スタートアップの「種」はどこにある?──英国式イノヴェイション、3つの“現実”解(1)

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「イノヴェイション」を求める声が、高まり続けている。グーグル、フェイスブックといった、いわゆる西海岸流とは違うアプローチで進化を遂げている英国への取材を通して見えてきた、これからの日本のための「3つのアイデア」を、3回にわたり連載。第1回では、注目集まるフィンテックの梁山泊を取材した。(雑誌『WIRED』VOL.16より転載)

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予防医学の研究者、石川善樹はロンドン大学の研究者と議論したことをきっかけに「日本が英国に学ぶことは多い」と考えるようになったという。

いまこそ日本が学ぶべきは、英国式イノヴェイションではなかろうか。目先の技術革新やもっともらしいビッグ・ピクチャーに振り回されることなく、先人から脈々と受け継がれてきた現実から始めるイノヴェイションだ。すなわちそれは、外発的ではない、「内発的なイノヴェイション」とも表現できよう。

──「グーグルを生み出さない」英国式イノヴェイションに学ぶこと:石川善樹、寄稿

では、日本が英国から学ぶべきはいったい何か? 『WIRED』VOL.16では、英国へ飛び、現地のインキュベーターや企業、研究センターなどを取材した。彼らの言葉から浮かび上がったイノヴェイションを加速させる「3つのアイデア」を、WIRED.jpでは3回の短期連載としてお届けする。

1回目となる本記事では、ロンドンでも注目を集めている金融スタートアップインキュベーター「Level39」をフィーチャー。英国式の「不満からはじまる」スタートアップの方法論をご紹介。

UKに学ぶ、イノヴェイションを加速させる3つの“現実”解

Idea 1:いまの仕事の不満からスタートアップしよう
Idea 2革新に必要なデータは社内に眠っている
Idea 3最先端の研究を導入してビジネスを加速させよう


Idea 1:いまの仕事の不満からスタートアップしよう

起業なんてしたことないし、そのやり方を習ったこともないから、どこから手をつけたらいいかもわからない。

そうした悩みは、当然のことながら英国人にも共通しているのだが、かの国ではそのアイデアを実現するためのインキュベイターをはじめとする、政府によるテックスタートアップの支援体制が、非常に充実している。

新興金融街「カナリー・ワーフ」の中心にある金融オフィスビルにあるインキュベーター「Level39」が、いまロンドンで特に注目を集めている。

Level39がある39階には、オフィススペースやビールも飲めるキッチン・カフェスペース、本格的な会議ができる役員会議室、数百人規模のイヴェントスペースなど、さまざまな用途に使える空間がロンドンを一望できるフロアに広がっている。

39階で急激な成長を見せれば、42階にある、「High Growth Space(急成長フロア)」にアップグレードすることもできる。立ち上げからわずか8カ月で42階のすべての部屋が埋まったそうだが、これには正直、代表のエリック・ヴァン・デル・クレイ自身も驚いたという。

「2、3人で始めたビジネスが急成長して、いまや40人規模になって42階にオフィスを構えていたりするんです。そのうち1社は完全に独立して、同じビルの別のフロアを借りることができるまで成長しています」

また、彼はロンドンで30年以上テック分野にかかわってきたが、いまほど、政府の政策がテック分野に注力しているのは初めてだという。

Eric Van der Kleij | エリック・ヴァン・デル・クレイ
Level39代表。クレジットカードの不正使用を防ぐ「Adeptra」を1996年に創業。2011年から2年間、政府のスタートアップ投資プログラム「Tech City」の初代CEOを務めた。Level39のラウンジは起業家たちとメンターでいつも賑わっている。

「ここ数年のうちに、テック企業にとっては喜ばしい、大規模な政策がいくつか行われました。もちろんやるべきことはまだ山ほど残っていますが、起業するにしても、ビジネスの拡大に向けた新たな拠点を設けるにしても、ロンドンはいま世界で最も適した都市なのではないかと思います」

彼がそのように感じているのは、Level39に入っている企業は、世界でも注目を集めるFinTech(フィンテック)の分野がほとんどを占めているから、ということもあるだろう。ロンドンではここ数年の間で、金融系スタートアップが非常に大きな盛り上がりをみせている。

Level39では、大手銀行からやってくる人たちが成功しやすい傾向にあるとヴァン・デル・クレイは語る。

「銀行員として働いていて、コンプライアンスの問題や、新規口座開設の書類手続きのような、煩雑なプロセスをどうにかできないものかと考え、自分で変えてみたいという人たちですね。彼らは何が問題なのか、自分の実体験としてよくわかっているから成功しやすいんです。銀行のなかで働いていてフラストレーションのたまっているプログラマーは、実はたくさんいるんですよ。彼らのアイデアを実現するためには、起業を支援するプラットフォームが必要なだけなのです」

Level39の成功の最も大きな要因を挙げるとすれば、それは100人以上のメンターが無償でスタートアップの支援を行っていることだという。多くは銀行の役員クラスの人たちだ。例えば、金融グループ「シティ」のシニアヴァイスプレジデント、マルコ・モラナは、昼休憩の時間などを使ってほぼ毎日顔を出し、起業家たちの相手をしているという。

「銀行のCIOやCMOがあなたのスタートアップのために、無償で働いてくれているようなものなんです。メンターからアイデアを与えられることはもちろんありますが、彼ら自身もスタートアップの人たちから多くを学んでいるのです」

Level39の紹介ヴィデオ。金融のメンターと起業家、どちらにとっても居心地のいい空間デザインを心がけたという。

UKに学ぶ、イノヴェイションを加速させる3つの“現実”解

Idea 1:いまの仕事の不満からスタートアップしよう
Idea 2革新に必要なデータは社内に眠っている
Idea 3最先端の研究を導入してビジネスを加速させよう

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