防止策は“未来カー”に? Syda Productions/PIXTA(ピクスタ)

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 10月28日、宮崎県宮崎市の歩道に軽自動車が乗り上げて暴走し、歩行者など6名を次々とはねて2名が死亡する痛ましい事故が起きた。運転していたのは、そこから約100kmも離れた鹿児島県日置市に住む70代男性だった。

 テレビや新聞などの報道によると、男性は2日前まで認知症で入院していたとの情報もあり、既往症と事故の関連が今後の捜査の焦点となっていくだろう。

 認知症あるいは精神疾患の既往歴のあるドライバーの暴走事故が、ここ数年で目立つ。今年8月には、東京・池袋でてんかんの既往症をもつ40代の男性医師が駅前を暴走し5人の死傷者を出す事故を起こした。2011年4月には、栃木県鹿沼市でクレーンを運転中の20代男性がてんかんの発作を起こし、登校中の小学生の列に突っ込み児童6人が死亡した。

 また、高齢者による高速道路の逆走や、アクセルとブレーキの踏み間違えによる事故は、頻繁に報道されている。警察庁のまとめによれば、高速道の逆走は2014年1年間で224件起きており、そのうち27件が認知症によるものだという。

道交法の改正などによる抑止策には限界?

 なぜ、このような暴走事故は防げないのか。運転者とクルマの両面から考えてみよう。

 まず運転者は、今年6月に道路交通法が改正され、「認知機能検査」が強化された(施行は2年以内)。75歳以上のドライバーには、3年ごとの運転免許更新時に同検査が実施される。

 これまでは「認知症の恐れがある」(1分類)と判断されても違反がなければ医師の診断は不要だった。だが改正法では、交通違反の有無にかかわらず受診が義務付けられた。

 一方、てんかんや統合失調症に関しては、免許の取得や更新時に病状を虚偽申告した場合の罰則が設けられている(2014年6月1日施行の道路交通法改正)。

 日本てんかん協会でも、「大型免許と第2種免許の取得は控えて」「病状が安定し、運転免許の取得(更新)の際には主治医に相談を」「免許の取得(更新)の際には、正しく病状を申告して」と呼びかけている。

 警察庁は、これらの法の網で危険性のある運転者を「乗らせない」方向で進めているが、完全に防ぐことは困難だ。疾患による差別問題や人権と絡むため、法の上からの抑止策は現時点では難しい。

東京モーターショーの"未来カー"の安全性に注目

 一方、クルマ側からの事故抑止策は、新しい方向性が見えきた。「第44回東京モーターショー2015」(一般公開10月30日〜11月8日、東京ビッグサイト)では、各メーカーが「自動運転車」を出展し、安全性にクローズアップしているのが印象的だ。

 日産自動車は、自動運転車をイメージしたコンセプトカー「IDSコンセプト」を出展。"ハンドルを収納"し、運転を完全にクルマに委ねる「パイロットドライブモード」では、人工知能が状況を把握・判断し、乗員や歩行者の安全を守りながら自動運転を行う。2020年以降の実用化を目指しているという。

 日産は「ゼロ・フェイタリティ」(日産車が関わる交通事故の死亡・重傷者数をゼロにする)を企業ビジョンに掲げ、国内メーカーのなかでも安全性向上に力を注いでいる。

 富士重工業は、すでに現行車にも搭載している独自の運転支援システム「アイサイト」の進化バージョンを発表。この進化版を載せた「スバル・ヴィジヴ・フューチャー・コンセプト」を出展した。

 「アイサイト」には、AT誤発進抑制制御システムも搭載されており、衝突事故防止とともに駐車場での事故防止を想定している。

「クルマがなくても快適に生活」を行政や地域の支援で実現を

 ただし、クルマの自動運転技術は始まったばかり。これらの暴走防止機能を搭載して市販されるまでには、まだまだ時間がかかる。また、先端技術を搭載したモデルは高額になることが予想され、国民の多くにいきわたるには時間がかかるだろう。

 認知症など危険な可能性がある場合は、家族による「乗らせない」抑止策が必要だ。しかし現実は、交通手段に乏しく、クルマがなければ生活できない地域やさまざまな事情がある。

 日本は今後、独居高齢者がさらに増えると予測されている。「クルマがなくても大丈夫」という環境の醸成には、地域や行政によるきめ細やかな支援体制が不可欠だ。ひいては、それが社会全体の安全につながる。
(文=編集部)