【MLBプレーオフ2015】
■リーグチャンピオンシップシリーズ展望@ア・リーグ編

 現地10月16日(日本時間10月17日)、ア・リーグのリーグチャンピオンシップシリーズが幕を開けました。駒を進めたのは、中地区1位のカンザスシティ・ロイヤルズと、東地区1位のトロント・ブルージェイズ。今回のディビジョンシリーズは、両カードとも第5戦までもつれ込むほどの大接戦でした。

 まず、昨年のア・リーグ覇者のロイヤルズは、ワイルドカードゲームから勝ち上がってきたヒューストン・アストロズ相手に苦しい展開を強いられました。第3戦を終わって1勝2敗。しかも、王手をかけられた第4戦も7回を終わった時点で、2−6という4点のビハインドを背負っていたのです。

 残りアウト6個で、シーズンが終了する絶体絶命の危機――。しかし、そこから一挙に7点を奪い、大逆転で勝利を収めました。さらに第5戦も0−2からひっくり返し、終わってみれば7−2。なんとロイヤルズは勝った3試合、すべて逆転勝利でリーグチャンピオンシップシリーズ進出を果たしたのです。

 一方のブルージェイズも、テキサス・レンジャーズ相手にホームで2連敗という最悪のスタートを切りました。しかし、その後に3連勝の快進撃を見せ、逆転でディビジョンシリーズを制したのです。ホーム2連敗のあとの3連勝は、プレーオフ史上3チーム目の出来事。つまり今回のリーグチャンピオンシップシリーズは、崖っぷちから這い上がり、勢いに乗っているチーム同士の対戦となります。

「ロイヤルズ対ブルージェイズ」は、1985年のリーグチャンピオンシップシリーズで激突して以来、ポストシーズンでは実に30年ぶりのカードです。当時のロイヤルズは2年連続6度目の地区優勝を果たした、まさに黄金時代。そしてブルージェイズは、球団創設9年目にして初の地区優勝を飾ったシーズンでした。いうなれば、「ア・リーグの新旧対決」というカードだったのです。

 また、ちょうどその年にリーグチャンピオンシップシリーズは、5回戦制から7回戦制へと変更となりました。それまでは先に3勝したほうが駒を進めたのですが、1985年からは4勝先勝となったのです。その結果、ロイヤルズは従来なら敗退している1勝3敗から巻き返し、逆転でワールドシリーズ進出。その後も勢いは止まらず、セントルイス・カージナルスに勝利し、球団初の世界一に輝きました。

 1985年のリーグチャンピオンシップシリーズを振り返ってみると、懐かしい顔ぶれが目に留まります。ロイヤルズは主砲のジョージ・ブレットが大暴れし、打率.348・3本塁打・5打点でシリーズMVPを獲得。ブルージェイズはのちに巨人入りしたジェシー・バーフィールドとロイド・モスビーの外野手コンビや、さらにダイエーでプレーすることになるウィリー・アップショーが1塁手として出場していました。

 あれから30年――。今回のカードの見どころは、まさしく「スピード対パワー」ではないでしょうか。この対照的な野球スタイルが、ア・リーグの頂点を争う決戦の注目ポイントだと思います。

 ディビジョンシリーズでのロイヤルズは、予想以上のホームラン数を記録しました。打撃が魅力のブルージェイズと並ぶ計8本をマークし、なかでもキューバ出身のケンドリス・モラレスが3本塁打と大活躍。第5戦でも大事な場面でスリーランを放つなど、ロイヤルズ打線を牽引していました。

 ただ、ロイヤルズのウリは、あくまで伝統的な「機動力野球」です。今シーズンはア・リーグ2位の104盗塁をマークしましたが、チームを象徴する「スピード」は決して盗塁だけの話ではありません。そこで注目したいのは、3番センターのロレンゾ・ケインです。

 ディビジョンシリーズ第5戦の4回裏、0−2とリードを許した場面でケインが出塁すると、4番のエリック・ホズマーはセンター前ヒットを放ちました。すると、一塁走者のケインは一気にダイヤモンドを駆け巡り、ホームを陥れたのです。この積極的な走塁によって、ゲームの流れはロイヤルズへと傾きました。

 そんなケインの走塁を見ていると、まさに30年前の1985年、ロイヤルズでスピードスターとして活躍したウィリー・ウィルソンを思い出します。ポジションはセンターで、背番号も同じ「6」。ウィルソンがロイヤルズ在籍時にマークした通算612盗塁は球団記録です。ディビジョンシリーズ第5戦でのケインの走りは、まさに彼を彷彿とさせるものでした。

 対するブルージェイズのウリは、なんといっても「パワー」でしょう。今シーズン、メジャー最多の232本塁打を放った強力打線は、ディビジョンシリーズでも爆発しました。5試合で計8本塁打のうち、ホセ・バティスタとジョシュ・ドナルドソンが各2本、そしてエドウィン・エンカーナシオンが1本と、主軸の3人がプレーオフでも大暴れしています。

 レギュラーシーズンで「30本塁打・100打点」をクリアした3人の存在は、ア・リーグを制するために欠かせません。ただ、このプレーオフでもうひとり注目してもらいたい選手がいます。それは、弱冠20歳のクローザー、ロベルト・オスーナです。

 プレーオフのような短期決戦では、とにかく先に得点を奪い、そのまま逃げ切るのが理想的と言われています。ロイヤルズはア・リーグ最高の防御率を誇るリリーフ陣を擁しており、そのパターンに持ち込むことが得意です。ところがブルージェイズはディビジョンシリーズ第2戦で、左の中継ぎのブレット・セシルが左ふくらはぎを痛め、今シリーズでの復帰は絶望となってしまいました。

 そこで活躍が期待されるのが、今シーズン、彗星のごとく現れた新守護神のオスーナです。メキシコ出身の20歳の右腕は、昨年までマイナーリーグのシングルAしか経験したことがありませんでした。しかし今シーズン、開幕メジャーの切符を掴むと、クローザーに抜擢されて20セーブを挙げたのです。

 初めてのポストシーズンでも物怖じせず、重要なディビジョンシリーズ第5戦でも8回途中から登板し、見事セーブをマークしました。度胸の据わったルーキーのピッチングに、驚きを隠せません。

 30年ぶりの対決は、どちらに軍配が上がるのでしょうか。ロイヤルズの「スピード」か、ブルージェイズの「パワー」か――。いずれにしても、大いに盛り上がることは間違いありません。

福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu