昨シーズンのリーグ覇者――ゴールデンステート・ウォリアーズを筆頭に、強豪がひしめくウェスタン・カンファレンス。ウォリアーズのNBA連覇にストップをかけるチームは現れるのか? 10月27日(日本時間10月28日)に開幕する2015-2016シーズンの注目ポイントを紹介する。

■2015−2016年シーズン展望@ウェスタン・カンファレンス編

 近年の東西カンファレンスのパワーバランスは、「西高東低」と呼ばれて久しい。そして今シーズン、そのバランスはさらに大きく西へと傾きそうだ。

 ポール・ピアース(SF)がワシントン・ウィザーズからロサンゼルス・クリッパーズへ、デロン・ウィリアムス(PG)はブルックリン・ネッツからダラス・マーベリックスへ、そして、ロイ・ヒバート(C)もインディアナ・ペイサーズからロサンゼルス・レイカーズへと移籍した。また、そのほかにも多くの主力級選手が東から西に主戦場を変えている。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 その結果、9月末に発表されたESPNのパワーランキングでは、2位にクリーブランド・キャバリアーズ、9位にアトランタ・ホークス、10位にマイアミ・ヒートが入ったものの、トップ10の残りすべてがウェスタン所属のチームとなっている。

 昨季のファイナル初戦で左ひざを骨折したカイリー・アービング(PG)と、今オフに手首の手術を決断したイマン・シャンパート(SG)の復帰は年明けと言われている。だが、もしスタートダッシュでつまずこうとも、「キング」レブロン・ジェームズ(SF)がいるかぎり、キャブスの不安要素は皆無だろう。

 今年9月、アメリカのスポーツ総合誌『スポーツ・イラストレイテッド』がウェブサイト上で、「2015−2016シーズンのプレーヤーランキング・トップ100」を発表したところ、2年連続でレブロンが1位となった。昨シーズン、NBAファイナルで「ビッグ3」のうちのふたり(ラブ&アービング)を欠きながら、鬼神のごときレブロンの活躍でウォリアーズと互角に渡り合ったのは、記憶に新しいところ。ふたたびビッグ3が形成されれば、キャブスがイースタンの首位戦線を独走する可能性もある。

 そんなキャブスの独走に待ったをかける筆頭は、やはりシカゴ・ブルズ(イースタン3位)だろう。今オフは大きな補強こそないものの、26歳のジミー・バトラー(SG)がMIP(※)を獲得し、24歳のニコラ・ミロティッチ(PF)もオールルーキー1stチームに選出されるなど、若手の成長が著しい。

※MIP=最も成長した選手に贈られる賞。

 さらにはケガに苦しんだジョアキム・ノア(C)も回復し、パウ・ガソル(PF)は今夏のヨーロッパ選手権でスペインを優勝に導いて大会MVPとなるなど、ベテランたちも良いコンディションでシーズンを迎えようとしている。ただし、デリック・ローズ(PG)がトレーニングキャンプ初日に左眼窩(がんか)を骨折。開幕には間に合いそうだが、2012年に左ひざの前十字じん帯を断裂して以来、2010-2011シーズンMVPを獲得したころの輝きを取り戻せていないのが、ブルズ唯一の不安材料か。

 昨シーズン、キャブスとブルズを上回るレギュラーシーズン60勝(22敗)をマークし、イースタンで最高勝率を残した「シンデレラチーム」アトランタ・ホークス。しかし、プレーオフではその戦術が研究され、第8シードのブルックリン・ネッツや第5シードのワシントン・ウィザーズに大苦戦した。そして、カンファレンス・ファイナルではキャブス相手に1勝すら挙げられず、尻すぼみでシーズンを終えている。今オフ、ディフェンスとスリーポイントシュートに秀でたデマール・キャロル(SF)をラプターズに放出したため、戦力ダウンは否めない。

