川辺は福岡大との2本目でボランチとしてプレー。攻撃の起点として存在感を示した一方、全体のバランスを取るため、前に出て行くことはある程度自重していたという。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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  激戦区のボランチに新たな刺客が現われた。8月の京都合宿で初めてU-22代表候補に名を連ねた川辺駿は、今キャンプがまだ2度目の招集という“ニューフェイス”ながら、福岡大戦の2本目のおよそ30分間で見せたプレーは、実に堂々たるものだった。
 
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 スリッピーなピッチの影響もあって、「つなげずに自分たちのサッカーができていなかった」1本目を外から見ていた川辺は、ボランチとしてセカンドボールを拾うこと、そしてロングボールを蹴り込むのではなく、足もとでつないでいく意識で試合に入ったという。
 
 出場直後の12分、左サイドから右MF矢島の決定機に絡むと、16分には川辺が起点となって中野→金森と1タッチでのコンビネーションプレーでゴールに迫る(判定は惜しくもオフサイド)。終盤にはカウンターの起点になるなど、次々と川辺の下にボールが集まった。試合後、手倉森監督は「後半のグループのほうが、距離を縮めて自陣でも堂々とボールをつなぐあたり、工夫があって良かった」とつなぎの部分を評価したが、京都合宿時よりもチームに溶け込めたのは、チームメイトとのコミュニケーションが密になってきたためだと話す。
 
「自分としても、1回目よりもすんなりと入れたと思う。それは(レンタル元の広島でチームメイトだった)浅野くんや野津田くんのおかげもあるし、周りの人がどんどん話しかけてくれるから。今日ボランチ同士で話しながらバランスが取れていたように、コミュニケーションがそのまま試合のプレーに反映されるので、良くはなっていると思う」
 
 ただ一方で、葛藤もある。高い技術をベースとした精度の高いパスに加え、自ら仕掛けてゴール前にも顔を出す攻撃性が川辺の特長だ。今季期限付き移籍先の磐田でも先発に定着した29節以降、チームは6勝3分1敗と首位・大宮を脅かす勢いを見せているが、代表ではそのダイナミックさを少なからずセーブしている部分があると言う。「サッカーが違う」と前置きしたうえで、ふたつのチームにおける違いについてこう説明する。
 
「ジュビロだと中盤が流動的に動くことで、(ボランチの)自分が前にも後ろにも行ける状況にある。代表は同じシステムでもトップ下が相手の嫌なところでポジションを取り続けることが特徴なので、トップ下との入れ替わりはジュビロほど多くはない。自分としてはどんどん前に行きたいけど、全員がアピールのために出てってしまったら、セカンドボールが拾えなくなったり、チームとしてキツくなってしまう。そこは少し抑えているというか、周りを見ながらやっている」
 もっとも、チームコンセプトは大事にしつつも、時には柔軟な対応も必要だと理解している。特に、U-22代表は福岡大戦を含めた直近の実戦3試合でわずか1点しか取れていないだけに、“固定概念”に縛られるつもりはないようだ。
 
「チームのやり方はあるけど、最後のペナ付近では自分の判断とアイデア次第だと思う。シュートを打てるならシュートが一番だし、キックフェイントをして相手が食いついてきたらDFの後ろに走った選手を使うとか。選手の組み合わせでいろいろ持ち味を出せればいいし、最後の部分ではもっと自分たちが好きなようにプレーしてもいいと思う。
 
 僕自身に関して言えば、ルックアップした時にどれだけ周りが反応してくれるかが、点を取れるかどうかのポイントだと思う。いろんな人が反応すればそのぶん、パスコースが生まれて、選択肢が広がるので。自分から『ここに来い』というパスを練習からどんどん出していければ、周りともどんどん合っていくかなと」
 
 ボランチのポジションはキャプテンの遠藤を筆頭に、大島(福岡大戦は登録外)、喜田、原川、井手口らタレントが揃っており、リオ五輪アジア最終予選のメンバー入りは熾烈を極める。とはいえ、ようやく掴んだアピールのチャンスを無駄にする気は毛頭ない。
 
「ずっとここ(U-22代表)に来たかった。でも、自分はまだ2回目でアピールが必要な立場。ボールを多く触るポジションだからこそ、もっとクオリティを発揮しないといけないし、それができればこのチームの中心になれると思う」
 
 力強い口調と明確なビジョン、なにより“自分の意志”を持っている川辺は、「大人しい」と言われるチームの起爆剤となり得る。遅れてきた新戦力のアピールはまだまだ続く。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
 
PROFILE
かわべ・はやお/1995年9月8日生まれ、広島県出身。178センチ・70キロ。広島高陽FC―広島Jrユース―広島ユース―広島―磐田。今季通算29試合・2得点、J1通算4試合・0得点、J2通算29試合・2得点(38節終了時)。高い技術を巧みに操り、パスで局面を打開する。14年には関根貴大らとともに中心選手としてU-19アジア選手権を戦った。