真城最高ことサイコーと高木秋人ことシュージン。二人の少年がタッグを組み、週刊少年ジャンプで連載することを目指してマンガ道を邁進する『バクマン。』。友情・努力・勝利のジャンプ三原則に則った王道的面白さはもちろん、「ジャンプの話をジャンプ誌上で展開する」というメタ的面白さも加わって大ヒットマンガとなった。
それを実写映画化したのが『モテキ』、『恋の渦』の大根仁。およそ3年かけて脚本を練り、マンガならではの面白さを見事スクリーンのうえに再構成。「実写映画だからこそ面白い」作品へと変身させた。


見事なキャスティング


映画化が発表された際、「サイコー(佐藤健)とシュージン(神木隆之介)のキャスティング、逆なんじゃない?」という声が多く上がった。シュージンは勉強のできる、軽い感じの男子。サイコーを漫画家の道へと強引に引きずり込む。一方サイコーは黙々とノートに絵を描いているタイプ。確かに佐藤が強引なタイプを、神木がそれに押されるタイプを演じる様子は容易に想像できる。
しかし蓋を開けてみれば、健サイコーと神木シュージン以外、考えられないほどのハマりっぷり。ペンを剣にして戦うアクションシーンの派手さは、佐藤の高い身体能力のたまもの。テレビや舞台挨拶など、至るところで”健愛”を熱く語る神木は、シュージンそのものだ。
天才漫画家・新妻エイジ(染谷将太)のエキセントリックさ。サイコーの叔父であるマンガ家の川口たろう(宮藤官九郎)の焦りと諦めの入り交じったような表情。マンガを通じて強い絆を結ぶ平丸(新井浩文)、中井(皆川猿時)、福田(桐谷健太)ら良きマンガ家仲間の雰囲気。そして唯一の女性キャスト、亜豆美保(小松菜々)の美しさ! 大根監督の「この人しかいない」という眼で選ばれたキャストが、しっかりとそれぞれの役割を果たしている。

プロジェクションマッピングがすごい!


『バクマン。』はマンガ家を主人公とした物語。それゆえ、クライマックスが「マンガを描く」というなんとも地味な行動にならざるを得ない。そこで大根監督が選んだ手法のひとつがプロジェクションマッピング。マンガを描き続けるサイコーとシュージンの仕事場を、マンガのコマが有機的に流れてゆく。
これを手がけたのは劇団☆新感線やナイロン100℃など、舞台の映像に多数携わってきた上田大樹だ。手塚治虫作品を題材にした舞台『TeZukA』、『プルートゥ』では、映像をときに全面に、ときにピンポイントに舞台セットに投影することで、マンガのコマを自在に動かし新鮮な劇空間を作り上げた。他にも『ONE PIECE展』に映像で携わるなど、元々マンガ作品との関わりも深かった上田。

今作のプロジェクトマッピングのシーンは、脚本上ではわずか1、2行。そこに丸1日かけて機材を設置、調整し、また1日かけて撮影を行ったという。ペンの音が印象的なサカナクションの音楽に合わせ、コマが生きているように動き、サイコー、シュージンの動きともシンクロしてゆく。二人の少年が机に向かっている、ただそれだけのシーンがひとつのクライマックスになりうる。今作で大根は、単に「マンガをうまく実写化する」のみならず、新たな表現さえ提示してみせた。

エンディングのスタッフロールについついニヤリ


公開されるや話題騒然となったエンドロールは、『モテキ』にも携わっているクリエイター集団easebackの中島賢二と森諭が手がけた。本棚にジャンプの歴代連載マンガ単行本が並んでいるように見せかけて、それが全てスタッフクレジットになっているというたまらない仕掛け!
『キャプテン翼』は『キャスティング翼』に、『北斗の拳』は『衣装の拳』に……といった具合。そこまでジャンプマンガに詳しくなくてもすぐに元ネタが浮かぶ、絶妙なもじり具合とロゴの雰囲気を見ているだけでニヤニヤしてしまう。
このすさまじいエンドロールのロゴを手がけたヨシマルシンは、これまでも漫画家の天久聖一と組んでクスリと笑えるパロディロゴをつくってきた(たとえばこんな感じ)。
大根がTwitter上で「バクマン。は色んな漫画家にオマージュを捧げましたが、エンドロールは天久聖一先生に捧げました」と語っているのは、このことをさしているのだろう。



脚本、キャスト、映像表現。隅々まで神経が行き届いた結果、前代未聞の「マンガ家映画」になった『バクマン。』は全国公開中。映画館に急げ!

(釣木文恵)