施工業者の「データ偽装」により横浜の高層マンションが傾いた問題。資産価値の下落、安全面、建て替え問題など住民の不満が募る中、事態の収束はなかなか見えてこない。この傾いたマンション問題は決して他人事ではない。

 旭化成建材がこの10年で杭打ちしたマンションや商業ビルは全国3000棟に上る。同社は近日中に都道府県別の棟数を公表するが、住民や所有者の同意がないことから、物件名は明らかにしない方針だ。棟数がわかっても安全性はまったく保証されず、到底納得できない対応だ。

 違う施工業者ならば安心かといえば、そうでもない。大手マンションディベロッパー幹部がこう警鐘を鳴らす。

「前に述べたように、ベテランで優秀な現場責任者がいればマンション建設もスムーズにいきますが、建設業界は今若い労働者が足りず、人材不足に悩まされています。特に2011年以降に建てられたマンションは要注意でしょう。東日本大震災以降の復興事業や東京五輪の施設関連の工事に人手を取られ、しっかりした職人を手配するのが難しくなり、人件費も上がっています。

 さらに、円安で輸入建材が高騰したり、アベノミクスで地価も上昇しています。そうすると建設コストが上がるので、以前に比べてマンション会社の利益が減っています。そこで、どの施工会社も少しでも工賃を抑えるために、工期を短くしたり、人件費の安い非正規雇用の現場監督や職人を集めるのに必死です。そこで、必然的に“手抜き工事”が増えてしまうのです。そうした事情は一軒家を建てるハウスメーカーや工務店も同じです」

 家が傾くと、資産価値が下がることや倒壊の危険など安全面の不安を口にする人が多い。だが、「もっと大きなリスクがある」と指摘するのは不動産コンサルタントの長嶋修氏だ。

「傾いた家に住んでいると、めまいや吐き気など健康被害が生じる恐れがあることはあまり知られていません。傾斜が大きいほどリスクが高まるので注意が必要です」

 都内の一戸建てに暮らすA子さん(56才)が肩を落とす。

「数年前から頭痛やめまいに悩まされていました。病院に行っても原因がわからず困っていましたが、ある時、自宅の玄関のドアが閉まりづらくなっていたので業者に修理を頼むと、“家が傾いている。体に不調はないですか?”と聞かれてハッとしました。家の傾きが頭痛の原因だとは夢にも思いませんでした」

 家の傾きが健康被害を招くことはさまざまな調査で立証されている。たとえば東日本大震災で液状化した千葉市美浜区の被災者を対象にした調査では、家の傾斜角度が増すほどめまい、頭痛、吐き気などの健康被害を訴える人が増加した。

 人は傾斜角度が0.6度(1000分の10)になるとめまいや頭痛が生じ、1度を超えると頭重感、浮動感が表れる。2度を超えると吐き気、食欲不振、睡眠障害など症状が重くなる。敏感な人であれば、0.3度程度でも平衡感覚に異変が生じ、めまいや吐き気をもよおすとされる。

 ちなみに、傾斜角度が0.3度とは、ドアや窓の建て付けが悪くなって隙間が生じ、0.35度になると床に置いたビー玉が転がる。

「今回の横浜のマンションの傾きは1000分の4〜5(0.3度弱)です。実は、この程度の傾きは中古マンション、中古一戸建てが売買される際の傾きとしてはギリギリ許容できる範囲とされていて、多くの住宅がそれぐらいは傾いてしまっていると考えていい」(長嶋氏)

 体の不調の原因が家の傾きにあると気づかず、原因不明のまま頭痛や睡眠障害に悩まされると、「なぜ、こんなことになるのか」「自分はおかしくなってしまったのでは」という不安が生じて、うつ状態に陥るケースもあるという。

※女性セブン2015年11月5日号