東芝の不正会計問題が新たな展開を見せている。10月26日、東芝は西田厚聡氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏ら歴代3社長を含む旧経営陣を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす意向を示した。

 最終判断は11月9日と見られている。その前日(8日)に、不正会計に関与した経営陣の責任などを検証する「役員責任調査委員会」の報告書が提出されるからだ。東芝関係者が話す。

「同委員会は2009年以降の役員経験者計98人を調査対象にしていますが、不正会計に関して誰にどの程度の責任があるかは報告書を待たないと分からない。内容によっては、賠償請求の対象者や金額が変わることも考えられます」

 11月9日という期日には、別の理由もある。9月8日、東芝の個人株主が歴代役員28人を相手に10億円の損害賠償請求を提訴するよう求める提訴請求書を東芝側に送付した。受領日から60日以内に会社が提訴しなければ、株主代表訴訟を起こす権限が株主側に付与される(会社法847条3項)。そのリミットも11月9日なのだ。

 そうした事情があるにせよ、報告書提出前に、東芝が旧経営陣に賠償請求する方針を公表した理由は何だったのか。企業法務に詳しい弁護士はこう分析する。

「東芝の不正会計による利益の水増し総額は2248億円(税引き前損益ベース)に及び、株主代表訴訟になれば、賠償請求額は数十億〜数百億円に上る。

 そんな巨額を請求されれば、元上司らの生活を奪うことになりかねない。東芝が提訴すれば、請求額に手心を加えることも可能になる。とりあえず株主や世間を納得させるため最初の請求額は高くしておいて、後の和解交渉で、旧経営陣が生活を守りつつ支払い可能な額まで減らすこともできる。旧経営陣を“守る”狙いがあるのではないか」

 経済ジャーナリストの磯山友幸氏は別の見方をする。

「一連の不正会計問題は歴代トップら“個人の犯罪”として、会社を守る意図があるのではないでしょうか。仮に今回の問題が組織ぐるみの不正だと認定されれば、上場廃止なども考えられる。証券取引等監視委員会の調査も今後本格化していくと見られており、東芝としては“組織的な不正行為”だったとの心証は是が非でも回避したい」

※週刊ポスト2015年11月13日号