シメの麺も併せて競争激化が進む鍋つゆ市場

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 次第に鍋が恋しくなるこの季節。例年、当サイトでは流行りの「鍋つゆ」市場を調査してきたが、今年はちょっとした異変が起きている。

 スーパー等の特設コーナーにズラリと並ぶ鍋つゆを見渡してみると、個食用の小容量品や、『プチッと鍋』(エバラ食品工業)や『鍋キューブ』(味の素)に代表されるポーション・固形タイプの人気は持続している様子だ。

 それよりも、昨年と大きく変わったのは、一時ブームを呼んだ〈カレー〉〈トマト〉〈コラーゲン〉〈塩麹〉など“変わり鍋”の比率が低くなったこと。

 しかも、王道の〈キムチ鍋〉〈ちゃんこ鍋〉〈寄せ鍋〉といったベースの味以上に目立っているのが、鍋つゆメーカーのダイショーらが発売する「白菜」「もやし」「きのこ」といった“特定具材”を強調した鍋つゆ商品である。

 どれも鍋では当たり前に入れる定番の野菜といえるが、なぜ敢えてひとつの具材にスポットを当てているのか。フードアナリストの重盛高雄氏が解説する。

「これまでバラエティ豊かな鍋つゆはたくさん出てきましたが、最終的に安心するのは醤油や味噌をベースにした鍋です。でも、それだけでは他ブランドとの差別化も難しいので、お手軽な野菜をより美味しく食べられるように、スープの味付けを絶妙に変えて“野菜とよく合う鍋スープです”と打ち出しているのです」

 さらに、安価なもやしや白菜を主役にしている背景には、昨今の野菜価格高騰による消費者の購買心理を巧みにリサーチした「戦略」とも取れる。

「トマトやキュウリ、レタスなどサラダに使う野菜は、昨年よりも2割以上高くて、なかなか手が伸びません。それなら、白菜やキノコといった安くて値段が安定している野菜をたくさん買って鍋にしたほうが経済的で栄養も取れますしね」(千葉県在住の40代主婦)

 前出の重盛氏は、「最近は特産地やブランドを明記してプレミアム感を出している野菜が多い。そうした具材を鍋つゆに入れるだけで、安価なイメージの野菜もメインディッシュに早変わりさせることができる」と評価する。

 鍋つゆの異変はもうひとつある。「〆(シメ)」へのこだわりだ。ミツカン(Mizkan)が2013年に『〆まで美味しい鍋つゆ』シリーズをリニューアルで売り上げを大きく伸ばしたが、今年はさらにシメまで考えた商品提案が盛んに行われている。

 ダイショーも野菜鍋を打ち出すと同時に、「白菜鍋なら“おかか雑炊”」「もやし鍋なら“温玉ねぎラーメン”」とシメのお薦めメニューを提案し、商品の裏にはレシピを表示している。

 鍋の味を途中で変えられる『味チェンジ鍋つゆ』シリーズを出してきたキッコーマンも、新商品の『贅沢だしがおいしい鰹だしよせ鍋つゆ』で〈シメはカレールーを1個入れて、カレーうどんでお楽しみください〉と推奨するなど、様々な鍋のアレンジを紹介している。

 そして、ついには即席ラーメンの大手ブランドが鍋ジャンルへの参入を果たした。10月に『サッポロ一番』でお馴染みのサンヨー食品が、鍋専用の粉末スープとシメのラーメンをセットにした商品(みそ、塩)を発売したのだ。

「ラーメンの世界だけで考えると、丼の中に添える野菜にも限界があります。そこでサッポロ一番は既存ブランドのスープと麺をうまく活用しながら、鍋に入れる野菜・魚介のダシでいろいろな〆ラーメンの味わいが出るようにアレンジしました。今までありそうでなかった商品です」(重盛氏)

 鍋専用の麺といえば、永谷園が1993年に発売した『煮込みラーメン』がパイオニア的存在だが、同シリーズも〈今年は煮込みラーメンで鍋しよう!〉と大々的に謡っており、シメを巡る競争は激しさを増してきた。

 市場調査会社の富士経済によれば、2015年の鍋つゆ市場は、前年比102%の約345億円。〈企業間の競合激化が予想されるが、個食対応ニーズも高くなり、市場の拡大に寄与することが期待される〉と分析する。

「寒い季節に鍋を囲みたいという日本人の欲求は不変」(重盛氏)だけに、顧客満足度や付加価値を高めた「鍋つゆ」の進化は今後も続いていきそうだ。