筆者は男なので母×娘のケースはわかりませんが、母親とは、こちらがオッサンになろうが子供扱いしてくるもの。見慣れぬ靴下やらパンツが引き出しの中に入っていたり、体調が悪いとみるや口うるさく予防法や生活改善を促してきたり、携帯電話の履歴が母親の名前だらけだったり......。特にボッチの諸兄であればそんな経験があるのではないでしょうか。

 まさにそんな感じの過干渉な母親と、人生の曲がり角で苦戦するボッチ独身息子のコメディ・ロードムービーが、『人生はノー・リターン 〜僕とオカン、涙の3000マイル〜』(2012)。母親役に名女優バーブラ・ストライサンド、息子役にはセス・ローゲンという異色の顔合わせです。

 ──環境にやさしい安全な洗剤を開発した科学者アンディは、大手小売に売り込みを掛けるも失敗の日々。NYに住む過干渉な母親ジョイスを避けていたが、資金が底をつき始めたこともあり、止む無く母の元へ。ところが、自身の名前が母親の結婚前の恋人「アンディ・マーゴリス」から採ったものであるという衝撃の事実が明らかに。
 しかし、マーゴリスについて調べると、まだ独身でサンフランシスコ在住であることが判明。アンディは父の死以来、過干渉となった母親の厄介払いをひらめき(自身の商品売り込みも)、NYからシスコまで、母親との3000マイル大陸横断ドサ回り営業旅行を始めるのだった......。

 冒頭、留守電に母親のメッセージが残っている度に速攻で消去する演出からして、もうなんだか人事とは思えません。さらに結婚はまだかと昔の彼女の話題を出してくるなど盛大に心の傷を抉って来る、バーブラ女史のオカンっぷりは、アメリカも日本もそう変わらないんですね......という驚きと辟易を覚える絶妙なレベル。
 商談にも常について来て、プレゼン内容や商品名を変えろなどと口出しするワケです。大きな展開はないんですが、まあソワソワさせられます。

 プロレスのWWEなどでは、実の父親が登場したジョン・シナのようなケースもあれば、俳優・女優がギミックペアレンツとして絡むケースもありますが、後者ではシェルトン・ベンジャミンの「ベンジャミン・ママ」が特に思い出されるところ。

 このママさんは、気弱な"息子"の代わりに試合や待遇改善を要求したり、抗争相手を襲ったりと八面六臂の活躍を見せ、当時人気のユニット(?)となりました。
 ただ、残念なことにママ当人の体調不良(という設定説あり)から二ヶ月弱でフェイドアウト。ベンジャミン本人も低迷期を迎えることになります。

 はてさて、人によっては笑えないどころか、心にさざ波しか立たない可能性すらある本作ですが、ロードムービーのツボを押さえた寄り道シーンの数々や、次第にバーブラ・オカンが可愛く見えてくる不思議な魅力も特徴です。

 ウチのオカンには可愛さの欠片もない、と鼻を鳴らす諸兄もいるかもしれませんが、エンドクレジット直前の"母と息子"のシーンを観たら、「カアチャン、ゴメンな」と呟いちゃうこと請け合い。オカンの干渉を煙たがる諸兄に是非観て欲しい一方で、女性にも、男の子のオカンになるということがどんなものかということを知るならば、この映画をオススメしたいと思う所存です。

(文/シングウヤスアキ)