乳がんは、乳房にある乳腺(母乳を作る器官と母乳を運ぶ管)に発症する悪性腫瘍である。しかし、専門家によれば、乳がんは自分で見つけられる可能性が高く、早期に発見すれば治る率も高いという。
 だが一方で、2004年から乳がん(上皮がんを含む)罹患者は5万人を超えている(国立がんセンター・がん対策情報センター調べ)。女性が乳がんになる確率は14人に1人とされ、死亡数も年々増える傾向にある。
 また、乳がんにかかる日本人女性は、40〜50歳代に多く、最もリスクが高いのは50歳前後とされるが、最近は20代で発症するケースも増えている。出産経験のない人や初潮年齢が早い人、閉経年齢が遅かった人などが、乳がんに比較的かかりやすいとされるが、もちろん100%の統計ではないので、乳がんの危険性は幅広く存在すると認識した方がよさそうだ。

 東京都多摩総合医療センター・呼吸器腫瘍内科の外来担当医は言う。
 「乳腺密度が高い人はがんを見つけづらく、見逃してしまう可能性が高いと言われます。そのため米国の過半数の州では、がんが見つかりにくいタイプの人には、マンモグラフィー以外の検査も推奨するように法律で義務付けています」

 もう一つ、乳がんは自分で触って「しこり」を確認できるとされている。定期的に自己触診すれば早期発見が可能であり、死亡率の低減につながるとして、30年以上前から日本を含む世界中で指導されている。
 手のひらと5本の指を使う平手触診、人さし指と中指、薬指の腹で乳房の表面全体を軽く撫でて、しこりがないかをチェックする指腹法など、さまざまなチェック法が指導されている。

 しかし、この自己触診だけでは、乳がんの死亡率は減らないという。前出の外来担当医は、自己触診についてこう話す。
 「たとえ定期的に自己触診を行っても、乳がんによる死亡率は減少しないという結果が報告されています。自己触診して見つかるがんは、その多くが2センチ程度の大きさで、早期とはいっても治療成績に差が出ない時期。自己触診だけに取り組んでも、効果は期待できない。夫が協力してしこりを見つけようとしても同じことです」

 乳房の自己触診について、こんなデータがある。中国・上海市で、乳房自己触診の無作為化大規模試験が行われ、世界的に注目された。中国の女性工場労働者約27万人を対象に、自己触診を続けたグループと行わなかったグループに分けて、10年以上にわたって追跡調査をした。
 結果は、乳がんによる死亡率はどちらも変わらず、乳がんと診断されたときの進行度も同じだった。また、自己触診を指導しても早期発見にはつながらないことも分かった。
 「かつては、自己触診が有効かどうかに関するしっかりとした調査が行われていなかったため、日本では『がんは早期発見した方がいいに決まっている。とにかく自分で見つけましょう』と喧伝されていました。しかし、海外の大規模研究の結果を受けて、今ではそこまで勧めるケースは少なくなっています」(乳がん検診の専門家)

 右乳房の全摘出手術受けた北斗は、詳細な検査で2センチを超えるがんが見つかった。しかし、会見では「指に触れて分かるしこりは自分では感じず、異変を感じたときは、他の病気を疑いました」と話している
 乳房の定期的な自己触診ついて、米国では「死亡率の低減効果がない」とされており、推奨グレードは低い。ただ、自己触診は乳がんに対する意識を高め、検診に行く機会を増やし、早期発見につなげるという意味はあるだろう。