 逆に、そのキャロルを獲得したトロント・ラプターズ(イースタン4位)は、今シーズンも勢い変わらず上位争いに食い込んできそうだ。アルゼンチン人の英雄ルイス・スコラ(PF)と、2013年のドラフト1位でNBA入りしたアンソニー・ベネット(PF)を獲得。虎視眈々とイースタンの頂点を狙っている。

 また、オフにインサイドの核となるグレッグ・モンロー(C)を獲得し、「ギリシャの怪物」ヤニス・アデトクンボ(SF)、2014年の新人王マイケル・カーター=ウィリアムス(PG)など、期待の若手が顔を揃えるミルウォーキー・バックス(イースタン6位)も侮れない。新人王の呼び声が高かった昨シーズン途中に左ひざ前十字じん帯を断裂したジャバリ・パーカー(SF)も、今年のトレーニングキャンプに参加してきた。パーカーがコートに復帰すれば、バックスが今シーズンの「台風の目」になりそうだ。

 2年連続でプレーオフ進出を果たしているワシントン・ウィザーズ(イースタン5位)は、貢献度の高かったベテランのポール・ピアース(PF)がロサンゼルス・クリッパーズへと移籍し、戦力ダウンという印象が強い。ボストン・セルティックス(イースタン7位)も上位チームとの戦力差が大きいため、この2チームはプレーオフ進出の当落線上で戦うことになるだろう。

 一方、気になるのは、かつてプレーオフの常連だったチームの現状だ。まずは昨シーズン、5年ぶりにプレーオフ進出を逃したインディアナ・ペイサーズ(イースタン9位)。今オフ、ロイ・ヒバート(C)がロサンゼルス・レイカーズに、そしてデビッド・ウェスト(PF)もサンアントニオ・スパーズへと移籍した。つまり、主軸だったインサイドプレーヤーが同時にいなくなったのである。

 しかし、ペイサーズにはこの男が完全復帰してくる。2014年8月に右足骨折の重傷を負ったポール・ジョージ(SF)だ。長いリハビリを経て、昨シーズン終盤に復帰を果たしたジョージが、今シーズンは万全の態勢でチームを引っ張っていくだろう。10月6日に行なわれたデトロイト・ピストンズとのプレシーズンゲームでは、第1クォーターだけで20得点をマークし、その爆発力が健在であることをアピール。オフェンス能力の高い新加入のモンタ・エリス(PG)がチームにフィットすれば、ふたたび上位陣を脅かす存在になってもおかしくない。

 そしてもうひとつは、過去10年間で3度のリーグ優勝を果たしたマイアミ・ヒート(イースタン10位)だ。レブロンのキャブス移籍で苦しんだ昨シーズンだったが、今オフは大幅な戦力アップに成功したといえるだろう。

 オールスター出場6度を誇るアーマレ・スタウダマイアー(PF)と、2007年のスラムダンクコンテストで優勝したジェラルド・グリーン(SG)が加入し、昨シーズン途中に肺血栓をわずらって離脱したクリス・ボッシュ(PF)も復帰してくる。ドウェイン・ウェイド(SG)は変わらず健在なので、2014年のMIPゴラン・ドラギッチ(SG)や、231センチのウイングスパンを誇る新星ハッサン・ホワイトサイド(C)が本来の能力を発揮すれば、プレーオフへの返り咲きはもちろん、それ以上の成績を残すことも夢物語ではない。

 そして最後に注目したいのは、ニューヨーク・ニックス(イースタン15位)の成績だ。今シーズンも低空飛行を続けると、オフのチーム補強に不満を持っているニックスのスーパースター、カーメロ・アンソニー(SF)がトレードを要求するのでは......というウワサがささやかれている。もし、トレードが成立することになれば、カーメロを獲得したチームが一躍、「ダークホース」となるだろう。

 今シーズンの開幕戦は、イースタンの覇を競うキャブスとブルズがいきなり激突する。はたしてどんな結果となるのか、新シーズン開幕日から目が離せない。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro