【MLBプレーオフ2015】
■リーグチャンピオンシップシリーズ展望@ナ・リーグ編

 ア・リーグの「カンザスシティ・ロイヤルズ対トロント・ブルージェイズ」戦から1日遅れての現地10月17日(日本時間10月18日)、ナ・リーグのリーグチャンピオンシップシリーズがスタートしました。ナ・リーグのカードは、「ニューヨーク・メッツ対シカゴ・カブス」。この対戦の見どころは、「若いパワーの競演」ではないでしょうか。

 まず、東地区を制したメッツの注目ポイントは、若い豪腕投手を揃えているところです。そのなかでも特筆すべき投手は、26歳のマット・ハービー、27歳のジェイコブ・デグロム、そして23歳のノア・シンダーガードの先発3本柱でしょう。

 ロサンゼルス・ドジャースとのディビジョンシリーズでは、第1戦に先発したデグロムが75球投げた速球のうち、73球で95マイル以上(約152.8キロ)をマーク。そしてシンダーガードもディビジョンシリーズで投げた投手のなかで最速となる101.1マイル(約162.6キロ)を計測するなど、その豪腕ぶりをいかんなく発揮しています。エースのハービーも含め、彼ら3人の速球はそう簡単に打てるシロモノではありません。

 それに対抗するのが、カブスの若いパワーヒッターたちです。セントルイス・カージナルスとのディビジョンシリーズ4試合で、カブスは合計10本塁打をマークしたのですが、そのうちホームランを打った6人は26歳以下でした。ひとつのシリーズで26歳以下の選手6人が本塁打をマークしたのは、ポストシーズン史上初めてのことです。

 それら若いパワーヒッターの筆頭は、不動の4番を務める26歳のアンソニー・リゾ。ディビジョンシリーズ第4戦では勝ち越しホームランを放ち、リーグチャンピオンシップシリーズ進出を決めました。続く大砲は、今シーズンのナ・リーグ新人王にもっとも近いと目される23歳のクリス・ブライアント。ルーキーながら3番を任され、同シリーズ第3戦では勝ち越しホームランをマークしています。また、キューバ出身で2014年にメジャーデビューした23歳のホルヘ・ソレアと、昨年のドラフト1巡目(全体4位)でカブスに入団した22歳のカイル・シュワーバーも、ともにディビションシリーズで2本塁打を打ちました。

 このような若さあふれる両チームですが、対戦するにあたって面白いのは、メッツの豪腕3本柱に加えて24歳の新人スティーブン・マッツの計4投手は、ディビジョンシリーズで合計29イニング3分の1を投げてホームランを1本も打たれていないという点です。はたして、メッツの豪腕が抑えるのか、それともカブスのパワーヒッターが打ち崩すのか、チームを引っ張る若手たちの激突は見逃せません。

 また、このカードは今シーズンの対戦成績も話題になっています。両チームはレギュラーシーズンで7度対戦しているのですが、成績はカブスの7勝0敗。なんと、メッツは1勝もできていないのです。得点数もカブスの27得点に対し、メッツは11得点。圧倒的にカブスのほうが好成績を残しています。

 しかし注目したいのは、この7試合はいずれもシーズン前半での試合だった、という点です。5月11日〜14日の4連戦と、6月30日〜7月2日の3連戦での結果で、すべてオールスターゲーム前の対戦でした。

 今シーズンのメッツは、7月末にデトロイト・タイガースからヨエニス・セスペデスなどバッターを次々と獲得し、貧打に泣いた打撃面を改善して生まれ変わりました。よって、「レギュラーシーズンの対戦成績は当てにならないのでは?」という意見も多く出ています。

 そしてなにより今カードは、メッツとカブスの歴史を踏まえながら見るのが、メジャーファンにとって一番興味のあることではないでしょうか。このカードはいうならば、「奇跡と呪いのシリーズ」と銘打ってもいいかもしれません。

 メッツは1962年の球団創設以来、4年連続で最下位になるなど、当初は「お荷物球団」という扱いでした。しかし1969年、ナ・リーグが12球団に拡張して東西2地区制になると、その初年度のシーズン終盤に驚異的な快進撃を見せて球団初の地区優勝を果たし、さらにワールドシリーズも制して世界一に輝きました。この快進撃は「ミラクル・メッツ」と称され、今も語り継がれています。

 その後、1986年に2度目の世界一に輝いたときも、「奇跡」が生まれました。ボストン・レッドソックスとのワールドシリーズ第6戦、延長10回に2点のビハインドを負う展開で、ツーアウト&ランナーなし。そんな危機的状況から3連打と相手のエラーで同点に追いつき、さらに相手一塁手のまさかのトンネルでサヨナラ勝ちを収めたのです。そして第7戦も勝って、17年ぶりに頂点を掴み取りました。

 一方、カブスの歴史はまさに、「メッツと真逆」とも言えるでしょう。いつも大事なところでありえない出来事が起き、悲劇的な負けを喫しているのです。

 1984年のリーグチャンピオンシップシリーズでは、サンディエゴ・パドレス相手に2連勝し、リーグ制覇に王手をかけました(当時は5回戦制)。しかしその後、2連敗でタイとなった第5戦で、カブスは序盤からリードしていたものの、7回に一塁手が平凡なゴロをトンネルして同点に......。そしてその後も失点を重ね、リーグ優勝を逃してしまいました。

 さらに2003年のリーグチャンピオンシップシリーズでも、悲劇は生まれます。3勝2敗で王手をかけたフロリダ(現マイアミ)・マーリンズとの第6戦、カブスは念願のリーグ優勝まで残りアウト5個まで迫りました。しかし、観客にファウルフライを妨害されたことがキッカケとなり、そこからガタガタと崩れて逆転負け。そして第7戦も敗れて、またも夢は叶いませんでした。

 このようにカブスの敗戦は、まさに悪夢ばかり。このような歴史の背景を見ると、今回のシリーズでもゲーム終盤で信じられないことが起きるのでは......と気になって仕方ありません。特にカブスがリードしている場面は、嫌な予感がします。

 メッツがふたたび「奇跡」を起こすと15年ぶり、カブスが「呪い」を振り払えると70年ぶりのワールドシリーズ進出となります。どちらが勝ってもすごい出来事なので、果たしてどんな結末になるのか楽しみです。

福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu