世田谷区には美味しい店が数あれど、とりわけ三宿・三軒茶屋は「世田谷区民の台所」といえる地域ではないだろうか。

有名ビストロや一流の寿司屋も集まるグルメ地区だが、恵比寿や銀座で同レベルの味を求めたら1.5倍の値段はかかってしまうだろう。

この街なら、一流のメニューでも、手頃なお値段で気軽にいただくことができる。週末に足を運んでみよう。



スペシャルビーフカレー。壷の中に大きなビーフがいっぱい
創業時より長く愛される名店
『ビストロ喜楽亭』

池尻大橋


世田谷区池尻に本店をおくビストロ喜楽亭は、246の三宿交差点近くにあるカレーがメインの洋食店。変わらない味とスタイルを1983年の創業時より守り続け根強いファンも多いという。

ブイヨン取りから始まり毎日10時間以上じっくり煮込みさらに一夜じっくり寝かせ熟成させてマイルドに仕上げているというカレーは、壷焼きスタイル。野菜と牛骨を煮込んだブイヨンのコクと、15種類のスパイスからなる軽やかな後味。“スペシャル”の名にふさわしい大切りの牛肉も、スパイスで3時間煮込んだ後にルウに合わせる徹底ぶり。

一軒街の洋食屋の様相だが、一口食べれば、長い間この地に根付いた紛れもない本物の所以を体感するはず。




左上から時計回りに、鯵、まぐろのヅケ、穴子、真子鰈
※時期などによってメニューは異なる。
江戸のエスプリを頬張る幸せ
『金多楼』

池尻大橋


江戸前握りの伝統的な型ながら、手数が多く、今ではほとんど使う職人がいないニ楴衒屬懸イ魴兢機

小ぶりな握りはどれもしみじみ旨く、こんな名店、もし銀座だったら二倍の値段はかかってしまうだろう。

艶やかなまぐろのヅケは、ねっとりとした旨みと清涼感のある青唐辛子の辛みが絶妙。鯵はこの時期のみ皮つきで供す。酢で〆めてあるにも関わらず、血合の色が美しい。



ウニ巻き。海苔の香りとウニの香りが夏の海を想起させる

煮あげた穴子は皮がブリンと弾け、淡雪のように口中で溶ける。桜色のガリはたおやかに甘く、後引く旨さだ。

巻きもののウニは礼文島のエゾバフンウニを使用。利尻昆布を食べて育ったウニは、甘みが強く旨みも濃厚。「真っ当な江戸前鮨ここにあり」と得意満面で人に教えたくなる1軒である。




香港料理屋で食べる具沢山のチキンカレー
『新記』

池尻大橋


三宿交差点の近くにある香港料理店「新記」は、中華風スープカレーとごはんが別々なのが特徴。豊富なメニューがあり小皿料理をつまみにお酒を飲んでいる客が多いが、最後の〆に評判なのがこの「チキンカレー」。

中華風の辛いカレーに柔らかく旨みたっぷりのチキンが入っている。口に運ぶとホロホロと溶けていく大きなブロッコリーも最高。




60年以上受け継がれるウクライナ風ボルシチ。来客のほぼ100%が注文するボルシチは、牛肩ロース肉がほろっとほぐれるほど柔らかい。
本家本元ウクライナ風ボルシチは必食
『サモワール』

池尻大橋


昭和25年創業の老舗、池尻大橋のロシア料理『サモワール』。人気はボルシチ。ロシアの代表かつ定番料理でもあり、世界三大スープのひとつだ。味わいは野菜の甘みと酸味が染み出ており、口当たりはさらっとしていてやさしい。途中からサワークリームを混ぜ、味を変えながら食べるのもいい。なにより、ビーツから出たピンク色がこの上なく美しい。

実はボルシチ、本家本元はウクライナとかで、こちらにも2種類ある。豆と牛肉入りはウクライナ風。野菜のみのひと皿も。いずれにせよ、先代が戦後すぐロシアに渡り、体得したかつての味わいが、今なお受け継がれる。


次は三茶エリア。イタリアンとインド料理、ハンバーガー!



ナスとナッツのパテ バジル風味、空豆の冷製ニョッキ フレッシュトマトとバジルのソース、トリッパと牛小腸のトマト煮込み。ワインは丁寧に造られた飲み疲れしないものが揃う。季節によりメニューは異なる。写真は一例
技の利いた小皿料理とイタリアの自然派ワイン『ブリッカ』

三軒茶屋


一部がアーチ状の天井や、造り付けのセラーを設えたりとさりげないこだわりが光り、空間に華やかさがある。

ワイン1杯、料理1皿からOKと使い勝手は抜群な上、空豆とそのペーストを練りこんだ爽やかな冷製ニョッキにも、凝縮感のある香りと酒を呼ぶ塩気が絶妙な熟成ヒコイワシのマリネにも、料理人の技と創意がしっかり発揮されている。

するりと飲めて味わい深いワインのセレクトもバッチリ。リストランテ仕込みの味を潔くカジュアルに楽しませるこんな店が、イタリア料理とワインをますます楽しくしてくれる。



自家製の生ハムとサラミの盛り合わせ



ヒコイワシのマリネ




ポークスペアリブ アチャールグリル(2ピース)。インドのピクルスにじっくり漬け込んだ豚肉のスペアリブ
“華麗なる”サイドディッシュにも注目!
『シバカリーワラ』

三軒茶屋


インドの奥深い魅力に魅せられたオーナーが手がける『シバカリーワラ』。

現地ではめずらしい豚肉のスペアリブなどもメニューに取り込むが、こだわるのはあくまで“インドで日常的に食されている味”だ。



カレーのほかにも魅力的なメニューが盛りだくさん!

スパイスの香りが立ち込める店内で、くらくらと眩暈がするほどの美食体験を楽しんで。




鬼おろしそバーガー。放牧牛のパテにのった水気を絞った鬼おろしと紫蘇が爽やかな和風ハンバーガー。
和を取り入れた大人の味わいのバーガー
『ハラカラ。』

三軒茶屋


「どこにもないものを作ろうと思ったんです」。そう語るのは、店主の萩原洋次氏。その象徴が鬼おろしそバーガーだ。ややハードなバンズに挟むのは、タスマニアビーフにオニオンソテーを入れたパテ。

調味料は天日塩と黒胡椒のみ。50度洗いを徹底した野菜と、たっぷり入った鬼おろし、熟成プレミアムビーフのコンビネーションは洗練の極みだ。



左.店は’09年にオープン。自然な甘みがクセになるアサイーのジュースなどサイドメニューもおすすめ 右.店構えも、どこか優しげで他の店とは一線を画す雰囲気の店

凝縮された旨みとボリューム感がありながら、完食しても胃袋は軽やか。「肉もイイけど野菜もネ♥」な気分に応えてくれるバーガー。一度食べればヤミツキになるはず!