消費増税に伴う軽減税率が話題だが、経済学者で投資家の小幡績氏は、それは低所得者対策どころか富裕層優遇政策だという。では、実際の低所得者対策としてはどんな方法があるのか、小幡氏が解説する。

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 低所得者対策としては、カナダで行なわれている、「給付付き税額控除制度(所得の少ない人へ補償を行なう制度)」を利用したものが、もっとも合理的で効率的であるといわれており、マイナンバーが導入される日本でも実現可能となります。

 一定の年収以下の人たちや一定の資産保有額以下の人たちに対して、定額で給付金を配る対策で、そうした負担緩和措置を行なうことのほうが軽減税率よりもはるかに望ましいのです。

 軽減税率により一人あたり5000円の消費税負担を減らすやり方では、年収1000万円の人にも3000万円の人にも負担軽減となってしまいますが、年収500万円以下の層に限って対策を取れば、同じ総還付額でも高所得者への負担軽減の分を低所得者に回せます。それによって「みんなに5000円」ではなく、「本当に困っている人に1万円」の給付を行なうことも可能になるのです。

 にもかかわらず、なぜ政府は「軽減税率」を推し進めるのか。

 問題は、「軽減税率」というものが政治的に、あるいは一般的に、支持が集まりやすい、ということです。欧州でも、軽減税率が多くの国で導入されています。それは、非効率的であると分かっていながら、国民の要望として、あるいはそれを受けた政治的な志向として、導入されてきています。

「必需品にも課税するのはひどい」「低所得者が苦しむ」という議論が直感的に支持を得やすいからだと思われますが、低所得者への現金給付で代替する、と説明しても納得が得られないのは、かなり不思議なことです。経済学者の間でも、行動経済学的にどう説明するか、議論が分かれているところなのです。

※週刊ポスト2015年11月6日号