張りのあった左足の不安を感じさせず、自慢のスピードで颯爽とピッチを駆け抜けた浅野。45+1分、85分と相手からボールを奪って冷静にシュートを決め、2ゴールと結果を残した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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「点を取らないと話にならないぞ!」。
 
 手倉森監督は直近の実戦3試合でわずか1得点のチームにそう発破をかけて、鳥栖戦のピッチに送り出したという。「結果を残せ」という意味に等しい指揮官からのメッセージに対し、強烈なインパクトで応えたのが浅野と野津田の“広島コンビ”だった。

【写真】U-22日本代表 7-0 鳥栖
 
 浅野は34分から2トップの一角として交代出場。左足の張りで欠場した福岡大戦を外から見て「裏への怖さをもっと出さないといけない」と感じ、抜け出すタイミングにこだわってプレーした。それは41分、42分と立て続けに最終ライン裏へのスルーパスに反応し相手ゴールを脅かしたシーンからも読み取れた。
 
 そして迎えた45+1分、荒野との連動した守備でボールを奪うと、飛び出してくるGKを鮮やかにかわすチップキックでネットを揺らし、チーム4点目をゲット。終盤の85分にも相手のバックパスをかっさらい、冷静にこの日2点目を流し込んだ。
 
 代表での得点は、実に今年2月のシンガポール遠征以来。日頃からゴールに強いこだわりを見せるだけに、少なからず焦りはあったと浅野は話す。
 
「チーム全体の守備から奪えたゴールだった。今までは(個人としては)ゴールにあまり恵まれていなくて、焦りは感じていたし、結果を残さないとこのチームでは生き残れないと思っていた。FWとして結果を残せたことはまずは良かった」
 
 ハリルホジッチ監督が視察するとあって、鳥栖戦を「アピールの場」と位置付けていたが、浅野のプレーはA代表の指揮官の脳裏にも焼き付いたに違いない。それでも、本人は2点を取った喜びよりも、3点目を逃した悔しさのほうが大きかったようだ。
 
「もっと点を取れるチャンスはあった。フィニッシュの精度を上げたいし、裏への抜け出しに関してもオフサイドになったシーンもあって、(今日の出来には)満足はできていない。オリンピックに行くことを常に意識しながらも、目指すところはやっぱりA代表なので、毎日がA代表に入るための“試験”だと思ってやっていければなと」
 
 鳥栖戦では金森と荒野が果敢なチェイシングで手倉森監督から好評価を受けたものの、FWというポジションの観点から言えば、ゴールを挙げた浅野のほうがアピール度では上だ。今回は故障のため未招集の鈴木や、欧州組の久保とライバルは多いが、エースの座奪取に一歩近づく、実りあるキャンプだったと言えるだろう。
 浅野の活躍に呼応するかのように躍動したのが、クラブのチームメイトでライバルでもある野津田だ。
 
 27日の福岡大戦では、足もとでボールを受けることができず、ダイナミックなプレーは影を潜めた。一夜明けた28日の練習後には「自分の武器がなんなのか、原点に立ち返りたい」と話していたが、鳥栖戦では「前が開いたらシュートを打つ」つもりでプレーしたという。
 
 62分から交代出場で右MFに入った野津田は、中島からパスを受けたファーストプレーで宣言どおりにミドルレンジからシュートを放つ。すると、見せ場はその4分後にやってくる。右サイドでボールを持つと、中央にドリブルしながら、やや前に出ていたGKの位置も計算に入れて思い切り左足を振り抜く。約30メートルの距離から放たれたシュートは急落下し、綺麗な放物線を描いてそのまま鳥栖ゴールに突き刺さった。
 
「ボールをしっかり捉えて、すくい上げて押し出すイメージだった。上から下に落ちるシュートの軌道は狙いどおりだし、自分の得意な形。(ゴールまでの距離が)遠くて、相手のGKも少し前に出ていて予測はできていなかったと思うので、思い切って蹴った」
 
 鳥栖戦ではアジア最終予選用のボールが使用され、本人的には「蹴りやすかった」のも追い風だった。なによりも自分を信じてアグレッシブさを貫いたからこそのゴール。決まった瞬間には、思わずガッツポーズが飛び出した。
 
「自分が出る前にチームとして得点を重ねていたので、自分も負けずに点を取らないといけないなというプレッシャーは感じていた。自分の良さはシュートで、そこは他の選手には負けていないと思っている。久々のゴールで気持ちが良かったし、前の試合(福岡大戦)から修正して、ボールを引き出してプレーできたのも含めて、個人的に大きな収穫があるゲームになった」
 
 チームが苦しい時に、自分が点を取らないといけない――。ポジションこそ2列目だが、野津田には攻撃の中核を担っていく自覚と責任感がある。7月のコスタリカ戦以降、ゴールが遠ざかり葛藤もあったが、しっかりとアピールに成功した。野津田の目はもちろん、リオ五輪出場、そしてその先のロシアも見据えている。
 
「ワールドカップに出るのが、今の最大の目標。そういう意味ではオリンピックは“通過点”ではあるけど、小さい頃からの夢でもあるし、まずはそこで活躍しないと先には進めない。(オリンピックは)自分にとって大きな意味を持つ大会なので、リオに行けるように、国民の皆さんの期待に応えられるように、頑張っていければいいと思う」
 
 鳥栖戦の浅野と野津田のプレーを目の当たりにしたら、アジア最終予選、そして待望の世界と相対するリオ五輪で活躍するふたりの姿を想像せずにはいられない。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)