衝撃!AKB48「ハロウィン・ナイト」はハロウィンの歌じゃなかった

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きょう10月31日はハロウィン。
ここ数年で、日本にもこの行事が一気に定着した感がある。10月ともなると街で仮装をしている人をやたらと見かけるようになったし、今年はアーティストやアイドルがこぞってハロウィンソングをリリースしている。

昨日放送の「ミュージックステーション」(テレビ朝日)でも、きゃりーぱみゅぱみゅの「Crazy Party Night〜ぱんぷきんの逆襲〜」をトップバッターに、私立恵比寿中学が「スーパーヒーロー」、でんぱ組.incが「永久ゾンビーナ」、そしてAKB48が「ハロウィン・ナイト」をそれぞれ披露していた。


「ハロウィン・ナイト」、じつはハロウィンはあとづけだった!?


「ハロウィン・ナイト」は、今年6月に行なわれたAKB48グループの「選抜総選挙」で上位16位に入ったメンバーによるシングル曲だ。その準備は総選挙前より進められており、作曲家の井上ヨシマサは開票イベント前日までに9曲をつくって、作詞家で48グループの総合プロデューサーの秋元康に送ったと、その著書『神曲ができるまで』(双葉社)のなかで明かしている。

しかし、総選挙で指原莉乃が1位になると、井上は秋元より「指原がセンターだから、みんなで踊れるダンス曲がいい」と新たな注文を受けた。先の9曲は事実上ボツにされたことになる。ここで井上は「70年代ディスコ」調というリクエストにがぜんやる気を出したとはいえ、サビのメロディがなかなか決まらない。

じつは最初から良いメロディはできていた。それが最終的に「ハロウィン・ナイト」のサビとなるのだが、井上は「もっとイケイケにできるんじゃないか」と思い、メロディの変更を繰り返しては、自分を追い込んでしまったのだった。

さらにいえば、ハロウィンをテーマにするということも、曲の制作途中で決まったことだというから驚く。「ハロウィン」の歌詞が例のサビのどこにハマるかについては、秋元と何度も議論したという。

井上がAKB48に楽曲を提供するようになったのは、2005年にグループが結成され、秋葉原の劇場で公演が始まったときからだ。それ以来、秋元の言うことに「NO」は言わないと決めているという。ただし、それはあくまで向こうの注文を断らないようにしようという意味であって、秋元がやっていることに対しては「こっちのほうがいいんじゃないですか?」と言うことに躊躇はない。だからこそ議論も生まれるのだ。

朝ドラ主題歌をうたうあのメンバーのアーティスト性にいち早く気づく


井上ヨシマサは中学時代にYMOのコピーバンド、コスミック・インベンションの一員としてデビューしてからというもの、ソロやユニットとして活動する一方でアイドルなどに楽曲の提供を続けてきた。『神曲ができるまで』では、そこからさらにAKB48と出会って以降、現在にいたるまでが、楽曲制作のエピソードを交えて語られている。


その曲制作にまつわる話が、48グループのファンとしてはいちいち面白い。たとえば、「RIVER」の制作にあたっては、電話に出たくなくなるほど秋元から細かい指示を受けたという。「Everyday、カチューシャ」でも秋元に何度もダメを出された末、どうにか最終仕上げのミックスダウンにこぎつけた。その作業のためパソコンのエンターキーを押した瞬間、東日本大震災が起こったという話もすごい。

あるいは「涙サプライズ!」では、間奏に「Happy birthday to you」のメロディを使おうとしたところ、秋元のマネージャーから著作権料が発生するからと止められた。井上は悩んだあげく代わりの間奏を2小節分つくったのだが、その直後、先のマネージャーに「あらためて調べたら、先週、『Happy birthday to you』の著作権が切れていた」と知らされ、当初の予定どおりあのメロディを使うことができたという。

なお、前出の「Everyday、カチューシャ」では、NMB48から山本彩が渡辺美優紀とともに初めてシングル選抜メンバーに選ばれている。このとき山本の歌を聴いた井上は、その声や歌い方にアーティスト性を感じ、サウンドディレクターに「この部分を歌ってる山本さんって誰? めちゃめちゃよいね」と話したという。現在放送中のNHKの朝ドラ「あさが来た」の主題歌「365日の紙飛行機」(この曲は井上の作品ではないが)の出だしで伸びやかな歌声を披露しているのが、まさにその山本だ。

山本彩にかぎらず、井上は常にメンバーの声や歌い方に注目しているようだ。そのことは、次の記述からもうかがえる。

《ガールズポップのすごいところは、あの声があるとどんな曲でもポップに聴こえちゃうこと。AKB48はどんな変わった曲に挑戦しても、ミックスしてみるとAKB48になってくれるんですよ》

かつて井上は、映画「嫌われ松子の一生」の劇中曲として「アイドルっぽい曲」を依頼されたことがあった。しかしこのとき彼は、アイドルをアイドルとして考えないスタンスがすごく強い時期だった。それでも自分なりのアイドルソングをつくって提出したのだが、先方のイメージと違ったのか戻ってきてしまい、結局この仕事は断ったという。

先の言葉は、井上がその後AKB48で試行錯誤を重ねた末に導き出した結論ともいえる。ガールズポップは、アイドルソングは、彼女たちの声さえあればどんな冒険をしてもポップになりうる。僕らファンがアイドルソングを聴き続ける理由も、きっとそこにあるに違いない。
(近藤正高)