危険ドラッグには麻薬の成分が含まれていることも (shutterstock.com)

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 行政機関や警察などによる「ヘッドショップ」の取り締まり強化が功を奏して、最近、危険ドラッグに手を染める者は減少したかのように見える。しかし、危険ドラッグの販売は、インターネットによるものがが主流となりはじめている。化学構造式の一部を変換することによって、より強力な危険ドラッグが作成され、当局の規制を逃れ被害を拡大させたように、第2の「いたちごっこ」と称される事態が生じているのだ。

 危険ドラッグは、国内産のもとより、諸外国の得体の知れぬ成分が含まれている可能性が大きい商品までもが、簡単に入手できる状況になっている。それらの危険ドラッグが、特に若年者間で普及し、大きな身体的、精神的な被害を及ぼしている。

 以前、本稿で報告したように、その成分中には麻薬も含まれていることがある。商品に含まれている麻薬などの成分を知ることなく常習的に使用し、ついには人格崩壊、多臓器障害、そして突然死などの悲劇を招くことにもなる。 

危険ドラッグ対策のため科捜研と医療機関の総合的な協力を

 麻薬および向精神薬取締法によると「医師の診察の結果受診者が麻薬中毒患者であると診断したときには、すみやかにその者の氏名、住所、及び性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない」を定められている。

 一般に麻薬とは、コカイン、ヘロイン、モルヒネ、LSD、MDMA、阿片、大麻などが該当するが、危険ドラッグには、これらの成分と化学構造式が極めて類似し、より有害性の強い成分が含まれていることがある。また、依存性が強く、即時に致死的効果を呈する成分も存在することもある。
 危険ドラッグ使用患者のトリアージ(尿などを検査して麻薬が含まれているかの検査法)を行った結果、陽性であり、症状が重症かつ危険ドラッグ依存性の強い可能性のあると判断した患者(複数回、長期間の使用者)に対しては、医師が警察や行政機関に通報すべきではなかろうか。 
 
 医師が危険ドラッグ患者を警察や行政機関に通報する主な目的は、危険ドラッグに関する捜査に役立てることよりもさることながら、都道府県の薬務課職員(麻薬取締員)が患者と面会して調査を行うことで、治療や保護措置なといった患者の今後の適切な方向性に役立てることができることが大きい。また、自傷や他害の恐れの強い疑いのある患者に対しては、さらなる障害や災害を防ぐことにもなろう。患者と社会にとってより良い環境を作り出すことになる。 

 警察が介在することにより、危険ドラッグや患者の尿、血液から、その成分を科学捜査研究所(科捜研)でさらに詳しく分析することができるようにもなる。鑑定結果を集積し、患者の臨床症状とも照合して、危険ドラッグに対する今後の臨床的、社会的な対応に役立てることが可能であろう。

 しかし残念ながら、科捜研での分析結果は、捜査上の極秘事項として担当医には伝達されるケースはほとんどない。科捜研と医療機関の患者を中心とした総合的な協力で、より良い危険ドラッグへの対策が打ち出されることを期待する。 

横山隆(よこやま・たかし) 
札幌中央病院腎臓内科・透析センター長、日本中毒学会評議員(同学会クリニカルトキシコロジスト)、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医 

1977年札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。 
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。