2015年10月から開始した「おそ松さん」。赤塚不二夫の「おそ松くん」の六つ子が立派な無職に成長したという設定の新作アニメだ。
1話から流行りの作品のパロディを連発し、「赤塚先生怒ってないかな?」「平気だよ、だいぶ前に死んでるから」と不謹慎に聞こえる発言をかましてSNS上で話題になったこの作品。
実は「赤塚不二夫の新規ファン」も生み出している。いわゆる「おそ松さん新規」だ。ファンが増えた要因はいくつかあるが、やはり一番は成長した六つ子の揃いも揃ってダメ人間なキャラクターとその関係性が、多くの(主に女性)ファンを惹きつけたのだろう。

Twitter上では、「おそ松さん(おそ松くん)」情報だけではなく、作者・赤塚不二夫の情報も盛んにやりとりされている。中でも拡散されていたのは赤塚とタモリのちょっと不思議な関係だ。
赤塚への弔辞でタモリが「わたしもあなたの数多くの作品のひとつです」と語ったことを覚えている人も多いかもしれない。ふたりは「肉親以上の関係」だった。


1975年の運命の出会い。出会って即座にマンションへ


近藤正高の『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)には、ふたりのエピソードが数多く列記されている。あまりにも興奮するのでいくつか紹介したい。

ふたりが出会ったのは1975年夏、スナック「ジャックの豆の木」で行われたタモリの独演会でのことだった。最初はタモリの評判に半信半疑だった赤塚。しかし目前で展開される芸に惹きこまれる。
〈すっかりタモリに惚れ込んだ赤塚不二夫は、目白にある自分のマンションの部屋に泊まっていけと申し出た。カーサ目白というそのマンションは、妻との離婚時に土地も自宅も譲ってしまった赤塚のため、事務所側が探してきたものだった。しかし淋しがりやの彼は一人暮らしが苦手なうえ、仕事も忙しくてほとんど帰っていなかった。ようするに空き家も同然だったわけで、まるでタモリのために用意されていたのではないかとさえ思わせる〉
なんと赤塚は、会って間もないタモリに、ひと月の家賃が17万(1975年当時)の家を貸し与えたのだ。
以後、赤塚はタモリをマンションに住まわせながら、タモリを芸能界に売り込むために奔走する。

タモリが赤塚から受け取っていたのは居住空間だけではない。お小遣いも酒も、服ももらっていた。
〈小遣いを受け取る際には「酒あるか?」とも訊かれ、「ない」と答えると、翌日には酒屋からハイネケンのビールが何ダースも届けられた〉
〈(タモリが)赤塚の服を拝借して、何気なく着てみると、サイズがぴったりだった。赤塚から飲みに誘われると、それを着ていく。自分の服を着ていることに気づくや「それ、俺んだよねえ」と訊く赤塚。それに対してタモリは「そうだよ」と平然としながら答える。「それ、大切にしてたんだよなあ」と寂しそうに言われても、当然のごとく冷たく「あっそう」〉
赤塚所有のベンツも勝手に乗り回すタモリ。一方赤塚はタクシーを使った。

赤塚は来宅するときは必ずタモリに電話してから訪れ、恐縮した様子で過ごし、また仕事場へ戻っていった。
まったく遠慮しない「居候」タモリは、さらに福岡から妻を呼び寄せ、夫婦で居候を始める。76年の4月までの約1年間、タモリはひとこともお礼を言わず、まるで家主のように振る舞った。赤塚は怒るどころか、むしろそんなタモリを高く評価していた。

「一時、ホモになろうと」思った赤塚とタモリ


なぜ赤塚はそこまでタモリに惚れ込んだのか?
もちろん、芸の完成度の高さや、タレントしての潜在能力を見抜いたのは間違いない。けれどそれ以上に、赤塚はタモリといて単純に「めちゃくちゃ楽しかった」のではないだろうか。
『タモリと戦後ニッポン』著者の近藤氏が、『これでいいのだ。──赤塚不二夫対談集』(メディアファクトリー)から、こんな資料を教えてくれた。赤塚とタモリの対談だ。

〈タモリ あー、だけど俺、あれは敵わなかったなぁ。ケツにロウソクは入んなかったからな。(笑)だって、オロナミンCの瓶くらいの太さのロウソクなんだもん。(笑)そんで、「よく入ったねぇ。俺、入んなかったよ」って言ったら。「バカだねぇーお前は、石鹸をつけんだよ」って、どっちがバカなんだよ。(笑)〉
場所は正月の雪降る別荘。タモリと赤塚は、おしりに火のついたロウソクを入れ、後ろ向きに歩いてくるチャレンジをしたのだそう。タモリは失敗、赤塚は石鹸の助けを借りて挿入に成功した。
どういうことだよ?

〈赤塚 じゃあ、これ覚えてるかなぁ。朝四時頃、雪降ってててさ。あなたが車乗りたいって言ってさ、俺が助手席に乗ったんだよ。そしたら俺に「死んでもイイ?」って聞いてきて、俺「イイよ」って答えてさ。雪ん中メチャクチャ走ったんだよなぁー。軽井沢の朝……。
(中略)
だからね、どんなくだらないことでも、死ぬ気で本気になって行動するってのが面白いって思ったよなぁ、あのとき。〉
「死んでもイイ?」「イイよ」って、pixivの小説とかで500万回読んだことがあるぞ!!

赤塚は、タモリとならとことんバカなことができた。だからこそタモリは、友達でも、弟子でも、恋人でも、家族でもない、唯一無二の存在だったのだ。

ふたりは自分たちの関係をどんなふうに考えていたのか? インタビュアーに問われたタモリと赤塚は、こんな爆弾トークをする。
〈タモリ いや、でも一時、ホモになろうかと思ったことあったんだよなぁ。
赤塚 うん、高平(哲郎)の家で布団ひいて二人でパンツ一丁になって、本気でホモになろうとしたことあったんだよな。(笑)
タモリ 面倒だから、この際、ホモになっちゃおー!
赤塚 タモリー! フジオちゃーん! ってね、抱き合ったことあったもんなぁ。(笑)キンタマ触ったりいろいろやったんだけどねぇ。
タモリ やっぱり、いかんせん興奮しないんだよね。(笑)
赤塚 三十分くらいして、ダメだこりゃーってね。
タモリ 身体は嘘つかない。〉
ありがとうございます(感謝の舞)。

(青柳美帆子)