朝ドラ「あさが来た」
(NHK 月〜土 朝8時〜)10月30日(金)放送。第5週「お姉ちゃんに笑顔を」第29話より。原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:新田真三


29話は、こんな話


商いに夢中で、石炭に興味津々のあさ(波瑠)だが、妻としての感性も失ってはいなかった。自分が雑に縫った新次郎(玉木宏)の着物の縫い目が綺麗に直っていることを問いつめ、そのひとのところに連れていってもらう。
すると、その相手は・・・はつ(宮崎あおい/さきは大きいに立)だった。
こうして姉妹はようやく再会を果たす。

縫い物がつないだ再会


縫い物が、27、28話といやに強調されていると思ったら、29話でじつに重要な役割を果たした。

あさとはつを会わせてあげたいと思いながら、はつから自分の居所をあさに教えないでほしいと頼まれていた新次郎は、着物を繕い直した相手に会わせるという大義名分ができて、晴れてふたりを再会させることに成功。

これは、あさに対して会わせる顔がないと思っているはつにとっても、好都合だ。
「あないな縫い目ではあきまへんな」と、あさよりも縫い物が巧いという点において面目が立った。

どんなにおとなしく、気を遣う性分とはいえ、ほどこしは請けないと頑とした姿勢は揺るがないはつだ。何もかも妹に負けている状況では、なかなか素直になれやしない。

さらに、新次郎が繕い物の仕事を世話していて、そのひとつがあさが嫉妬した着物の繕いだったこともわかる。
縫い物という口実によって、すべて丸く収まる仕組みで、朝からすこぶる気分が良くなった。

気持ちをどストレートにすべて台詞で語って済ますことなく、登場人物の複雑な気持ちが生む行動の連鎖によって話が進む。この手間のかけ方に見応えがある。縫い物エピソードはその好例だ。

商売人のドラマなので、どうやって人の気持ちを動かすか、その駆け引きは今後重要になっていくはず。そのベースが既にそこここに準備されているようにも感じる。

もっとも、あさは、はつのプライドや負い目を慮る余裕がまだなく、自分が何かできたはずとわいわい騒ぐばかりではあって、今回は旦那さまや偶然の力で、ことなきを得たというところ。

お姉ちゃんの心知らず、というところが、またまたドラマには効いてくる。視聴者は、はつはあさと自分の運命の行き違いを知っているから、はつの忍耐強さや優しさを思って、毎日心揺れるのだ。

28話は、新次郎と惣兵衛(柄本佑)のツーショットで、29話はあさとはつのツーショット。そして、妻たちを見つめる旦那さまふたり。「白蛇はん」から「黒蛇はん」になった惣兵衛がきゅうりを割って新次郎に半分渡すところに、ふたりが同志のようになっているのを感じさせてくすりとなる。
(木俣冬)

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