今季スタートから優勝争いを続けるケビン・ナ(Photo by Stanley ChouGetty Images)

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 マレーシアで開催されたCIMBクラシックの最終日。最終組から2組前で回ったアダム・スコットが「63」の猛追をかけ、優勝あるいはプレーオフのチャンスをクラブハウスで悠然と待っていた。
松山英樹は一時首位に並ぶも猛追及ばず…
 結果的にスコットは初優勝を飾ったジャスティン・トーマスから1打差の2位に終わったが、「こんなにいいプレーができたのは久しぶりだ」と満面の笑顔を見せた。来年1月1日からはアンカリングが禁止されるため、スコットはようやくロングパターをレギュラーパターに持ち替えて、不慣れなクロウグリップを試し、手ごたえを得た様子だ。
 「老犬も、まだまだやれるところを見せていきたい」
 米ツアーきってのハンサムボーイに自らを「老犬」と言わしめたもの。それは、もちろん昨今の若者たちの大躍進だ。
 昨季終盤から今日までを振り返ってみると、プレーオフ第1戦のバークレーズを制したのは27歳のジェイソン・デイ。次なるドイツ銀行選手権で優勝したのは26歳のリッキー・ファウラー。BMW選手権は再びデイが勝利を挙げ、最終戦のツアー選手権を制して総合優勝に輝いたのは22歳のジョーダン・スピースだった。
 そして今季。開幕第1戦のフライズコム・オープンでは23歳のルーキー、エミリアーノ・グリッロがデビュー戦で初優勝。開幕第2戦のシュライナーズホスピタル・オープンでは、これまたルーキーの23歳、スマイリー・カウフマンが初優勝を飾り、そして今大会では22歳のトーマスが初勝利。
 ここ7試合の優勝者がすべて20歳代で、しかも26歳のファウラーや27歳のデイがなにやら年上に見えるぐらいだから、35歳のスコットが自らを「老犬」と言いたくなるのも無理はない。
 だが、今大会にはスコット以外にも、必死の奮闘を見せていた「老犬」がいた。最後の最後までトーマスと勝利を競い合った32歳のケビン・ナだ。
 20歳代の優勝が続いているここ最近の数試合で、ナは毎回のように奮闘を続ける「老犬」だ。今季は開幕第1戦でグリッロにプレーオフで敗れて2位になり、第2戦はカウフマンに敗れて2位、そして今大会は3位に甘んじた。ナは昨年の今大会でも2位だった。松山英樹とプレーオフを戦った2014年のメモリアル・トーナメントは日本のファンもよく覚えていると思う。
 15年のキャリアにおいて2位が8回、3位が7回。それほどたくさん優勝争いをしてきたというのに、ナが飾った優勝は2011年のシュライナーズホスピタル・オープンの1勝のみだ。
 そんなナを眺めていて感心させられるのは、彼が常にグッドルーザーであること。松山に敗れたメモリアルのときは、18番グリーンから去っていくナと、なだれ込んでいく私たち日本メディアがすれ違う格好になった。そのときナは、すれ違いざまに声をかけてきた。
 「ジャパンのみんなにとって、いい結果になったね。おめでとう」
 咄嗟に「次はきっとあなたの番よ」と彼に言った。その後、「次」は何度も訪れそうになりながら、いつもぎりぎりで敗れ、彼の番はいまだに到来していない。しかし、ナはどんなに悔しい負け方であっても、いつも勝者の目をまっすぐに見詰めながら右手を差し出し、「おめでとう」を口にする。そんなナの姿を今季はすでに3週連続で目にした。
 スイングイップスに陥ったり、何度もワッグルする奇病に襲われたり。そのせいでスロープレーヤーのレッテルも貼られたが、そのたびにナは毅然と立ち向かい、すべてを克服してきた。
 「前向きに考えようと思う。勝てなかったけど今は僕のキャリアにおいてベストな時期」低迷した苦悩の日々を思えば、たとえ勝てずとも毎週のように優勝争いを演じている今は最高のひとときだと語ったナ。
 そうだとしても、ずっとグッドルーザーであり続けてきたこの「老犬」の勝利を願わずにはいられない。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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