10月21日(水)、TBS系列で『有吉弘行のドッ喜利王』が放映された。「もしも自分の出した大喜利回答が自分のみに起きたら、どんなリアクションをするのか?」という前代未聞のドッキリ番組だった。
(番組収録時の取材の様子はこちら→「有吉弘行のドッ喜利王」取材でこんなに笑うかというくらい笑いました。必見、ドッキリの未来


記事執筆時点はネット配信などは行っておらず、見逃した人を救済する手段がない。だが、一つだけこの番組の「狂気」を伝えるコンテンツがネットに上がっている。

『生稲晃子の野猪の血抜き』である。


これは「意外!あの人ラジオではこんなキャラなんだ。誰のなんてラジオ?」というお題に対して、野性爆弾くっきーが回答したもの。野猪は「やいの」と読む。この収録の3ヶ月後、本当に生稲晃子にオファーして、ラジオを収録をしているのである。

ちなみに回答は他にも
「吉永小百合のジャマイカンレゲエ」(千鳥ノブ)
「ミック・ジャガーの京野菜って素晴らしい」(ずん飯尾)
「市原悦子のエキサイトベースボール」(庄司智春)
があった。さすがにオファーはつらそう。

猟友会会長「野猪ってなに?」「えっ」


『生稲晃子の野猪の血抜き』は「ゲストが今1番興味があること」を話すという設定から始まる。

番組冒頭、生稲晃子は「夏休みがやっと終わり、子ども達の昼ご飯を作る手間から開放され、やっと1人の時間ができ、やりたいことを考えることができた」という話から入り、秋→ぼたん鍋→イノシシの肉はどのようにして食卓に上がるのか、という流れで「野猪の血抜き」につなげる。

怖ろしく丁寧なのだ。

神奈川県猟友会会長の熊沢さん(この道50年)をゲストに迎え、吉田明世TBSアナと共に「猪を捕獲する時は、銃で身体を撃つと内臓や肉に血が混じるので首を狙う」といったノウハウを聞いていく。トークのBGMにはアコースティックギターがしっとりと流れ、NHKラジオ第2かと思うほど。

ぶっ飛んだタイトルだから、生稲晃子の冠番組として「家庭で猪の血抜きが当たり前に行われている世界」みたいなパラレルワールド設定でもいいのに、この教養番組的な仕上がり。猟友会へのオファーや、事前の打合せ、台本作りなど、とても手間がかかっている。番組の長さも27分24秒。30分枠をたっぷりお届けできる内容である。

唯一、番組内で遊んでいるところは開始から17分35秒後、番組タイトルについて熊沢さんが疑問をもつところ。

「ところで野猪(やいの)ってなに?」
「えっ。野生の猪と書いて野猪……」
「あらぁ、あたし初めて聞く言葉よ」

熊沢さんが「全国のハンターのなかでも野猪という言葉を使った人いないんじゃない?」「100%ない」とバッサリ否定し、生稲晃子と吉田アナが「ないんですか!?」と反応するこの時間、さっきまでしっとりと流れていたBGMが止まっているのである。

その後、「野鳥っていうから野猪でもいいのかなと思って」「間違ってないよね。すごいね(笑)」「番組の言葉ということで」と番組の進行が戻った19分6秒のところで、再びBGMが流れ出す。生稲&吉田の動揺を、BGMを止めることできちんと表現しているのだ。

番組は終盤。ここで1曲、とたまの「おやすみいのしし」をかけ(YouTubeではカット)、猟友会の高齢化という問題も提起して、「せっかく食べるなら自分たちで血抜きしたイノシシがいいですね」とエンディングに。

ここまで作りこんでおいて、『ドッ喜利王』内ではくっきーが乗ったタクシーのカーラジオから流れるのみ。しかもくっきー本人は答えたことを忘れていて、ラジオに全然気づかない。なんという贅沢。

こうなったら、同じお題でもう1本収録されている『板東英二のI Love Tennis』(流れ星ちゅうえいの回答)もフルで聞きたい。こちらはリスナーからのメールが来ている設定で「フォルト小林さん」「アンドレ・ザ・ジャイアント・アガシさん」など1人1人ラジオネームまで作りこんでいる。

神は細部に宿るというが、ここまでやれとは神も言ってないと思う。
(井上マサキ)