安倍政権による経済政策、アベノミクス「新3本の矢」に批判が集まっている。しかし、経済学者で投資家の小幡績氏は評価すべきだという。いったい、どこが評価すべき内容なのか、小幡氏が解説する。

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 安倍政権が新内閣発足後に発表した、「新3本の矢」の評判がとても悪いです。なぜなら、中身が全くないからです。前の3本の矢は、賛否はありますが、迫力がありました。その迫力は、すべて金融緩和によるものでしたが、それでもインパクトがありましたし、実際に、良くも悪くも世の中は変わりました。

「新3本の矢」はインパクトがなく、中身もありません。でも、それはとても健全なことなのです。なぜなら、もはや政府の経済政策でできることは何もないからで、それを正直に告白したのが「新3本の矢」だといえます。

 今回の第2の矢、第3の矢は、「子育て支援」と「社会保障」です。これは誰も反対しない重要な政策ですが、経済政策ではありません。社会政策です。

 政府が社会の問題を解決して良い社会になれば、その結果、人々が社会の中で力を発揮して、自然と良い経済になってきます。だから、安倍政権が経済政策を諦めて社会政策に戻ることは非常に正しいことで、健全です。

「もう景気対策、成長戦略はできない」という告白は社会にとって望ましいことです。だから、新3本の矢は、まやかしの元祖3本の矢よりも優れているといえます。

 新3本の矢は、経済についても触れています。第1の矢は「強い経済」です。ただ、これは願望です。ヴィジョンとか目標といっても良いですが、強い経済が悪いわけはないので、具体的な中身がなくとも、間違ったことはいっていません。だから、新3本の矢は素晴らしいのです。

※週刊ポスト2015年11月13日号