ハリルホジッチA代表監督も視察した鳥栖戦で、浅野は2ゴールの活躍。FWのレギュラー争いで一歩前進した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 佐賀キャンプではこれまでベースとしてきた4-2-3-1ではなく、4-4-2を実戦2試合で採用。2トップは組み合わせによっては、一方がややポジションを下げ、セカンドストライカー(トップ下)的に動く形も見られた。

【U-22日本代表PHOTO】練習試合 対 鳥栖
 
 FWはこれまで、14年のチーム発足時から鈴木武蔵がファーストチョイスとして君臨してきたが、今季は新潟で出場機会を失い、移籍先の水戸でも故障で1か月以上実戦から離れており、エースの立場は揺らぎ始めている。
 
 そんななか、今回レギュラー奪取に向けてアピールに成功したのが浅野拓磨だ。左足に張りを覚えて10月27日の福岡大戦は回避したが、自ら「アピールの場」と位置付けた鳥栖戦では、2ゴールときっちり結果を残した。スピードは同世代でも群を抜くのに加え、クラブでは優勝争いを演じ、A代表も経験して勝負強さにも磨きがかかってきた。手倉森ジャパンの実績では鈴木に後れを取るとはいえ、今の勢いなら“下剋上”を起こしても不思議はないだろう。
 
 福岡大戦では1本目に前田直輝と中島翔哉(途中から鎌田大地)、2本目に荒野拓馬と金森健志、鳥栖戦では荒野と金森(途中から浅野と鎌田)が起用されたが、浅野以外でゴールという結果を残したのは鎌田だけ。ただ、「抜け目なくゴールに絡むプレーを示してくれた」(手倉森監督)と評価はされたが、序列を大きく覆すほどのインパクトではなかった。
 
 もっとも、「スタメンはいろんなバリエーションがある」という鳥栖戦後の手倉森監督のコメントから推察するに、スタメンを固定せず、対戦相手に合わせた“日替わりコンビ”も視野に入れているのだろう。鳥栖戦では「鳥栖を格上だと思って守備から入る」ゲームプランに合わせて、前線からのハイプレスが期待できる金森と荒野をスタートで使い、「上手くハマった」手応えがあったことを明かしている。欧州組の久保裕也を含め、どういった組み合わせで大会に臨むのか興味深い。
 
▼FWの主な序列
浅野拓磨(広島)                            スタメン候補       ↑
久保裕也(ヤングボーイズ)           スタメン候補       → ※未招集
鈴木武蔵(水戸)                            バックアッパー    ↓ ※未招集
中島翔哉(FC東京)                       バックアッパー    →
金森健志(福岡)                            バックアッパー    ↑
荒野拓馬(札幌)                            バックアッパー    ↑
鎌田大地(鳥栖)                            バックアッパー    ↑
前田直輝(松本)                            バックアッパー    ↓
 “彗星”のごとく、レギュラー争いに名乗りを上げたのが、今回初招集となった関根貴大だ。練習試合ではこのポジションで唯一、2試合連続スタメンに名を連ねた。五輪最終予選まで残された時間は多くなく、できるだけ試しておきたい意図もあるだろうが、浦和とのシステムや戦術の違いを感じさせず、実際のプレーでチームメイトや監督の信頼を得たのは間違いない。
 
 手倉森監督が「関根はドリブルとスピードがストロングの選手だけど、彼には良い間がある。4-4-2のサイドでも十分アクセントになれることが分かったのは“発見”だった」と語れば、「中に入ってきたり、自分がボールを持った時に顔を出してくれたり、コンビネーションは初めてのわりに良かった」(遠藤航)、「イメージ的に縦に速い選手かなと思っていたけど、中にも行ってくれるし、ボールキープもできるので、やりやすかった」(室屋成)と評価は上々だ。今回のキャンプだけで判断するのは早計だとはいえ、メンバー入りどころか、レギュラー取りさえ現実味を帯びてきたと言っていい。
 
 鳥栖戦で左MFとして出場した中島翔哉は、PKで1点は挙げたものの、決定機を外すなど元気がなかった印象だ。ただ、これまでの実績も踏まえ、流動的な動きを重視するチームにおいては依然不可欠な選手であり、レギュラーは確約されていると見ていい。また、今季ザルツブルクでリーグ戦12試合・7得点(10月30日現在)を記録している南野拓実も得点感覚が研ぎ澄まされており、序列では上位につけている。
 
 そして忘れてはならないのは、鳥栖戦では約30メートルのスーパーミドルを突き刺した野津田の存在だ。手倉森監督によれば、野津田がシュートを決めた瞬間、交代でベンチに下がった前田が頭を抱えて悔しがったというのだから、観客のみならず、ポジションを争うライバルたちに対しても大きなアピールになった。自慢の左足から繰り出す強烈なキックは、手倉森ジャパンにとって大きな武器になるはずだ。
 
▼サイドMFの主な序列
中島翔哉(FC東京)                       スタメン候補       →
南野拓実(ザルツブルク)              スタメン候補       → ※未招集
関根貴大(浦和)                            スタメン候補       ↑
野津田岳人(広島)                         スタメン候補       ↑
前田直輝(松本)                            バックアッパー    →
矢島慎也(岡山)                            バックアッパー    →
豊川雄太(鹿島)                            バックアッパー    → ※未招集
 キャプテンの遠藤航が発熱で最終日に離脱したため、遠藤&大島僚太の2ボランチを実戦で見ることはできなかった。また、鳥栖戦で45分間プレーした大島も、特筆すべき出来ではない。とはいえ、その経験値とポテンシャルを考えても、チームのキャプテン、副キャプテンを務める両雄は、ほぼ不動の存在と言っていいだろう。
 
