レスター・シティのFW岡崎慎司【写真:Getty Images】

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岡崎は前半のみのプレーに

 レスター・シティは現地時間17日、プレミアリーグ第9節でサウサンプトンと対戦した。前半で2点のリードを許したレスターだったが、後半アディショナルタイムの同点弾などもありアウェイで2-2の引き分けをもぎ取っている。日本代表FW岡崎慎司は前半のみのプレーに終わってしまったが、それはクラウディオ・ラニエリ監督の『修理』の犠牲になってしまったことに影響している。前後半でまったく違う顔を見せるレスターだが、日本代表で岡崎とチームメイトの吉田麻也もそう感じていたようだ。

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 クラウディオ・ラニエリ監督指揮下のレスターは、不思議なチームだ。前半に最悪のパフォーマンスをしているのにも関わらず、ハーフタイムを終えてピッチに現れると、まるで違ったチームのように素晴らしいプレーで敵のゴールを襲撃し、最終的に引き分け、もしくは勝利して勝ち点をモノにしてしまう。

 敵地で行われたサウサンプトン戦もそうだった。前半45分間はチーム全体の動きが重く、低調なプレー内容に終始。結果的に0-2とリードを許して折り返した。“セインツ”(サウサンプトンの愛称)に所属する吉田麻也が「前半はレスターがプレスをかけてこなかった。いつもは前からガンガンくるので、岡ちゃん(岡崎慎司)も(ジェイミー)バーディーも走っているイメージだったが、抜け道が結構あった」と分析する。

 この言葉どおり、岡崎とバーディーの両選手、並びに中盤の選手も動き出しが鈍く、サウサンプトンは容易にパスを回し続けて完全に試合を掌握していた。この時点でのスコアラインは、いわば当然の結果だったといえる。

 しかしラニエリ監督は後半頭から岡崎とジェフ・シュルップをベンチに下げて、ネイサン・ダイヤーとリヤド・マレズを投入するダブルチェンジを敢行。すると、流れは俄然レスターへと傾く。

 後半は、開始直後からストライカーのバーディーを中心に高い位置から積極的にボールを奪いにかかった。「(後半のレスターは)負けているのもあって、ディフェンスラインも高くなったし、プレスをかけてきた。前線が2人代わったということもある」(吉田)

 確かにマレズとダイヤーの起用は効果てき面だった。この2人にバーディーを加えた前線の3選手は、左右中央でポジションを入れ替えながら、敵にプレッシャーをかけ続けた。その結果が、バーディーの後半21分の追撃弾、そしてアディショナルタイムの劇的な同点弾でもあった。

“修理屋”監督の犠牲となった岡崎

 同日夜のハイライト番組で、日韓W杯にも出場した元アイルランド代表で解説者のケビン・キルバーン氏が「なぜマレズを最初から起用しないのかわからない」と語っていた。確かにその通りだが、マレズが先発していても同様の結果を招いていた気がしてならない。

 思い出されるのは8月末のボーンマス戦だ。この試合のマレズは前半45分のみの出場となり、後半は岡崎が起用された。この際も、格下のボーンマス相手にまるでいいところがなかったレスターだったが、後半残り15分になると畳みかけるように敵ゴールに襲い掛かった。最終的には終了間際にPKを得て、引き分けに持ち込んでいる。

 それ以降も5節のアストンビラ戦では0-2から後半残り20分間で3点を奪い逆転勝ち、翌週のストーク戦でも同じく0-2の状況から後半に2ゴールを挙げて、勝ち点1をもぎ取っている。

 ラニエリ監督は常々「私はイタリア人だ。クリーンシートが欲しい」と口にしている。指揮官の理想は、ラインを全体的に低く設定しての堅守速攻だろう。しかしボランチのダニー・ドリンクウォーターの守備力は低く、さらにその後方のディフェンスラインとGKも脆弱。だからほぼ毎試合で先制点を許して試合を追う展開に陥り、早い段階で軌道修正を強いられる。

 そのたびに、「ティンカーマン(不器用な修理屋、の意)」の異名を持つラニエリ監督は、自身の目指すサッカーを諦めてチームの修繕に努める。ここまでのところは、そのイタリア人の采配は吉と出ており、勝ち点16を獲得。プレミアリーグの序盤戦で、最大のサプライズを提供している。だが試合中の“修繕”の犠牲となっているのは、間違いなく岡崎である。

 がむしゃらになったチームは、前出のサウサンプトン戦のように、ラインを押し上げて高い位置からプレスを仕掛ける。前がかり気味になって失点の危険性は伴うものも、ここまでのところは勢いで相手を押し切ることに成功している。一方で、9月以降は前半45分のみの出場がお決まりとなっている岡崎は、攻撃のレギュラー陣の中では一人蚊帳の外の印象だ。

勢いで勝負するレスター。次節先発落ちの可能性も岡崎にはチャンス?

 先発の座をキープする一方、毎試合途中交代となり、本人にとっては不完全燃焼の状態が続く。サウサンプトン戦後には「何度も経験している展開」と漏らしたが、もしかしたら本人は、途中出場でも構わないからチームを引き留める“タガ”が取れた環境でプレーしたいと感じているのではないか。

「イケイケ」のスタイルは、前任者のナイジェル・ピアソン時代から継承したもので、ラニエリ政権下となった今も、選手たちはいまだに戦術よりも勢いで勝負する傾向が強い。マインツ時代のように前線に張るストライカーとして振る舞える環境であれば、45分間という短い時間だけで勝負できたかもしれないし、現在のレスターのような勢いに任せた攻撃の中心となり、ゴールを量産していたかもしれない。

 しかしレスターでの岡崎は、自身の役割がファイナルサードで勝負するだけではなく、組み立てや守備でも貢献するセカンドトップと認識している。それでも、当たり前だがストライカーとしての自負はあり、ゴールへのこだわりも人一倍強い。

 前々節のアーセナル戦、ほぼノーガードの打ち合いとなった試合終了間際の得点シーンを振り返った岡崎は次のように話している。

「2点目なんか、もうやっぱり『誰かが取れるだろう』という感じで、アンドレ(・クラマリッチ)が取るのか、ウジョアが取るのか、バーディーが取るのかという(状況だった)。アーセナルも全然守備していないし。フォワードってこう、毎試合、ダメだったけど点取れて、次に生かせるというのがあると思う」

 次節はホームのクリスタルパレス戦。岡崎はもしかしたら6試合ぶりに先発を外れるかもしれない。しかし現状を考えれば、この変化は自身にとって歓迎すべきことかもしれない。

 チームが抑え目になる前半45分ではなく、アタッカーとして大胆に振る舞える30分間や45分間こそが、今必要なプレータイムだからだ。とはいえ、その際には、チームが前半にリードを許しているという“条件”も付いてきてしまうのだが…。

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三