賄賂にも目もくれず、規律にも囚われずに悪を征するハードボイルド刑事、ハリー・キャラハンが主人公の『ダーティハリー』シリーズには、「相棒が災難に遭う」という"お約束"があります。相棒を不幸にするハリーのこの特性、プロレスにも通じる事象だったりするのです。

今回お題にする『ダーティハリー5』(1988)はシリーズの最終作にして、シリーズワーストの声も多い問題作。

 今も現役として奮闘するハリーは、巷で噂される、複数の有名人リストから誰が何番目に死ぬかを当てる闇賭博「デッド・プール」の標的のひとりにされてもお構いなし。
 一方で、ホラー映画の主演を務めるロックスターが殺された現場で、女性TVリポーターと一悶着起こしたハリーは、署長命令によりマスコミに取材協力するハメに。そうこうする内にデッド・プール殺人が連続発生。しかし、別人を犯人として追いかけるマスコミや、自分の存在に気付かないハリーに業を煮やした真犯人は......

 言わずと知れたC・イーストウッドの出世作である1作目から約17年。型破りな刑事だったハリーも、定年がチラつくお年頃。舌鋒鋭かった毒舌も単なるボヤキに聞こえてしまうそのマイルド感は、時の流れの無常さを感じさせてくれます。

 過去作のようにハリーが力技で悪を追い詰める形ではないのも不評の理由。あのハリー・キャラハンがラジコン爆弾カーとのカーチェイスに戦々恐々って......迫ってくる前にマグナム44でブチ抜きなさいよ!とツッコミたくなるのは必定です。

 本作公開前年には『ビバリーヒルズ・コップ2』『リーサル・ウェポン』といったコミカルな警察モノがヒットしていたことも影響があるのか、セルフパロディに走るシーンもチラホラ。
 中でも本作で相棒となるクアンに「オレの相棒は皆、死んでる(1作目の相棒は転職し存命)。防弾チョッキ、用意しとけ」とハリー自らのたまうシーンは象徴的。実際、クアンさんも準備(魔除けの呪詛を身体に描写)はしていたんですが、酷い目に遭います。

 プロレスにおいても、ベビーフェイス選手の相棒が抗争相手にボコられ、それを機にフェイスの選手が奮起する、というお約束が存在します。近年の例では、WWEのザック・ライダーの災難がそれ。

 当時、YouTube番組をキッカケにネットでの人気者(今でいうYouTuber?)となったライダーは、トップフェイスであるジョン・シナの親友という設定で大きな試合に出るようになります。しかし、シナの抗争相手だったケインによって車椅子生活を送る羽目となり、その状態でさらに襲われ病院送りに。実際のケガも重なり出場機会は激減し、ネットでの盛り上がりも尻すぼみ。以来、3年間ジョバーのままという不幸な身の上になっています(殉職よりマシ?)。

 そんなワケで『ダーティハリー』シリーズにしてはアレな本作ですが、作中の映画監督役に若き日のリーアム・ニーソン、同じくヤク中のロックスターにジム・キャリー、ついでにロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼス」のメンバーもカメオ出演しており、見所は意外と多し。シリーズに思い入れがなかったり、初見の方や珍作愛好家なら楽しめるかもしれない作品でございます。筆者もこれが一番好きです。

(文/シングウヤスアキ)