ツアー初優勝を挙げたスマイリー・カウフマン 下部ツアーから這い上がった選手の一人だ(Photo by Scott HalleranGetty Images)

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 先週の開幕戦、「フライズ・ドットコム・オープン」を制したルーキーのエミリアーノ・グリッロに続き、今週の開幕第2戦、「シュライナーズ・ホスピタル・オープン」を制したのもルーキーだった。
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 スマイリー・カウフマン。ちょっと変わった名前。「あれっ?どこかで聞いたなあ」と思う方もいるかもしれない。そう、先週の開幕戦の最終日に松山英樹と同組で回っていた23歳の米国人だ。2014年にルイジアナ州立大学を卒業し、プロ転向。2015年は下部ツアーのウエブドットコムツアーに参戦し、そこで1勝を挙げ、賞金ランク6位になって今季の米ツアー出場権を得た。
 「スマイリー」と聞くと、その昔、米ツアーに出ていたころの丸山茂樹が「スマイリー」「スマイリング・アサッシン(笑顔の暗殺者)」などと呼ばれていたのを思い出す。だが、カウフマンの「スマイリー(Smylie)」は笑顔の「スマイリー」ではなく、母方のファミリーネームなのだそうだ。
 そんな話はさておき、そのカウフマンの米ツアーにおける過去の出場経験は推薦で出た昨年の2試合と自力で出た全米オープンしかなかった。その意味では、経験値はすこぶる低いことになる。
 それなのに先週のデビュー戦ではいきなり10位。そして今週は首位から7打差の28位で最終日を迎えながら10アンダー“61”というビッグスコアをマークし、デビュー2試合目で大逆転の初優勝を遂げた。
 そんな驚きの成功をもたらしたものは、ウェブドットコムツアーで20試合を戦った1年間の日々だと、カウフマンは振り返った。
 「ウェブドットコムツアーは僕にとってパーフェクトな場所だった。転戦の仕方、試合への備え方、予選通過の仕方、すべてを教えてくれた。ラウンド中、ゴルフの流れが悪くなっていったとき、それをどうやって好転させるか。21、22歳の若がそういう状況に対応するのは難しい。でもウエブドットコムツアーはそんな僕を成熟させ、目の前の状況の中で賢くプレーすることを教えてくれた」
 カウフマンの祖父はアラバマの大学ゴルフ部のコーチで、Gマック、ことグレアム・マクダウエルにスイングを指導したこともあるそうだ。ゴルフエリートの家庭に生まれ、指導者にも恵まれていたカウフマンだが、それでもなお下部ツアーでの1年間が米ツアーで戦うための「パーフェクトな予行演習」になったと感謝していた。
 先週、ルーキー優勝を果たしたグリッロもウェブドットコムの出身ゆえ、開幕2戦の連続ルーキー優勝は、連続ウェブドットコム出身者優勝とも言えるわけだ。
 かつて「二軍」と呼ばれていた下部ツアーは、もはや世界のトッププレーヤー予備軍たちにとって、理想郷になりつつあると言っても過言ではない。3年前、米ツアーがシステム変更を実施し、ウェブドットコム経由で米ツアーへという道を敷いたのは、その出身選手達が米ツアーですぐさま戦える準備が整っていると判断したからだった。
 そして、ウェブドットコムツアーのレベルが非常に高く、カウフマンの言葉を借りれば「パーフェクトな場所」であることを、米ツアーが誇らしげに世界に示すための変更だったと言っていい。
 その昔、米ツアーに夢を馳せていた日本人選手たちは「アメリカでやってみたいけど、下部ツアーに出てまでアメリカに踏みとどまるつもりはない」と、よく言っていた。下部ツアーのレベルの高さや素晴らしさを知らないがゆえの発言だった。
 「ウェブドットコムで1年間、戦ってでも米ツアーを目指す」という言葉を私が初めて日本人選手の口から聞いたのは、岩田寛からだった。
 岩田は昨季終盤、ウェブドットコム・ツアーファイナルズ4戦を経て今季から米ツアーデビューしているが、もしも、あのファイナル4戦に出られていなかったら、彼は1年間、ウェブドットコムで腕を磨き、来年のファイナル4戦に挑む心積もりをしていた。
 岩田がわざわざそこに戻る必要はもちろんないが、ウェブドットコム出身選手たちの強さと経験が決して侮れないということは、誰もが肝に銘じておいたほうがいい。彼らは、呼び方やカテゴリーはルーキーであっても、その中身はルーキーとは思えないほどの成熟度。
 そんなルーキーたちが、さっそく暴れはじめた今季は想像以上に面白くなりそうだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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