■福田正博フォーメーション進化論

 大きな伸びしろを秘めた若い才能を、日本代表の戦力へと成長させるための機会は限られている。選手の多くが海外リーグでプレーする現在の日本代表にとって、主力が一堂に会する機会はW杯予選と親善試合しかない。

 ラグビーW杯で好成績を残したラグビー日本代表のように、長期的に何度も代表合宿を行ないながらチームを強化していくことは、現在のサッカー日本代表では現実的に困難だろう。
 
 それだけに、4カ月ぶりの親善試合だった先日のイラン戦は貴重な機会だったのだが、長期的な展望に立った若手起用という点に関してはやや疑問符がついた。

 イラン戦では、20歳の南野拓実が後半43分から投入されて日本代表デビューを飾ったが、短すぎる出場時間ではほとんどアピールできなかった。もちろん、南野を招集した主目的が、「代表の練習に参加してチームメイトとの相互理解を深めること」にあるのは想像に難くない。だが、戦況がめまぐるしく変わる実戦で、南野がどういうプレーを選択するのか、もう少し長い時間見たかったというのが正直なところだ。

 また、本田圭佑がベンチに退いた後に南野はピッチに送り出されたが、若い選手は主力がピッチに揃っているときにこそ起用すべきだろう。

 大一番の試合で本田などの中心選手がベンチに下がることはまずありえないのだから、彼ら主力がピッチにいない状況で若手を起用しても、実戦を想定した試みにはなりにくい。ここは、若手を起用するときの重要なポイントになる。

 たしかに、結果を残しながら、若手も育てることは監督にとって最も困難なミッションだ。しかし、大金を払えばどんな選手でも獲得できるビッグクラブの監督でさえ、先を見据えて若い選手の能力を伸ばしながら戦っている。実際、バルセロナのルイス・エンリケ監督も、アーセナルのベンゲル監督も、若い選手を試合で起用しながら育てている。

 もちろん、リーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグと試合数が格段に多いため、そうしなければチームが疲弊してしまうという理由もあるだろうが、世界のトップの監督であっても、若手をうまく起用して自信と経験を植え付けて育てていく。人材が限られ、まだまだ強豪と互角に戦うレベルにない日本代表監督にも、それは求められる。

 また、イラン戦のサイドバック(SB)の選手起用についても、大胆な若手起用策を講じてもよかったのではないかと感じた。

 日本代表のSBはここ数年、右に内田篤人、左に長友佑都、バックアップを酒井宏樹と酒井高徳がつとめることが多かったポジションだ。しかし、2018年のW杯ロシア大会で、長友は32歳、内田は30歳、酒井弘樹は28歳、酒井高徳は27歳になる。彼らの次の世代を育てなければいけない時期に来ている。

 ところが、ハリルホジッチ監督がイラン戦で起用したのは、27歳の米倉恒貴、29歳の丹羽大輝。今回はメンバーから外れたが、ハリルホジッチ体制でほとんど招集されている太田宏介も28歳と決して若手ではない。

 しかも、米倉と丹羽は、所属するガンバ大阪での役割と異なり、本来右SBの米倉は左SB、センターバックの丹羽は右SBでの起用だった。ハリルホジッチ監督なりの狙いがあったのだと思うが、選手が不慣れなポジションで能力を存分に発揮することは難しい。しかも、左SBでのプレー実績がある酒井高徳がいただけに、イラン戦で米倉をあえて左SBで起用したハリルホジッチ監督の真意がどこにあるのか、計りかねている。

 同時に、SBの若手が育っていないのも事実だ。これはDFラインに3バックを採用するJリーグのクラブが増えたことも要因のひとつにある。また、オリンピック代表の活動があるため、若手を代表に呼びにくいという事情もあるだろう。

 ただ、過去の例を振り返れば、長友も内田も代表に呼ばれた当初は荒削りな面が目立つ選手だったが、実戦で起用されることで経験を積み、成長していった。体格の大きさが求められるセンターフォワードやセンターバックとは異なり、SBは日本人が世界のトップクラスになれる可能性があるポジションだけに、長期的なビジョンを持って育ててもらいたい。

 W杯出場という目標だけにとらわれて若手の育成をおろそかにしていては、W杯本大会で「グループリーグ突破」という大きな使命を果たすことはできない。さらに、現在の日本代表の主力である本田や香川、岡崎といった選手たちの年齢を考えると、2022年のW杯カタール大会まで戦える選手は多くはない。それだけに、ハリルホジッチ監督は、若い選手に経験を積ませながら日本代表の力を伸ばしていってもらいたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro