睡眠時間は短くとも不眠症はいない?  Artush/PIXTA(ピクスタ)

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 現代人の多くを悩ませる睡眠不足――。特に日本人は、世界中でも"超短時間"睡眠であることが明らかだ。OECD(経済協力開発機構)のアンケート調査によると、OECD加盟国の睡眠時間の平均は、男性が7時間41分、女性7時間36分。世界中で日本人は1時間15分以上も短いという。

 睡眠の不足や時間の短さの原因は諸説あるが、必ずしも慌ただしい都会の生活だけにあるわけではない可能性が、新たな研究で示された。

 ボリビア、ナミビア、タンザニアの3つの伝統的な狩猟採集民の睡眠習慣を追跡した結果、睡眠のタイミングや持続時間には「現代的な」生活を送る人々との差はみられないことがわかったという。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のJerome Siegel氏によると、電気、テレビ、インターネットなどの普及によって睡眠時間が「自然レベル」よりも短くなっているために睡眠薬を飲む必要があるという考え方に対して、今回の知見は重要な意味をもつものだと述べている。この研究は、『Current Biology』(10月15日)に掲載された。

狩猟採集民族の平均睡眠時間は6.5時間弱

 今回の研究では、異なる地域の3つの狩猟採集民族(タンザニアのハッツァ族、ナミビアのサン人、ボリビアのチマネ族)の計94人の睡眠習慣を追跡。いずれの民族も、1日の平均睡眠時間は6.5時間弱だった。

 電気による照明がない場合でも、日没の約3時間後に眠りにつき、日の出の前に目覚め、昼寝の習慣はないのが典型であることがわかった。いずれも現代社会の睡眠習慣に近いものだと、研究グループは付け加えている。

 Siegel氏は、「このような民族の睡眠時間が短いという事実は、『現代世界』では睡眠時間が大きく損なわれているという見解に疑問を呈する」とコメント。研究チームはさらに、狩猟採集民の睡眠は「光よりも気温との関係が深い」との考えを示している。気温が下がると眠りにつき、夜間の最も気温の低い時間帯には眠り続ける傾向がみられたという。

慢性的な不眠症はほとんどみられない!

 ところが一方で、これらの狩猟採集民の間では、米国ではよくみられる慢性的な不眠症という問題がほとんどみられないこともわかった。これを重要な知見だと考え、Siegel氏は「彼らをとりまく自然環境のさまざまな側面を取り入れることが、米国人口の20%以上が悩む不眠症をはじめ、特定の睡眠障害の治療に有効と考えられる」と述べている。

 当サイトでも睡眠に関するデータや問題について触れてきた。「眠れない脳が悲鳴を上げる? 睡眠障害による国内の経済損失は3.5兆円!」「睡眠不足による体力低下は、実際に風邪を引きやすくする!」「自殺者の平均睡眠時間は5時間。睡眠不足が自殺を引き起こしてしまう!?」「眠れない、眠りが浅い、眠りたくない...... 世界一短い日本人の睡眠時間、あなたは大丈夫?」など。

 今回の研究で興味深いのは、狩猟採集民族は日本人と同じ"超短時間"睡眠でありながら、不眠症という問題がほとんどないという点だ。時間は短くとも「眠りの質」が高い。

 昨今、睡眠にも大きくかかわる「サーカディアンリズム(概日リズム)」を乱すといわれているのが「ブルーライト」。スマホやPC、タブレット端末、街中に溢れるネオンや灯り......。LEDの普及や使用時間の増加で、日常生活でのブルーライトの暴露量は年々増えている。ひよっとしたら、狩猟採集民族が「短時間でも快眠」という秘訣は、ここにあるのかもしない。
(文=編集部)