○」とすることが多いようだ。肝心の格付けは「B」。


名鉄名古屋駅(以前の名前が「新名古屋」)天然ガスさん撮影、Wikimedia Commonsより

駅のすぐ横を名滝が流れる新○○

東海道新幹線の終点・山陽新幹線の起点の「新大阪」。乗車人員は大阪駅の約8分の1にすぎないが、これは同駅で乗り換える人が多いからだ。在来線は11〜18番ホーム、新幹線は20〜27番ホームまであり、利用客で一日中ごったがえしている。コンコースでは西日本各地の土産物を購入でき、東京と大阪を往復する有名人の姿も多くみられる。遠い先の話になるが、リニア中央新幹線の終着駅になることも決まっている。
ターミナルとしての重要度はさらにアップするに違いない。最上級の格付けがふさわしく、「特A」でも低いくらいだ。


新大阪駅(Orangelunchboxさん撮影、Wikimeida Commonsより)

新大阪の隣駅の「新神戸」は、トンネルとトンネルに挟まれた、変わった場所にある。六甲山の山裾に位置し、ホームから山の木々が見える。さらに駅の下を生田川が通っていて、その上流は日本三大神滝の1つ、布引の滝がある。

布引の滝(t-mizoさん撮影、Flickrより)

JRの駅にもかかわらず在来線が直接乗り入れていないのは難点だが、神戸市営地下鉄を利用すれば三宮や元町に出られる。
駅前は高層ビルも建っている。しかし副都心かと尋ねられれば微妙なところ。ビジネスというより観光拠点の方がふさわしい。格付けは「A」。

異次元のクオリティー、新千葉

これまで紹介した8駅の開業時期はバラバラだが、いずれも新=ピカピカのイメージを損なっていない。駅または町が新しいのだ。
ところが京成電鉄千葉線の「新千葉」は、市内に11ある「○○千葉」または「千葉○○」の中で駅舎が最も古びている。昭和ノスタルジー満点な駅舎は、寝泊まりする駅乗務員が洗濯物を干してそうな、そんな印象を受ける。
1923年の開業で1日平均の乗降人員は約1600人。JR千葉駅から徒歩8分しか離れておらず、客を吸い取られているのだろうが――。格付けは最低ランクの「E」。


新千葉駅(東京特許許可局さん撮影、Wikimedia Commonsより)

新千葉と真逆なのが、2000年にオープンしたばかりの「さいたま新都心」。都心とわざわざ名乗っているだけあって駅周辺の施設は豪華だ。さいたまスーパーアリーナやコクーンシティは集客力があり、100メートルを超えるオフィスビルも複数建っている。
さらにタワーマンションも続々建設中で、さらなる発展が期待される。普通と快速しか停まらないのが残念だが、評価は「B」。


さいたま新都心駅(編集部撮影)

最後にエントリーしたのは上越新幹線の終点「新潟」。本州の日本海側で最大級のターミナルだ。これまで紹介した10駅とは歴史的背景が異なる。しかし、新潟の地名自体が「新しい潟」という意味を持つことから取り上げた。


新潟駅(21gt893sk8ao8m58rtr0さん撮影、Wikimedia Commonsより)

上の写真は万代口の駅舎。新千葉ほどひどくはないが昭和感が漂う。しかし現在進行中の在来線高架工事が完成すれば、どんな「新○○」にも負けない、最先端の駅がお目見えする。バスターミナルが整備され、駅直結の歩行者デッキは人の流れを大きく変える可能性を秘める。
将来「A」を取得する可能性は十分あるが、現状は「B」。

【新潟シティチャンネル】新潟駅周辺整備の概要(YouTubeより)

よくよく考えれば、最初にできた駅の一方は「新橋」だった。日本の鉄道の駅名に「新」はつきものなのかも。