2015年は航空業界にとって激変の年となった。国内3位のスカイマークが経営破綻し、紆余曲折を経て実質的にANAの支配下に入る。かねてより日本の「制空権」を巡ってしのぎを削ってきたJALとANAの2強のパワーバランスに変化がもたらされた。

 世界的な好景気による需要増で、両社は今年の第1四半期でともに過去最高益を記録。JALは2010年の経営破綻から完全に立ち直ったように見えるが、両社の最新の力関係はどうなっているのだろうか。

 今回、30代前半の大手紙経済部若手記者のA氏、同じく40代の大手経済紙記者B氏、40代の業界誌記者C氏、長く航空業界を取材してきた50代のベテラン経済ジャーナリストD氏の4人に集まってもらい、航空業界の“裏事情”を話してもらった。

A「JALの今年第1四半期の純利益は326億円で過去最高を更新。経営破綻から完全に脱却した感がありますよね」

B「いやいや、ナショナルフラッグとして君臨した過去を知る上層部の社員は今でも『昔に比べれば……』が口癖だよ」

C「ANAもインバウンド(訪日外国人)需要などが好調で増収増益が続いている。しかも、喉から手が出るほど欲しかったスカイマークの羽田発着枠を手に入れたのだからウハウハですよね」

〈今年1月に民事再生法の適用を申請したスカイマークの救済を巡っては、ANAと米デルタ航空がそれぞれ支援案を提示する争奪戦が繰り広げられ、ANAによる支援案が勝利した。総額180億円とされる出資枠の内訳は投資ファンドのインテグラルが50.1%、残りをANAが16.5%、ANAの取引銀行である日本政策投資銀行と三井住友銀行が共同出資するファンドが33.4%の株式を保有することで決着した。〉

D「スカイマークの持つ『羽田発着枠』が2強にとって持つ意味は本当に大きい。1つの発着枠で年間20億〜30億円の利益が出るとされていて、JALは183.5便、ANAは171.5便と拮抗していた。スカイマークはその発着枠を36便も持っていたので、ANA傘下になることで2強の支配下にある枠数は逆転した」

B「しかもスカイマークは、『羽田―福岡』『羽田―札幌』という日本で最も“太い”路線を持っていた。

 ANAは当初、新生スカイマークに自社から社長を送り込むつもりだったが、さすがに国交省から“やり過ぎ”と待ったをかけられた。それでもANAと関係の深い政策投資銀行の常務だった市江正彦氏がスカイマーク社長になったのだから十分でしょう。実質的に羽田の“制空権”はANAのものになった」

C「ANAにとっては“してやったり”だろう。彼らは内心、5215億円もの債権放棄や累計4000億円もの法人税減免などの公的援助で再建したJALのことを“ドーピング企業”だと思っているからね。

 今回、デルタ航空が突然スカイマーク救済に名乗りを上げたとき、ANAは“デルタをけしかけたのはJALなんじゃないか”と疑心暗鬼だったようです」

B「一方のJAL側からは“ANAにならなければどこでもいい”とアライアンス(航空連合)が異なるデルタを“応援”する声が聞こえたくらいだから、それほどスカイマークをライバルに渡したくなかったんだろうね」

※週刊ポスト2015年10月30日号