 今年7月のコスタリカ戦で遠藤の相棒に抜擢された井手口陽介は、ACLとナビスコカップの影響で、前回の京都、今回の佐賀での候補キャンプでは招集が見送られている。ライバル不在の間にアピールのチャンスを窺った喜田拓也は、福岡大戦では球際で激しい守備を見せたものの、鳥栖戦で左足首を痛めて途中退場(クラブは全治6週間の見込みと発表)を余儀なくされ、決定打を欠いた。
 
 プレーの内容で言えば、鳥栖戦でCKから2得点を演出した原川力、福岡大戦で“つなぐ”サッカーの起点となった川辺駿には見るべきところがあった。有能なプレーメーカータイプの両者はバックアッパーとして手元に残しておきたい存在か。
 
 初招集の三竿健斗も、関根とダイレクトプレーをスムーズに行ない、CBとしても戦えるユーティリティ性を示すなど、一定の評価を与えられる。その一方で、五輪1次予選で左SBで起用された秋野は、今回本職のボランチでチャンスを与えられたものの、チームに戦術的な幅をもたらすことはできなかった印象だ。
 
▼ボランチの主な序列
遠藤 航(湘南)              スタメン候補       →
大島僚太(川崎)              スタメン候補       →
原川 力(京都                  バックアッパー    ↑
井手口陽介(G大阪           バックアッパー    → ※未招集
喜田拓也(横浜)              バックアッパー    →
川辺 駿(磐田                  バックアッパー    ↑
秋野央樹(柏)                  バックアッパー    ↓
三竿健斗(東京V)           バックアッパー    →
 
 CBは岩波拓也が軸だが、今回は奈良竜樹が福岡大戦で40分間、鳥栖戦では90分間コンビを組んだ。鳥栖戦でセットプレーから2ゴールを挙げたことがフォーカスされがちだが、奈良本人は無失点で抑えられたことに手応えを感じていた。
 
 手倉森監督はふたりのコンビネーションを高めるために鳥栖戦ではフル出場させたと明かし、「あのふたりには20、30分プレーして無失点に抑えて満足してもらっては困る。奈良は競り合いと球際でしっかり戦えていたので、クラブで出場機会がない分、良い経験になったのかなと。奈良もあれ“なら”ね」と得意のジョークが飛び出すぐらい、手応えを得た様子。今回はナビスコカップ決勝で未招集だった、ライバル・植田直通の背中に手をかけるところまで来たのは、チームとしても明るい材料だ。
 
 SBは松原健が右外側半月板損傷による長期離脱中で、絶対的な軸がいない。今キャンプでは亀川諒史が両サイドをこなし、ボランチと的確なマークの受け渡しを見せるなど、まずまずの内容。途中離脱した五輪1次予選を除き、昨年末から継続して招集されており、左に関して言えば山中亮輔との争いで一歩リードか。
 
 逆に右SBは激戦に(怪我がなければ松原が最有力候補だが)。佐賀キャンプでは川口尚紀も未招集で、唯一の大学生である室屋成が鳥栖戦で62分間プレーしたものの、レギュラー候補かと言えば首を縦には振れない。「攻撃のところでアクセントになる」と手倉森監督が評した“SB・中野”が、どこまで今後の競争に食い込んでくるかは見ものだ。
 
 GKの争いはほぼ横一線だ。リーグでの実績で言えば、今季福岡に移籍し、J1昇格争いの原動力となっている中村航輔が一番手で、指揮官も「シュートへの反応はものすごく良くなっている」と太鼓判を押した。だが、これまで守護神筆頭と見られてきた櫛引政敏も、清水でレギュラーの座を失っているとはいえ、コーチ陣によれば「試合に出ていないわりに状態は悪くない」という。
 
「(中村)航輔が成長を見せているので、櫛引、牲川、杉本も、うかうかしてられない良い競争になっていると思う。ハリル(ハリルホジッチ監督は)はGKがいないと言うんですけど、ここに4人いるぞと」と指揮官は競争の活性化を喜んでいる。

▼CBの主な序列
岩波拓也(神戸)                            スタメン候補       →
植田直通(鹿島)                            スタメン候補       → ※未招集
奈良竜樹(FC東京)                       バックアッパー    ↑
西野貴治(G大阪)                         バックアッパー    → ※未招集
三竿健斗(東京V)                         バックアッパー    →
中谷進之介(柏)                            バックアッパー    →
 
▼SBの主な序列
亀川諒史(福岡)                            スタメン候補       ↑
山中亮輔(柏)                                バックアッパー    →
川口尚紀(新潟)                            バックアッパー    ↓ ※未招集
伊東幸敏(鹿島)                            バックアッパー    ↓ ※未招集
室屋 成(明治大)                         バックアッパー    →
中野嘉大(川崎)                            バックアッパー    →
松原 健(新潟)                            スタメン候補       ― ※負傷中/未招集
 
▼GKの主な序列
櫛引政敏(清水)                            スタメン候補       →
中村航輔(福岡)                            バックアッパー    ↑
杉本大地(京都)                            バックアッパー    ↑
牲川歩見(磐田)                            バックアッパー    ↓
山田元気(京都)                            バックアッパー    ↓

取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)