「僕が演じる佐藤育生は闘わない男ですが、これは現代の青年像でもあると思うので、特徴的な人物なのではなく、普通の人の役ということを意識して演じたいと思います」(向井理/公式サイトコメントより)

そこにお金がある限り、“遺産争族”の種は尽きない


10月22日から放送が始まる向井理主演のドラマ「遺産争族」(テレビ朝日系/木曜よる9時)。脚本は「昼顔〜平日 午後3時の恋人たち〜」(フジテレビ系)、「おトメさん」(テレビ朝日系)などを手がけてきた井上由美子。向井演じる研修医が、総資産10億円という資産家一家にムコ入りし、遺産相続に巻き込まれていく姿を描く。


本作について井上は次のように語っている。
「どんなに仲のいい家族でも、「遺産相続」を前にすると、「争う家族」=「争族」になると言われます。そこにお金がある限り、遺産の大小は関係ありません。(中略)どこにでもいる家族の愚かで赤裸々な争族物語を通して、家族とは何か?を描いていきたいと思います」(脚本家・井上由美子/公式サイトコメントより)

相続問題は今、そこにある危機


ドラマのタイトルにある「争族」という言葉。デジタル大辞泉によると「俗に、遺産相続などをめぐって親族が争うこと。相続争い」とある。国会図書館で調べてみたところ、すでに1980年代後半の雑誌記事に「争族」が登場する。

今年1月には相続税及び贈与税の税制が改正され、相続税の課税対象となる人が大幅に増加。もはや「遺産でもめるほど、うちはお金ないし〜」とノンキに構えてもいられない。遺産争族は“今、そこにある危機”であり、 2015年のホットワードのひとつなのだ。

向井理のムコ入り先は欲望うずまく資産家ファミリー


そんな中、まさに“火中の栗”を拾いに飛び込むのが、向井理演じる主人公・佐藤育生(さとういくお)だ。葬儀業界大手のカワムラメモリアルの創業者にして現会長の河村龍太郎(伊東四朗)が溺愛する孫娘・楓(榮倉奈々)と結婚し、河村家の一員となる。


龍太郎の妻はすでに亡くなっており、龍太郎の健康状態も思わしくない。資産の行方が気になってたまらない三姉妹に、その配偶者や息子と人々の思惑がからみあい、もつれ合う。相続問題を多数手がける税理士が解説する『いま親が死んでも困らない相続の話』を参考に、今後の見どころを探っていきたい。

相続トラブルあるある(1)「相続人にお金が必要な事情がある」


同書によると《親が亡くなって、相続人となった人たち──とりわけ30代〜40代くらいの世代では、自分の権利を堂々と主張する人が増えている》という。住宅ローンや子どもの教育費など、何かと物入りな結果、「もらえるものはもらいたい!」(大意)と強く願うそうだ。気持ちはわかる。

今回のドラマでいうと、龍太郎の次女・月子(室井滋)と三女・凛子(板谷由夏)が該当しそうだ。年齢はもう少し上だが、月子は<派手好きで浪費家の買い物依存症>だし、凛子は<龍太郎のお金でロサンゼルスと日本を往き来して仕事をしているが、実態はよくわからないという。父親というパトロンがいなくなった時に備えて、少しでも多く財産をもらいたいと考えても不思議はない。

相続トラブルあるある(2)「配偶者の横やり」


財産の分け方でもめる原因のひとつがコミュニケーションの欠如。しかし、コミュニケーションそのものが争いの火種になることもあるそう。その代表例が「配偶者による横やり」。といっても、民法では相続人の配偶者に相続権を認めていないため、《言葉は悪いのですが、相続人である自分の夫(妻)を“焚きつけて”、相続分の権利を主張させる》というケースが少なくないとか。


今回のドラマでは、長女・陽子(余貴美子)の夫で、カワムラメモリアルの社長を務める恒三(岸部一徳)が、きなくさい。恒三は楓の父親、つまり主人公・育生(いくお)の舅にあたる。大学卒業後、証券会社に勤め、トップ営業マンになったが、顧客資産の焦げ付きの原因を押しつけられ、退職。カワムラメモリアルの前身となる河村商会に入社した後、陽子と結婚し、河村家にムコ入り。社長として業績を伸ばすが、龍太郎の評価は厳しい。ムコと舅の長年に渡る確執がここに来て、一気に噴出する可能性もある。

相続トラブルあるある(3)納得できない遺言書


前述の『いま親が死んでも困らない相続の話』によると、《遺族にとって一番納得できないのは、自分の親の財産を、法定相続人ではないアカの他人が受け取るということ》だという。《家族が驚かされる遺言書の大半は、家族が不利益を被るような内容》であり、ときには《被相続人が脅されて書かれた遺言書や、そそのかされて書いてしまった遺言書》も珍しくないそう。

予告動画では、伊東四朗演じる龍太郎が「遺言状か……」とコメント。さらに、「譲りたい人間が出てきたんだよ」とも言っていた。それってもしかして、もしかするんでしょうか。ふつうに考えれば、龍太郎が亡くなると、その財産は娘たち(余貴美子・室井滋・板谷由夏)で等分にわけるはず。陽子が亡くなりでもしない限り、孫娘の楓は法定相続人にはならない。なのに、育生たちが遺産相続に巻き込まれるということはやっぱり……? 


ちなみに、育生は“闘わない医師”を宣言する、まっすぐで母親思いの青年という設定。生命保険の外交員として働きながら、女手ひとつで育てあげた母親を岸本加世子が演じる。遺産相続もさることながら、嫁姑問題も大変なことになりそう。どう転んでも、もめる予感しかしない!
(島影真奈美)