フィギュアスケートの2015〜16シーズンが、先週のグランプリシリーズ(GP)第1戦スケートアメリカで始まった。日本勢はGP初戦から表彰台に乗る活躍を見せている。男子では本格シニアデビューを飾った世界ジュニア王者の宇野昌磨が、堂々の銀メダルを獲得。女子では全日本女王の宮原知子がジャンプのミスを出しながらも3位に食い込み、表彰台に立った。

 シーズン開幕前、今季のルールについてのいくつかの注目点を、国際審判員の吉岡伸彦氏に聞いた。結論からいうと、平昌五輪の3シーズン前となる今季、大きなルール変更はなかった。吉岡氏は「ステップシークエンスのレベル認定などの細かい部分では少し変更されたところはありますが、観客として見る側からすれば大きな変更はありませんでした」と、言う。

 ではそのステップシークエンスはどのようなレベル認定になったのか。

「これまではターンとステップは別々に数えていました。例えばレベル1ならターンが5個でステップが2個ないといけないとか、レベル2ならターンが7個でステップが4個ないといけないというものでした。それが今季からは、ターンとステップを一緒くたにして、比較的簡単なものは数えないことになりました。

 難しいターン(ツィズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー、スリー・ターン)と難しいステップ(トウ・ステップ、シャッセ、モホーク、チョクトウ、クロスロール、エッジの変更)はそれぞれ6種類。レベル1では5個入ればいいとか、レベル2であれば7個入っていればいいということになりました(ちなみにレベル3は9個。レベル4は11個に加え、5種類のターンおよびステップは、それぞれ右左の両方向に1回ずつ行なわれなければならなくなった)。

 また、クラスターという3連続の難しいターンがあります。今までは難しいターンであれば2回とも右足でも構わなかったものが、レベル4に関しては、右と左の両方で行なわなければいけなくなりました。片足だけだった選手がレベル4を取るためには両足でやらなければいけなくなったというわけです。

 これまで多くの選手が、クラスターはちょっと失敗すると認定されなくてレベルがすぐに落ちてしまうので、保険を掛ける意味で、2回でいいところを3回やっていました。1回失敗しても残りの2回でレベルを取れればよかったからです。それが今季は、右・右・左で3回入れても、最後の左で失敗してしまったら右・右しか残らない。レベル4を取るための保険として使えなくなったことから、少し厳しくなったように思います」

 これまでもステップで最高のレベル4を取ることは簡単なことではなかったが、今季からレベル4を取るのはさらに難しくなる可能性が高くなったようだ。事実、スケートアメリカでメダル争いをした上位選手で、SP(ショートプログラム)とフリーともにステップでレベル4を取った選手は女子ではグレイシー・ゴールド(米国)、男子ではジェイソン・ブラウン(米国)だけだった。宇野は両方ともレベル3、宮原はSPでレベル3、フリーではレベル2しか取れておらず、課題を残した。

 ステップ以外のジャンプやスピンについてのルールはほとんど変わっていないが、ジャンプの基礎点表には若干の変更があった。

 4回転トーループと4回転サルコーでのアンダーローテーションは、昨季までは0.7掛けが、今季からは0.8掛けとなった。例えば、基礎点が10.3点の4回転トーループでアンダーがつくと、昨季は7.2点だったのが、今季は8.0点になる。一方、GOE(出来栄え点)は、点数がより大きく適用されるようになった。これまでジャンプの転倒はマイナス3点だったのが、4点減点されるようになったのだ。

 このルール変更は、羽生結弦ら4回転ジャンパーの選択にどのような影響を与えるのか。

「なぜこのような配点にしたのか、まだ意図がよく分からないところもあります。4回転を奨励するという意味合いか、GOEの減点が大きくなっているので差し引きゼロということなのか。それでもこの点数の変化によって、選手が跳ぼうとか跳ばないという判断をすることにはならないと思います。そこまで大きな変更ではないですから」

 ただスケートアメリカの結果を見ると、やはり得点源の4回転で転倒などの失敗によるGOEでのマイナス4はかなりの打撃となっていた。特にSPで失敗すると、成功させた選手との差を広げるので、フリーでの挽回が難しくなってしまう。

 宇野はSPで後半の4回転を転倒、5点も減点されて4位発進となった。フリーではすべてのジャンプをミスなく成功させて1位だったが、SPでの出遅れが響いて総合2位に留まった。また、昨季の四大陸王者で世界選手権銅メダルのデニス・テン(カザフスタン)はSP、フリーともに4回転で失敗したことが大きく響いて、総合9位(SP6位、フリー11位)に終わっている。

 4回転は成功させれば大きな武器になり、転倒すれば大きく減点される、ハイリスクハイリターンの大技になったのは間違いない。今回の点数配分の変更により、より緊張感のあるジャンプになったといえるのではないだろうか。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha