帯状疱疹の原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」(shutterstock.com)

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 発病した記憶があろうがなかろうが、50歳以上の人の約8割は「水ぼうそう」にかかっており、この病気の免疫を持っている。ところが、子どもの頃に完治したはずの水ぼうそうが、数十年を経て悪さをすることがある。

 水ぼうそうは水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によるもので、約2週間の潜伏期間を経て発症する。50歳以上の人の約8割が4歳以下で発症しているため、自分が水ぼうそうにかかったことがあるかどうかを記憶している人は多くないかもしれない。

寝た子を起こすのは「免疫力の低下」

 胸や背中、頭や口の中、顔、手足などあらゆる場所に疱疹が出るのが水ぼうそうだが、体の片側にだけ痛みをともなった帯状の赤い水疱ができるのが帯状疱疹だ。疱疹ができる前からチクチクした痛みが襲い、人によっては夜も眠れないほどの痛みをともなう。

 この帯状疱疹の原因が、子どもの頃にかかった水ぼうそうなのだ。

 水ぼうそうの症状がすっかり治まっても、体内に入った水痘・帯状疱疹ウイルスは死滅したわけではない。脊髄や顔面、座骨などの神経節に潜伏し、数十年たって、疲労やストレスが重なったり病気の治療中など免疫力が落ちた時期を見計らって再活動を始める。体の奥の神経節から、神経をチクチク傷つけながら徐々に体の表面に出て症状を起こすというわけだ。

 早期に医療機関を受診し、抗ヘルペスウイルス薬による治療を受ければ、通常、2〜3週間で水ぶくれがかさぶたになって症状が落ち着き、痛みも消えていく。ただし、顔に水疱ができた場合は、角膜炎や難聴、顔面神経麻痺などが起こることもある。

 1度かかったら再発しないと思われがちだが、ストレスなどにより2度、3度と再発する人が増えて来ている。また、水疱が治っても、痛みだけが何年も続いてしまう人もいるから厄介だ。

痛みが長引くだけでなく、命にかかわる病気にも

 痛みが慢性化する帯状疱疹後神経痛は、高齢者ほど多いといわれている。また、症状が重くなった場合にも後遺症として残りやすい。「焼けるような痛み」「えぐられるような痛み」と表現されることもあり、こうなると日常生活を送ることもつらくなり、ペインクリニックなどの専門科の受診が必要になる。

 さらに、昨年、英国ロンドン大学の衛生・熱帯医学大学院をはじめとする大規模な共同研究で、帯状疱疹発症から4週間は脳卒中を発症するリスクが発症前より63%も高いことが判明した。5〜12週で42%、13〜26週でも23%も高い。特に目の周囲に疱疹ができた場合は、4週までの脳卒中発症リスクが82%アップという恐ろしい数字となっている。もともと高血圧の人は厳重な注意が必要だ。

 死の恐れもある脳卒中を引き起こす帯状疱疹だが、抗ウイルス薬を飲むことでそのリスクも半減する。症状を重くしないため、脳卒中を避けるためにも、早期に皮膚科を受診する必要がある。

 さらに海外では、30カ国以上で帯状疱疹にかからないためにワクチン接種が行なわれている。子どもの頃に接種したかもしれない、あるいは子どもの頃に水ぼうそうにかかっていたとしても、大人になると抗体が弱まっている可能性があるため、水痘ワクチン接種は有効だと考えられている。

 水痘ワクチンは、かつて日本で開発されたもので、接種により発症リスクはをおよそ半分になり、もし帯状疱疹を発症したとしても症状は軽く、帯状疱疹神経痛の人は3分の1に減るという。現在、英国のグラクソ・スミスクライン社が新たな帯状疱疹予防ワクチンを開発中で、その有用性は97.2%にもなるとのこと。大手製薬会社が真剣に取り組んでいることが、この病気のインパクトを示している。

 なお、水痘ワクチンは1〜3歳の子どもには無料だが、大人には健康保険が利かずおよそ1万円前後の負担になる。しかし、高齢者はもちろん、仕事の疲れがたまりやすい人、病気で免疫力が低下している人は50歳以下でもワクチン接種を検討してみる必要があるだろう。
(文=編集部)